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ステキな休日

「ウソだろ…」

そう消えそうな声で呟く彼はカーテンの向こう側を見て項垂れた。

昨日の夜に見た天気予報では、満面の笑みを浮かべたお姉さんが「雲一つない快晴になるでしょう」なんて言っていたのに。
窓の向こうは雨、雲で覆われて空の欠片すら見えそうもない。

せっかくのお休み、どこか遠出でもしようかと計画を練っていた私達に天気は味方してくれなかったらしい。

窓際で立ち尽くす彼に「また今度だね」と声をかけると捨てられた子犬のような目が私を見つめ返した。

「リツカちゃんはあんまり楽しみじゃなかった?」

「そんなことないよ!すっごく楽しみだったよ!でも」

私だってすごく楽しみにしていた。
旅行雑誌は付箋だらけだし、何を着ていくか散々迷って、天気予報も何度も確認して、昨日の夜はそわそわして寝付けなくて、なんなら先走って夢にも見た。
だから今朝雨が降ってるのを見て信じられなかった。
こっちが夢だったら良かったのになんて思った。
それくらい楽しみにしていた。
けれど、

「いっぱいいちゃいちゃ出来るな、って…」

ふと、そう思ってしまったのだ。

言ってから発言の恥ずかしさに気付いたが後の祭りだった。
痛々しいような、むず痒いような妙な雰囲気が流れて居たたまれなくなっていると彼は小さな声で「反則でしょ」と呟いたあと急に「よーし!」と気合いを入れだした。

「いっぱいイチャイチャするぞぅ!」

「ロマニが言うとおじさんくさい…」

「おじさんだからいいんです!」

開き直ってる彼に思わず吹き出すと、胸を張っていた彼も吹き出した。
そうしてひとしきり笑い合ったあと、

「じゃあ手始めに、一緒に朝ごはん作ろっか」

そう言いながら差し出された彼の手を握ると、私達のステキな休日が始まったのだった。
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