徳川カズヤ
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チョコレートは高カロリー?
今日は2月14日。恋する女の子が特に力を入れる日だ。かくいう私も前日にチョコレート菓子を作って、姉から香水を借りて、校則に反しないよう落ち着いた色合いのピンクベージュのマニキュアを塗って、ちょっとだけおしゃれしている。神様とかはよくわからないけれど、こういうイベントを作ってくれたことは感謝したい。付き合っていたとしても、何もないのに愛を伝えるなんてちょっと恥ずかしいもの。
私は前日のうちに、放課後に徳川くんと会う約束を取り付けていた。今日は生徒会と先生たちのとの会議があり、終わるのは17時頃だそうだ。それまでの時間をつぶすために、私は図書室にいた。机の上に今日出された数学の宿題を広げて唸っている。数学と格闘しているうちに17時を過ぎたけれど、連絡は来ない。もうそろそろ陽が沈みそうだ。夕日がノートに長い影を作る。
(長引いてるのかなあ)
通知が気になってスマートフォンのロック画面をずっと見つめてしまい、勉強も手につかない。一向に進まない数式の前に、私は頭を抱えた。きっと先生たちが会議を長引かせているのだ。先生は遅刻にはうるさい癖に、終わりの時間にはルーズなのである。今日くらい空気を読んでくれないものか。不貞腐れて机に伏せって、そして目を瞑った。
──電話の着信音で、目が覚めた。
私はディスプレイの名前を見て、慌てて電話に出た。スマホを左耳に当てて、右手で机を片づけ始める。だって早く彼に会いたいから。
「もしもし!」
『今会議が終わったんだが、どこにいる?』
「図書室! 徳川くんは?」
『会議室だ。生徒会室に鞄を取りに行ったら迎えにいく』
「大丈夫、すぐ片づけられるからそっちに行くよ」
『わかった』
「じゃあまた後で」
『ああ』
電話を切って、スマホを鞄に押し込んだ。代わりに鏡を取り出して寝癖を直すのも忘れない。リップを塗りなおして、図書室を駆け出した。
図書室で起きたときにはカーテンが閉められていたので気が付かなかったが、すっかり陽は沈みきっており廊下は薄暗かった。一つ下の階にある生徒会室の前に着くと、私は深呼吸してから扉を開けた。
「徳川くん」
「ああ。終わるのが遅くなってすまない」
「ううん、大丈夫。はい、これ。バレンタインデーのプレゼント」
私は紙袋を差し出した。バレンタインには少し似つかわしくないかなとは思ったけれど、彼の好きな群青色の紙袋である。渡すときに手が少しだけ触れて、どきどきした。やった、無事に渡せた。
「ありがとう」
彼の口角が少しだけ上がる。私の頬も自然と緩む。
「それにしても、すっかり遅くなってしまったな。放課後でなくても、渡すだけなら昼休みでもよかったのではないか?」
「ええと……どうせ渡すならちゃんとお話したいなと思って。だって昼間は他の子から沢山お菓子を貰うでしょ? だから時間ないかなって。徳川くんかっこいいし、それは仕方ないかなあって思うんだけど──」
「貰っていないが」
その返答に、私は目を瞬かせた。
「え? 私後輩の子が徳川先輩に渡そうって言ってるの聞いたけど」
「断った」
「ど、どうして?」
他の女の子からのプレゼントを断ってくれてちょっと嬉しい。しかし同時に、せっかく用意したのに受け取ってもらえなかった後輩がかわいそうに思えた。
「チョコレートは高カロリーだ。食事のバランスを狂わせやすい」
なるほど、断ったのにはそういう理由があったからか。徳川くんのストイックさを思い出し、理由に納得したと同時にこの行為がただの自己満足のように感じられて、私は目頭が熱くなった。
「じゃ、じゃあ私のも迷惑だった……?」
「あ、いや、そうではない」
「先に聞けば良かったよね、ごめん。これは自分で食べるよ」
「待て」
紙袋を取り返そうと手を伸ばすも、それを阻止するように彼は手を掲げる。身長189cmの彼が頭上に物を掲げれば、私が背伸びしても到底届かない。それでも私は手を伸ばし続けた。
「理由はそれだけではない」
「あっ」
徳川くんは空いている手で私の身体を引き寄せた。つま先立ちになっていた私の身体は、簡単に彼に倒れ込んでしまう。そのまま抱きとめられて、耳元に低く柔らかい声が響いた。
「君が好きだから。君から貰うもの以外は、必要ないと思ったからだ」
嬉しくて爆発してしまいそうだ。思わず息を飲んだ。今の表情を見られていなくて本当に良かった。
「君は言ってくれないのか?」
「えっ」
「今日は愛の告白をする日だろう」
嫌だなという顔をしながら彼を見ると、彼は私が言うまで離してくれなさそうな顔した。寡黙な彼は、目で訴えかけてくる。私はこの目に非常に弱いのだった。
「……私も、好きだよ」
徳川くんは満足げに微笑んだ。嗚呼神様、私は彼の唯一だと自惚れてもいいでしょうか。
Twitterでお題を募集し「バレンタインなのに忙しい彼」とお題を頂きました。ありがとうございました。
復刻ガチャで徳川さんが来てくれたのでうれしいです。
2021/02/10
今日は2月14日。恋する女の子が特に力を入れる日だ。かくいう私も前日にチョコレート菓子を作って、姉から香水を借りて、校則に反しないよう落ち着いた色合いのピンクベージュのマニキュアを塗って、ちょっとだけおしゃれしている。神様とかはよくわからないけれど、こういうイベントを作ってくれたことは感謝したい。付き合っていたとしても、何もないのに愛を伝えるなんてちょっと恥ずかしいもの。
私は前日のうちに、放課後に徳川くんと会う約束を取り付けていた。今日は生徒会と先生たちのとの会議があり、終わるのは17時頃だそうだ。それまでの時間をつぶすために、私は図書室にいた。机の上に今日出された数学の宿題を広げて唸っている。数学と格闘しているうちに17時を過ぎたけれど、連絡は来ない。もうそろそろ陽が沈みそうだ。夕日がノートに長い影を作る。
(長引いてるのかなあ)
通知が気になってスマートフォンのロック画面をずっと見つめてしまい、勉強も手につかない。一向に進まない数式の前に、私は頭を抱えた。きっと先生たちが会議を長引かせているのだ。先生は遅刻にはうるさい癖に、終わりの時間にはルーズなのである。今日くらい空気を読んでくれないものか。不貞腐れて机に伏せって、そして目を瞑った。
──電話の着信音で、目が覚めた。
私はディスプレイの名前を見て、慌てて電話に出た。スマホを左耳に当てて、右手で机を片づけ始める。だって早く彼に会いたいから。
「もしもし!」
『今会議が終わったんだが、どこにいる?』
「図書室! 徳川くんは?」
『会議室だ。生徒会室に鞄を取りに行ったら迎えにいく』
「大丈夫、すぐ片づけられるからそっちに行くよ」
『わかった』
「じゃあまた後で」
『ああ』
電話を切って、スマホを鞄に押し込んだ。代わりに鏡を取り出して寝癖を直すのも忘れない。リップを塗りなおして、図書室を駆け出した。
図書室で起きたときにはカーテンが閉められていたので気が付かなかったが、すっかり陽は沈みきっており廊下は薄暗かった。一つ下の階にある生徒会室の前に着くと、私は深呼吸してから扉を開けた。
「徳川くん」
「ああ。終わるのが遅くなってすまない」
「ううん、大丈夫。はい、これ。バレンタインデーのプレゼント」
私は紙袋を差し出した。バレンタインには少し似つかわしくないかなとは思ったけれど、彼の好きな群青色の紙袋である。渡すときに手が少しだけ触れて、どきどきした。やった、無事に渡せた。
「ありがとう」
彼の口角が少しだけ上がる。私の頬も自然と緩む。
「それにしても、すっかり遅くなってしまったな。放課後でなくても、渡すだけなら昼休みでもよかったのではないか?」
「ええと……どうせ渡すならちゃんとお話したいなと思って。だって昼間は他の子から沢山お菓子を貰うでしょ? だから時間ないかなって。徳川くんかっこいいし、それは仕方ないかなあって思うんだけど──」
「貰っていないが」
その返答に、私は目を瞬かせた。
「え? 私後輩の子が徳川先輩に渡そうって言ってるの聞いたけど」
「断った」
「ど、どうして?」
他の女の子からのプレゼントを断ってくれてちょっと嬉しい。しかし同時に、せっかく用意したのに受け取ってもらえなかった後輩がかわいそうに思えた。
「チョコレートは高カロリーだ。食事のバランスを狂わせやすい」
なるほど、断ったのにはそういう理由があったからか。徳川くんのストイックさを思い出し、理由に納得したと同時にこの行為がただの自己満足のように感じられて、私は目頭が熱くなった。
「じゃ、じゃあ私のも迷惑だった……?」
「あ、いや、そうではない」
「先に聞けば良かったよね、ごめん。これは自分で食べるよ」
「待て」
紙袋を取り返そうと手を伸ばすも、それを阻止するように彼は手を掲げる。身長189cmの彼が頭上に物を掲げれば、私が背伸びしても到底届かない。それでも私は手を伸ばし続けた。
「理由はそれだけではない」
「あっ」
徳川くんは空いている手で私の身体を引き寄せた。つま先立ちになっていた私の身体は、簡単に彼に倒れ込んでしまう。そのまま抱きとめられて、耳元に低く柔らかい声が響いた。
「君が好きだから。君から貰うもの以外は、必要ないと思ったからだ」
嬉しくて爆発してしまいそうだ。思わず息を飲んだ。今の表情を見られていなくて本当に良かった。
「君は言ってくれないのか?」
「えっ」
「今日は愛の告白をする日だろう」
嫌だなという顔をしながら彼を見ると、彼は私が言うまで離してくれなさそうな顔した。寡黙な彼は、目で訴えかけてくる。私はこの目に非常に弱いのだった。
「……私も、好きだよ」
徳川くんは満足げに微笑んだ。嗚呼神様、私は彼の唯一だと自惚れてもいいでしょうか。
Twitterでお題を募集し「バレンタインなのに忙しい彼」とお題を頂きました。ありがとうございました。
復刻ガチャで徳川さんが来てくれたのでうれしいです。
2021/02/10
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