K
「かわいい」
ふと見たテレビでやってるドラマはよくある恋愛ドラマ。青春だかなんだかは知らないが若いが確実に学生ではない女優がまあよく似合っている制服を着て今流行のイケメン俳優に耳元で囁かれ真っ赤になっている。
そこではた、と気がつく。そういや俺が翔平に「かわいい」なんて言われたのはいつまでだっただろう。少なくとも再会してからは言われた覚えがない。これは恋人という関係になった今でも変わらない。あれ、俺翔平に愛されてるよな?でも最近アイツ忙しそうで二人きりで会えていない気がする。そりゃ吠舞羅では会うけど、あそこはお互いに他のメンツとも話すからめったに二人じゃ話せない。そもそもアンナもいるのにいちゃいちゃなんてことできない。いやするつもりもねえけど!!なんて一頻り頭の中で自問自答する。
翔平にとって俺はかわいいの対象に入らないのだろうか。いや、冷静に考えてそもそも俺にかわいいなんて要素あるか?ないな。顔だってそこそこ、口は悪いし手だってすぐに出る。性格だって小さいとよく言われる。俺って面倒くさい女じゃねーかという結論に至る。
そんな考えの悪循環に篭ってたってしかたがない、と決意し家を出る。世間一般にかわいいというものを探しに行こうじゃないかと意気込む。てかかわいいってなんだ、服?小物?いったい何をどうすれば俺にかわいい要素が追加されるんだ。絶望的じゃねえか。
思わずため息が出る。しかし家を出てしまったからには店まで行きたい。とりあえずここらで有名なショッピングモールへと急ぐ。中は平日の昼間だからか人でごった返す、と言う程でもなく快適に目的の店を見つけた。そう、見つけたまではいいのだ。
「は、」
思わず声が漏れる。嘘だろ。なんでアイツ女と一緒にいるんだよ。そう、俺が見つけてしまったのはかわいいが絵に描かれたような女と一緒にいる翔平だった。それだけならいい。アイツは顔が広いし女友達も男友達もたくさんいる。しかし今日は、バイトだと言っていたのだ。女友達と会うだけならそう言えば良い。センスもいい翔平はよく買い物に引っ張りだこだ。何も怒りはしない。けど、嘘をついて女と会っているのは浮気じゃあないのか。俺は捨てられるのか、なんて嫌な事ばかりが頭に浮かぶ。
「・・・かわいいじゃん・・・・・・」
何に対して言っているかまでは分からなかったが口の動きでかわいいと言ったのだけは分かる。笑顔で話す翔平の視線が俺に向いたのが分かったが我慢できずに涙が零れる。なんだ、俺のほうが浮気相手だったのか、頭が理解すると同時に踵を返す。最後に見えたアイツの口が俺の名前を呼んだ気がした。
あれからどれぐらい経ったか分からないけど気がついたら公園のベンチにいた。夕暮れ時で公園で遊ぶ親子もいない。ここの公園は翔平が入ってすぐやらかして草薙さんに死ぬほど怒られた後翔平と話した公園だ。つまり吠舞羅に近い。知り合いと会うかもなんて考える余裕もないくらい切羽詰まっていた事実に笑える。実際には乾いた声しかでなかったか。泣き腫らした目が痛い。顔を洗いたい、シャワーが浴びたい。とりあえず家に帰ろうと重たい足を動かす。
家に着く頃には真っ暗になっていたが気にせずアパートの階段を上る。疲れていて注意力が足りなかった俺は気がつかなかった所から急にかけられた声にひどく驚いてしまう。
「三ちゃんっ!!何処行ってたの!!!こんな遅くまで電話にもでないで!!!」
驚きで声も出ない俺を尻目に声をかけた張本人は慣れた様子で俺のポケットから鍵を取り出し勝手に鍵を開け俺の手を引き家へと入る。
「っは・・・?しょう、へい?」
なんとか絞り出した声は震えて情けない。
「ん、なーに?三ちゃん」
優しい声、のはずなのに笑っていない顔のせいで全然優しくない。怖い。
「お前、なんでここいんだよ」
ああ、やっぱりかわいくない。
「だって三ちゃん電話に出ないから。」
「それっ・・・は、フツーに気付かなかった、悪い。」
「ううん、取りあえず三ちゃん無事で良かった。で?なんで三ちゃん泣いてたの」
一番切り込まれたくない質問に固まる。コイツ昔からこんなとこあんだよ。気を使えるくせに気になる事になるとてんで周りが見えなくなる。言われた側の気持ちを一切考えず自分の知りたい欲を優先する。でも素でやっているから無為に嫌えない。
「なんでもねえよ」
「なんでも無い訳ないでしょ」
間一髪いれずの返答にどもる。言えない、なんて言い訳聞いてくれる訳が無い。でもどう言えばいいんだ。頭をフル回転させて振り絞る。
「お前、今日バイトだったんじゃねえのかよ」
「え、そうだけど」
悪気もなくけろっと返すコイツに腹を立ててると
「あ、お店にいたこと?昼休憩に友達に借り出されたんだよ。誕生日プレゼント目星はつけてるから見てほしいって。」
翔平の言葉を頭の中で理解する。つまり、浮気じゃない。俺のはやとちり、勘違い。理解すると同時に熱が顔に集中する。それを見た翔平は察したのか
「え、何。浮気だと思って泣いたの?妬いたの?え、ナニソレ?」
真っ赤になった顔を隠すように翔平の胸に縋り付く。
「だって、おまえ、俺にはかわいいなんて言わねえじゃねえか。他所ではあんな簡単に言うのに・・・」
最後は羞恥で声が小さくなる、が翔平には全て聞こえてた様で
「それで、三ちゃん泣いてたの・・・?」
なんて言葉が返ってきたと思えば翔平の手が俺の顔に添えられる。そのまま俺の顔が上に向けられる。いったいんだよばか!
急に視界を埋め尽くした翔平の顔は緩みきって、幸せそうで。
「かーわいい、三ちゃん。俺にとって一番かわいいのは三ちゃんだよ。」
なんて甘い顔で言うものだから何も返せなくなる。
ああ、もう!かっこよすぎだばか!
ふと見たテレビでやってるドラマはよくある恋愛ドラマ。青春だかなんだかは知らないが若いが確実に学生ではない女優がまあよく似合っている制服を着て今流行のイケメン俳優に耳元で囁かれ真っ赤になっている。
そこではた、と気がつく。そういや俺が翔平に「かわいい」なんて言われたのはいつまでだっただろう。少なくとも再会してからは言われた覚えがない。これは恋人という関係になった今でも変わらない。あれ、俺翔平に愛されてるよな?でも最近アイツ忙しそうで二人きりで会えていない気がする。そりゃ吠舞羅では会うけど、あそこはお互いに他のメンツとも話すからめったに二人じゃ話せない。そもそもアンナもいるのにいちゃいちゃなんてことできない。いやするつもりもねえけど!!なんて一頻り頭の中で自問自答する。
翔平にとって俺はかわいいの対象に入らないのだろうか。いや、冷静に考えてそもそも俺にかわいいなんて要素あるか?ないな。顔だってそこそこ、口は悪いし手だってすぐに出る。性格だって小さいとよく言われる。俺って面倒くさい女じゃねーかという結論に至る。
そんな考えの悪循環に篭ってたってしかたがない、と決意し家を出る。世間一般にかわいいというものを探しに行こうじゃないかと意気込む。てかかわいいってなんだ、服?小物?いったい何をどうすれば俺にかわいい要素が追加されるんだ。絶望的じゃねえか。
思わずため息が出る。しかし家を出てしまったからには店まで行きたい。とりあえずここらで有名なショッピングモールへと急ぐ。中は平日の昼間だからか人でごった返す、と言う程でもなく快適に目的の店を見つけた。そう、見つけたまではいいのだ。
「は、」
思わず声が漏れる。嘘だろ。なんでアイツ女と一緒にいるんだよ。そう、俺が見つけてしまったのはかわいいが絵に描かれたような女と一緒にいる翔平だった。それだけならいい。アイツは顔が広いし女友達も男友達もたくさんいる。しかし今日は、バイトだと言っていたのだ。女友達と会うだけならそう言えば良い。センスもいい翔平はよく買い物に引っ張りだこだ。何も怒りはしない。けど、嘘をついて女と会っているのは浮気じゃあないのか。俺は捨てられるのか、なんて嫌な事ばかりが頭に浮かぶ。
「・・・かわいいじゃん・・・・・・」
何に対して言っているかまでは分からなかったが口の動きでかわいいと言ったのだけは分かる。笑顔で話す翔平の視線が俺に向いたのが分かったが我慢できずに涙が零れる。なんだ、俺のほうが浮気相手だったのか、頭が理解すると同時に踵を返す。最後に見えたアイツの口が俺の名前を呼んだ気がした。
あれからどれぐらい経ったか分からないけど気がついたら公園のベンチにいた。夕暮れ時で公園で遊ぶ親子もいない。ここの公園は翔平が入ってすぐやらかして草薙さんに死ぬほど怒られた後翔平と話した公園だ。つまり吠舞羅に近い。知り合いと会うかもなんて考える余裕もないくらい切羽詰まっていた事実に笑える。実際には乾いた声しかでなかったか。泣き腫らした目が痛い。顔を洗いたい、シャワーが浴びたい。とりあえず家に帰ろうと重たい足を動かす。
家に着く頃には真っ暗になっていたが気にせずアパートの階段を上る。疲れていて注意力が足りなかった俺は気がつかなかった所から急にかけられた声にひどく驚いてしまう。
「三ちゃんっ!!何処行ってたの!!!こんな遅くまで電話にもでないで!!!」
驚きで声も出ない俺を尻目に声をかけた張本人は慣れた様子で俺のポケットから鍵を取り出し勝手に鍵を開け俺の手を引き家へと入る。
「っは・・・?しょう、へい?」
なんとか絞り出した声は震えて情けない。
「ん、なーに?三ちゃん」
優しい声、のはずなのに笑っていない顔のせいで全然優しくない。怖い。
「お前、なんでここいんだよ」
ああ、やっぱりかわいくない。
「だって三ちゃん電話に出ないから。」
「それっ・・・は、フツーに気付かなかった、悪い。」
「ううん、取りあえず三ちゃん無事で良かった。で?なんで三ちゃん泣いてたの」
一番切り込まれたくない質問に固まる。コイツ昔からこんなとこあんだよ。気を使えるくせに気になる事になるとてんで周りが見えなくなる。言われた側の気持ちを一切考えず自分の知りたい欲を優先する。でも素でやっているから無為に嫌えない。
「なんでもねえよ」
「なんでも無い訳ないでしょ」
間一髪いれずの返答にどもる。言えない、なんて言い訳聞いてくれる訳が無い。でもどう言えばいいんだ。頭をフル回転させて振り絞る。
「お前、今日バイトだったんじゃねえのかよ」
「え、そうだけど」
悪気もなくけろっと返すコイツに腹を立ててると
「あ、お店にいたこと?昼休憩に友達に借り出されたんだよ。誕生日プレゼント目星はつけてるから見てほしいって。」
翔平の言葉を頭の中で理解する。つまり、浮気じゃない。俺のはやとちり、勘違い。理解すると同時に熱が顔に集中する。それを見た翔平は察したのか
「え、何。浮気だと思って泣いたの?妬いたの?え、ナニソレ?」
真っ赤になった顔を隠すように翔平の胸に縋り付く。
「だって、おまえ、俺にはかわいいなんて言わねえじゃねえか。他所ではあんな簡単に言うのに・・・」
最後は羞恥で声が小さくなる、が翔平には全て聞こえてた様で
「それで、三ちゃん泣いてたの・・・?」
なんて言葉が返ってきたと思えば翔平の手が俺の顔に添えられる。そのまま俺の顔が上に向けられる。いったいんだよばか!
急に視界を埋め尽くした翔平の顔は緩みきって、幸せそうで。
「かーわいい、三ちゃん。俺にとって一番かわいいのは三ちゃんだよ。」
なんて甘い顔で言うものだから何も返せなくなる。
ああ、もう!かっこよすぎだばか!
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