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待ち合わせ

遅い。


遅すぎる。

約束から約1時間。

待てども待てども約束をした本人は現れない。
携帯に連絡をしても一切連絡なし。


今日はお天気も良くて、5月特有の爽やかな風が頬をなでる。
この前買った青いギンガムチェックのスカートを初めて履いて、
楽しみな気持ちで家を出たのに。

やっぱり家まで迎えに行けばよかった。

あいつの言葉信じた自分がバカだったわ。


「あれ?雪村じゃん。何してんの?」

「あ、村山くん。待ち合わせしてるの」

同じサークルの村山くんと会った。
少し気まずい。


「へー。誰と?」

「幼馴染よ」

「そうなんだ、たまには俺とも遊んでくれよー。
あ、なんだったら今日俺も仲間入れてくれない?
すっげー暇してて」


こういう強引なところがすごい苦手。


「雪村って二人きりだとぜってー遊んでくれないじゃん?
俺さぁまじで雪村のこと狙ってんのよ。
一回でいいから俺とデートして欲しいんだけど。
そしたら俺の良さに気付いてもらえると思うんだよ。
俺見た目がチャラいかもだけど、中身結構紳士だぜー?」

ベラベラと喋りだすところも苦手。
自分でそんなこと言ってて恥ずかしくないのかしら。


はぁ、早く幽助来てくれないかな。


「おーい、雪村聞いてる?」

目の前で手を振られて我に返る。

「あ、ごめんね。今日は…」

その時、村山くんが目の前から消えて、
待ち続けていた張本人が村山くんの胸倉をつかんで
今にも人を殺しそうな目つきで睨んでいる。

「おいてめぇ、人の女ナンパしてんじゃねぇよ。」

「ナ、ナンパなんて、、!
俺は雪村の知り合いで、、!」

「そう。私の大学の友達だから。
その手を離しなさいっ」

ペチっと幽助の手を叩く。

「友達ー?おめぇすげぇ嫌そうな顔してたじゃん」

「ゔっ…」


本当、そういうところは鋭いんだから。


「お、幼馴染って男だったのかよ。
じゃ、じゃあな!雪村!」


逃げさるように走って去っていく彼を見て少し同情。
青い顔してたけど大丈夫かしら。

でもこれでしつこく話しかけてこなくなればいいんだけど。


「変な男に引っかかってんなよ」

「誰のせいだと思ってんのよ。」

「お前ならビンタ一発で追っ払えるだろ」

「あんた以外にできるわけないじゃない。
っていうか、遅刻したことに対してなんもないわけ?」


ふん、とそっぽを向く。


「いやー、螢子さん。
これには訳があってよ」

「…」


「昨日さぁ常連のおっちゃんが、
競馬勝ったから幽ちゃんにもおごってやる!
なんて言われて、すげぇ飲まされて。」

「…」

「店閉めたの朝の5時だぜ?
それまでずっと飲まされててさぁ、
家着いた途端眠っちまって。
そんで目が覚めたら約束の時間過ぎてるし。
連絡しようと思ったんだけど、来た方が早いかなーと」

「…」

「…螢子さん?」

「…」

「えっとー…」

「…」

「遅刻シテゴメンナサイ。」


言い訳ばっかりして。
まずはゴメンナサイの言葉でしょ。
でも素直に許してやらないんだから。


「嫌」

「うぐっ…どうしたら許してくれますか」

「私、欲しいワンピースあるのよねー」

「い、いくらくらいだよ」

「確か2万円」

「う…今月パチンコで負けっぱなしなんだよな…」

「じゃあいいや。
さっきの男の子と買い物デートでもしようかしら」

本当はそんな気1ミリもないんだけど。


「だー!わーったよ!
喜んで買わせていただきますよ!」

「わーい幽助ありがとー」

「鬼め」

「なんかいった?」

「いえ、何でも」 

「あっそ」

「じゃ行くか」

「あそこビルの中にお店入ってるの」

「へーい」


幽助の腕を組んで歩く。
それだけで満たされた気持ちになる。


ああやって、男の人追い払ってくれる姿を見ると
たまには外で待ち合わせも悪くないかな、なんて。
遅刻されるのは嫌だけど。


楽しそうに笑ってる幽助の横顔を見上げながら考えた、初夏の陽気の日。

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