第一頁 ヒトとアヤカシの狭間のモノ
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(動物にも願いってあるものなのか?)
玄関へと続く廊下で人の言葉は分かるのだろうか、などと考え事をしていたら、相変わらずニコニコして此方を見る狐に身構えた。
すると狐は糸のように細かった目をスっと開けた。
「そう身構えずとも良い!」
突然聞こえた快活な声に四月一日は悲鳴を上げた。
「い、今!!!しゃ、しゃべっ!!」
尻もちをついた四月一日は首をかしげながら近づく狐を指差す。
「喋るに決まっておろう。わらわは人間じゃぞ?」
「狐の姿した人間なんかいるか──!!!」
狐は当然の事のように言うが、四月一日には信じられなかった。
「そんなことより、早く店主の元へ案内してくれぬか?そちではないのじゃろう?」
ハッとした四月一日は狐を侑子の元へ連れて行った。
狐は四月一日の後を追い、侑子のいる部屋へと足を踏み入れた。
「アナタの名前は?」
「雪」
侑子の妖しい雰囲気に臆することなく答えた狐。
侑子は目を細めて雪を見た。
「中々珍しいお客様ね。アナタの願いは何かしら。」
「暫くで良い。匿って欲しいのじゃ。」
雪は淡々と、それでいて楽しそうに答えた。
「此処には強い結界が張られていると聞いた。わらわはある男の目の届かぬ場所に行かねばならぬ。此処ならば奴の目も届くまい。」
「その男の名、聞いてもいいかしら。」
「……飛王・リード。」
その名を聞いた侑子は少し考える素振りをしながら、そう…、と言った。
「願いを叶える為には対価がいるわ。それでも?」
「わらわの払えるものならば。」
雪は諦めのような笑みを浮かべ言った。
「いいでしょう。貴女の対価は此処にいる間、四月一日と一緒に働く事よ。」
「……それだけで良いのか?」
不安そうな雪に侑子は微笑みながら話す。
「ええ、要はこの店から出ないということ。此処にいる分だけ働いて対価に充てればいいわ。」
「……そちの名は?」
「壱原侑子よ。」
侑子の名を聞き、雪は気の抜けた笑みを浮かべた。
「侑子…。暫く世話になるぞ。」
侑子は交渉成立ね、と言いニヤリと笑った。