第一頁 ヒトとアヤカシの狭間のモノ
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雪はマルとモロに連れられ店の一室に来ていた。
給仕服があるから着替えて来なさい、と侑子に言われたからだ。
「…!これは…。さすが侑子…じゃな。」
一方その頃、四月一日は侑子と話していた。
「いやいやいや、狐に仕事って何を教えればいいんすか─!」
「あら、あの子は自分は人間だと言っていたのでしょう?なら大丈夫よ。多分。」
「多分って…。無責任にも程がありますよ─!!侑子さん!!!」
意義を申し立てる四月一日に、侑子はあっけらかんと答えていた。
四月一日がまだギャーギャー文句を言っていると、スゥーと襖が開いた。
「来たわね。」
ニヤリと笑った侑子が見る方に四月一日も顔を向けた。
「え───!!!」
「四月一日五月蝿い。」
そこに立っていたのは黒地のミニドレスに白いエプロン。
いわゆるメイド服を着た人間の少女が立っていたのだ。
「も、もしかして、さっきの狐?」
顔を赤らめながら聞いてきた四月一日に少女は答えた。
「いかにも!そちが四月一日じゃな?よろしく頼むぞ!」
先程まゆきが訪れた部屋にあったのは人間用のメイド服だったのである。
「うん、こちらこそよろしく…って違──う!!」
ヘンテコな動きでノリツッコミをキメた四月一日は侑子の方に向き直り、どういう事ですか、と捲し立てていた。
「どういう事って聞かれても…、ねぇ。」
侑子は雪の方をちらりと見た。
視線に気付いた雪は苦笑した。
「彼女はアヤカシでは無いからよ。」
侑子の発言に四月一日は不思議がった。
「確かに本人は人間だって言ってましたけど、さっきまで確実に狐の姿でしたよ?」
「それは四月一日がまだそういうモノを見たことが無いだけ。ヒトでもあるしアヤカシでもある存在。いわゆる半妖よ。」
「半…妖…。」
四月一日が頭の整理に時間を要していると、快活そうな声が再び聞こえた。
「さすが侑子。一目見てわらわを半妖じゃと見破ったのはそちが初めてじゃ。わらわは狐の妖怪を母に持ち、父は陰陽師であった。色々あって先日死別してしまってな。逃げる場所を探しておったんじゃ。」
声は明るく振舞っていたが、表情は俯いてしまってよく分からなかった。
「そう…。お母様は妖怪の中でも格上だったのではないかしら。」
アナタからは凄まじい妖力を感じるから。と侑子に言われ、雪は頷いた。
「うむ、母は狐の妖怪のお姫様だったそうじゃ。しかし、妖界ではタブーであるヒトの子を孕んでしまった為人間界に追放されたと聞いた。」
「そして、つい先日殺されてしまったと。」
「っ!!」
淡々と話していた雪は侑子の言葉に勢いよく反応した。
侑子はそのまま話を続ける。
「そこまで格上の妖怪が死んだとなると直ぐに情報が回りそうなものだけど、何も無い、ということはやはりアナタは異世界から来たのね。」
「異世界…?」
反応したのは四月一日だった。
「そう、こことは異なる世界。何か魔法陣とか見たりしなかったかしら?」
雪は少し考えた後、話し始めた。
「父様が、八卦を展開しておった。多分、それじゃ。」
「陰陽師のお父様ね。そういえば、コレ、見覚えある?」
侑子が取り出したのは首輪だった。
「その首輪は見たことは無いが、それからは父様の気が感じられる。」
雪は目を閉じ懐かしがるように言った。
「この首輪はアナタのお父様からアナタに渡して欲しいと頼まれた物なの。対価はもう既にもらっているわ。」
雪は侑子から首輪を受け取ると首に着けた。
途端に自身の妖力の流れが変わった事に気がついた。
「…なんじゃ…?」
「アナタはお母様の血を濃く受け継いでいるようね。お父様はアナタがアヤカシの血に呑まれてしまわぬように術を施したのでしょう。自分はもう長くないから、と夢を通して言っていたわ。」
雪は信じられないといった顔で侑子の方を見ていた。
「アナタが人間でいたいのならソレは外さない方がいいわ。」
侑子はそれだけ言うと四月一日の方に振り向き、酒をせびった。
雪はまだ聞きたい事もあったがそれを飲み込み、笑顔で四月一日について行った。
「後はあの子が自分で選ぶ事よ。安全の為に留まり続けるのか、真実の為に動くのか。」
侑子は呟いて目を閉じた。
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