観月夢/診断メーカー短編
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君がいない生活は味がしない
溶けたアイスが手首を伝う。それにも関わらず、名前はそれを拭いもせず、慌てて食べようともしなかった。
「観月君、いつ帰ってくるんだろうな」
彼は突然テニスの選抜合宿とやらに行ってしまい、それからというもの、連絡も絶え絶えになったのであった。
「連絡もくれないし、いつ終わるかもわからないっていうし……」
バニラとイチゴの境界が曖昧になって、まるで先の見えない未来のようだった。あれから、ため息を何度こぼしただろう。駅とは反対方向の、静まったコンビニの前で一人たたずんでいた。
「こんなところにいたんですか」
俯いて溶けたアイスを見つめていた名前は、懐かしい声にぱっと顔をあげた。目の前にいたのは、会いたいと思っていたあの人だった。
「観月君……?」
「早く会いたくて部屋に行ったのに、君という子は出掛けてしまったというのですから、探すのに苦労しましたよ」
「あ……ごめ……、ふええ」
「ちょっ、名前!?」
何がなんだかわからなくなった。ずっと追い求めていた人が目の前にいた。もう一生会えないのではないかと思うほどに遠く離れてしまった彼がいた。観月は泣き始める彼女の涙に、一瞬狼狽えた。
「どうしてそこまで泣くんです。ほら、アイスが溶けてしまっているではありませんか」
「だって、だってぇ」
「仕方のない子ですね、よしよし」
視界がぼやけて必死に目元を拭っていると、アイスで汚れた手を拭いてくれた。そして全部溶ける前に食べてしまいなさいと口に突っ込まれた。味のしなかったアイスは途端においしく感じられた。
お礼を言いたいのに、おかえりを言いたいのに、何から喋ればよいのかわからなかった。本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った。
君がいない生活は味がしない
溶けたアイスが手首を伝う。それにも関わらず、名前はそれを拭いもせず、慌てて食べようともしなかった。
「観月君、いつ帰ってくるんだろうな」
彼は突然テニスの選抜合宿とやらに行ってしまい、それからというもの、連絡も絶え絶えになったのであった。
「連絡もくれないし、いつ終わるかもわからないっていうし……」
バニラとイチゴの境界が曖昧になって、まるで先の見えない未来のようだった。あれから、ため息を何度こぼしただろう。駅とは反対方向の、静まったコンビニの前で一人たたずんでいた。
「こんなところにいたんですか」
俯いて溶けたアイスを見つめていた名前は、懐かしい声にぱっと顔をあげた。目の前にいたのは、会いたいと思っていたあの人だった。
「観月君……?」
「早く会いたくて部屋に行ったのに、君という子は出掛けてしまったというのですから、探すのに苦労しましたよ」
「あ……ごめ……、ふええ」
「ちょっ、名前!?」
何がなんだかわからなくなった。ずっと追い求めていた人が目の前にいた。もう一生会えないのではないかと思うほどに遠く離れてしまった彼がいた。観月は泣き始める彼女の涙に、一瞬狼狽えた。
「どうしてそこまで泣くんです。ほら、アイスが溶けてしまっているではありませんか」
「だって、だってぇ」
「仕方のない子ですね、よしよし」
視界がぼやけて必死に目元を拭っていると、アイスで汚れた手を拭いてくれた。そして全部溶ける前に食べてしまいなさいと口に突っ込まれた。味のしなかったアイスは途端においしく感じられた。
お礼を言いたいのに、おかえりを言いたいのに、何から喋ればよいのかわからなかった。本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った。
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