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《こちら荒船隊。防衛任務中にトリオン兵に遭遇。民間人も危険区域内にいたようで、保護を優先にしながら戦闘中、増援を要求します。》

《わかった。ちょうど太刀川隊が空いている。直ちにそちらへ向かわせよう。》

《了解、ありがとうございます》

プツッと、本部への回線を切り替え自隊のものへと切り替える。もちろん、民間人の逃げ道を確保しながら、だ。俺たちの隊は三人全員狙撃手の特殊なチームだ。俺が弧月を抜けるとしても、民間人を庇いながら戦うのには無理がある。しかし、本部が援護を向かわせたと言うのなら後は時間稼ぎだ。何しろ本部がこちらへ向かわせてくれたのはボーダーA級一位の太刀川隊だというのだから。

「メテオラッ!」

目映い光と共に空を覆い尽くすのは太刀川隊所属の出水の放った攻撃だ。それに怯んだ敵が太刀川さんの弧月の二の舞になる。やはり俺たちより数段と強い人たちの手にかかればこんな敵などなんともないのだ、と改めて実感してしまった。




「荒船さーん!」

と、元気よく俺を呼ぶのは通称弾バカと呼ばれている俺の後輩だ。後輩だからといって俺より弱いわけではないし、むしろ強すぎるくらいだと言うのにこうして俺を慕ってくれているらしい。そんな後輩の声に答える。

「おう、出水か。ありがとな」

「いえいえー!お役にたてて何よりです?」

「っは、なんだその疑問系は」

堪えきれずに少し笑ってしまう。しかしそんなこと気にもしていないように話を続ける。気にもしていないように、だ。因みに俺と出水はなんというか、お付き合いをさせてもらっている。男同士だのなんだの言うのは割愛だ。しかし、付き合っているんだから、俺の反応にもう少し反応してくれてもいいんじゃないか、そんなことか頭をよぎる。なんだ俺、女々しすぎかよ。

「いやー、なんか荒船さんの顔久しぶりに見れたんで、それだけで頭ん中埋め尽くされちゃって。」

照れながら笑うあいつの顔に全てがどうでもよくなったとか、そう言うのは内緒だ。

《荒船君、さっきの門からでてきたトリオン兵は全て片付いたわ。そろそろ交代の時間だし、引き上げる準備をお願いね。》

《了解。回線を切るぞ。》

加賀美との通話を切り、おとなしく待っていた出水へと視線を上げる。

「で、出水。今回はどうしたんだ?」

太刀川隊もうちの隊ももう引き上げ始めている。そんな中残っているということは言いたいことがあるということだろう。そう結論付けて話を振る。

「えー、わかってるんでしょ、荒船さん。まあいいや、今度の土曜ってあいてる?あいてたら映画見に行こうよ」

今度の土曜はちょうどオフだ。学校のほうもテストが終わったばかりだし、一日くらい何も影響はないだろうというようなことを頭の中で考える。

「土曜か、大丈夫だ。何時から行くか?」

俺の返事を聞いた出水は顔を輝かせる。なんだよかわいいなおい。

「まじすか!あー、じゃあ早めにでて9時集合で大丈夫すか?」

「ああ。飯はどうする」

それから土曜の予定を話し合い、別れる。

別れ際のあいつの笑顔がまぶしいだとかやっぱかっこいいんだなとかいろいろ考えてしまうのは惚れたほうの負けというやつかも知れない。
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