願うことは、
目が覚めると、目の前にはいびきをかきながら爆睡している幽助の横顔が見えた。
ああ、そうか
昨日は年越しでそのまま幽助の家に泊まったんだっけ
起き抜けのまだ完全に頭が起きていない状況で、昨日のこと思い出す。
特にいつもと変わらない夜。 ただ、カウントダウンをして幽助が作ってくれた年越しそばを食べたってところは普段と違ってるわよね。 その後二人でベッドに入って幽助からキスされて、そのままー・・・
年越し早々やることが、ソレだなんて本当飽きないわよね
いまだにグースカ寝ている幽助の顔を呆れ顔で見る。 他の男の人のことを知らないけれど、これほどまで体を求めてくるものなのかしら
なんて、朝から変なことを考えても仕方ないしシャワーでも浴びてこよっと
むくりと上半身を起こし、伸びをする。近くに置いてあった携帯を見ると、そこには1月1日の文字が見えた。
そっか、今日は元旦なのよね。
年越しを幽助と過ごすのは初めてだった。 去年も一昨年も年越しは人間界にいなかったし。 改めてこの男がこうして人間界にいることは当たり前じゃないことをしみじみ思う
初めての年越しなのに、普段と変わらないことを少し不満に思っていたけれど こうして幽助が隣にいてくれるだけでなんだか今年はいい年になりそうな気がした。
あたしも大概単純よね
自嘲気味に笑ってベッドから出ようとすると寝ていたはずの幽助がモゾモゾと動き始めた。
「けぇこ、さみーから出んなよー」
まだ寝ぼけているのか、あたしが寝ていた場所を手でポンポンと探している姿は子供のようで見ていて面白い
「何言ってんのよ、もう朝なんだからあんたも起きなさいよ。あたしシャワー浴びてくるから」 「けぇこちゃーん僕を置いてかないでー」
いつぞやに聞いたセリフをテキトーに流して、お風呂場へ向かう。 熱いシャワーを浴びて全身をお気に入りのボディソープで洗い、 スキンケアをしてリビングへ戻るとまだ幽助の姿がなかった。
「もうっまだ寝てるの?」
すると、ベランダのドアが開き幽助がタバコを咥えながら部屋に戻ろうとしているところだった。
「ちょっと、タバコ吸うならベランダって言ったでしょ」 「外、スッゲーさみぃんだけど」 「知らないわよそんなこと。とにかくタバコは絶対部屋の中では吸わないでちょうだい」 「ひーおっそろしい女神様だな」
ぶつくさ言う幽助を無視して、朝食作りに取り掛かる。 元旦って言っても、この家にはお餅もなければお正月を感じるものが特にないのでいつも通りのトーストにスクランブルエッグに・・・ とメニューを考えていると肩に重みを感じた。幽助が後ろから抱きついてきたのだ。
「ちょっと、重いんですけど。」 「腹減った」 「だからどいてってば。ごはん作れないわよ」 「外で吸ってきたから冷えちまった」 「ホットコーヒー淹れる?」 「おー頼む」
これ以上どいてと言っても要求に答えてくれなさそうなので、コーヒーを淹れるまではこのままの体勢でいてあげようかな
お湯が沸くのを待つ間、ぼーっと流れているテレビを見ていると元旦ということもあり各地の初詣の様子が流れていた。
「スッゲー人だな」 「今日は元旦だもの、みんな初詣に行ってるのよ」 「こんなさみぃのによく行くよな」 「元旦に行くからいいんじゃない」 「そうかあ?」
心底わからない、と言うように幽助が首を傾げる。 お湯が沸いたのでホットコーヒーを淹れながら、いつもより少し特別な日にしたくなったあたしは提案した。
「幽助、今から初詣行こ」 「おいおい、勘弁してくれよ。こんな寒くてあんな人だかりの中に行くなんて真っ平ごめんだぜ」 「・・・あっそ。じゃああたし帰って友達と行くから」 「待てって。初詣なんて今日じゃなくたっていいだろ?あったかくなったら一緒に行こうぜ」 「あたしは今日行きたいの」 「なんだっていちばん混んでる日に行きてえんだよ」 「1年のスタート、元旦らしく過ごしたっていいじゃない」 「だけどよー」
お互い一歩も譲らない。ただの思いつきで提案したけれど、ここまできたら絶対行きたい、もはやただの意地の張り合いだ。 だけどそんな時はいつも、幽助が折れてくれる。
「わーったよ、行けばいーんだろ」 「やった!あたし準備してくる。朝ごはんは外で食べましょ」
ため息をこぼしている幽助に対して、あたしは鼻歌混じりで準備をする。 浦飯家にしょっちゅう泊まっているので、着替えや化粧道具一式などはほぼ揃っている。 お気に入りのニットのワンピースに袖を通し、暖かいタイツを履いて。 少しだけお化粧をしてバッグに最低限のものをつめてコートを羽織って準備万端。 あ、大事なものをポケットに2つ忍ばせる。
「螢子、行くぞ」 「はーい」
幽助はというと寒い寒いという言う割にはジーパンにジャケットという装いで、見るからに寒そうな格好だった。
「それでいくの?」 「?ああ」 「寒いって言う割には厚着しないわよね」 「だって動きにくいじゃねえか」 「そんな運動するわけじゃないんだから、もっと着込めばいいのに」 「いーんだよ。ほら、行くぞ」
玄関を出ると、今にも雪が降りそうなくらい空気が冷たかった。
「あ”ー・・・スッゲェさみぃ・・・」 「だから厚着すればって言ったのに」 「・・うっせ」
ポケットの中に忍ばせたカイロが、少しずつ温まってきた。
「幽助っ」
いつも、2人で出かける時は手を繋いだり腕を組んだりしないけど 今日は、一年の始まりだし、ね。
幽助の空いている左手をとって自分の右手と繋ぐ。
手を繋ぐこと以上のことをしているのに、なぜか恋人つなぎはとても恥ずかしくって。 それは幽助も同じみたいで耳がほんのり赤くなっていた
「幽助、耳赤いわよ」 「…さみぃからだよ」 「ふーん?」
ポケットの中に手を入れ温まったカイロを幽助の目の前に差し出す。
「使う?」 「お、ありがてえ!」
左のポケットの中にしまい込むのを見て、少し違和感を感じると幽助と目があった。
「どうしたの?なんで、」
こっちのポケットに入れるの?と、 疑問をぶつける前に繋いでいた手を幽助のジャケットの左ポケットへとすぽりと入れられ、ギュッと手を握られた。
「…ま、この方があったけぇだろ」
寒さなのか、照れなのか、 幽助の耳は先ほどよりも赤くなっていて つられてあたしの耳も熱くなっていくのを感じた。
「…そうね」
ふふっと笑みが溢れる。
どうか、この時間がいつまでも続きますように。 今年も来年も、その先もずっと。 幽助の隣にいられますように
少し早いけれど、心の中で神様に祈りを捧げた。
起き抜けのまだ完全に頭が起きていない状況で、昨日のこと思い出す。
特にいつもと変わらない夜。 ただ、カウントダウンをして幽助が作ってくれた年越しそばを食べたってところは普段と違ってるわよね。 その後二人でベッドに入って幽助からキスされて、そのままー・・・
年越し早々やることが、ソレだなんて本当飽きないわよね
いまだにグースカ寝ている幽助の顔を呆れ顔で見る。 他の男の人のことを知らないけれど、これほどまで体を求めてくるものなのかしら
なんて、朝から変なことを考えても仕方ないしシャワーでも浴びてこよっと
むくりと上半身を起こし、伸びをする。近くに置いてあった携帯を見ると、そこには1月1日の文字が見えた。
そっか、今日は元旦なのよね。
年越しを幽助と過ごすのは初めてだった。 去年も一昨年も年越しは人間界にいなかったし。 改めてこの男がこうして人間界にいることは当たり前じゃないことをしみじみ思う
初めての年越しなのに、普段と変わらないことを少し不満に思っていたけれど こうして幽助が隣にいてくれるだけでなんだか今年はいい年になりそうな気がした。
あたしも大概単純よね
自嘲気味に笑ってベッドから出ようとすると寝ていたはずの幽助がモゾモゾと動き始めた。
「けぇこ、さみーから出んなよー」
まだ寝ぼけているのか、あたしが寝ていた場所を手でポンポンと探している姿は子供のようで見ていて面白い
「何言ってんのよ、もう朝なんだからあんたも起きなさいよ。あたしシャワー浴びてくるから」 「けぇこちゃーん僕を置いてかないでー」
いつぞやに聞いたセリフをテキトーに流して、お風呂場へ向かう。 熱いシャワーを浴びて全身をお気に入りのボディソープで洗い、 スキンケアをしてリビングへ戻るとまだ幽助の姿がなかった。
「もうっまだ寝てるの?」
すると、ベランダのドアが開き幽助がタバコを咥えながら部屋に戻ろうとしているところだった。
「ちょっと、タバコ吸うならベランダって言ったでしょ」 「外、スッゲーさみぃんだけど」 「知らないわよそんなこと。とにかくタバコは絶対部屋の中では吸わないでちょうだい」 「ひーおっそろしい女神様だな」
ぶつくさ言う幽助を無視して、朝食作りに取り掛かる。 元旦って言っても、この家にはお餅もなければお正月を感じるものが特にないのでいつも通りのトーストにスクランブルエッグに・・・ とメニューを考えていると肩に重みを感じた。幽助が後ろから抱きついてきたのだ。
「ちょっと、重いんですけど。」 「腹減った」 「だからどいてってば。ごはん作れないわよ」 「外で吸ってきたから冷えちまった」 「ホットコーヒー淹れる?」 「おー頼む」
これ以上どいてと言っても要求に答えてくれなさそうなので、コーヒーを淹れるまではこのままの体勢でいてあげようかな
お湯が沸くのを待つ間、ぼーっと流れているテレビを見ていると元旦ということもあり各地の初詣の様子が流れていた。
「スッゲー人だな」 「今日は元旦だもの、みんな初詣に行ってるのよ」 「こんなさみぃのによく行くよな」 「元旦に行くからいいんじゃない」 「そうかあ?」
心底わからない、と言うように幽助が首を傾げる。 お湯が沸いたのでホットコーヒーを淹れながら、いつもより少し特別な日にしたくなったあたしは提案した。
「幽助、今から初詣行こ」 「おいおい、勘弁してくれよ。こんな寒くてあんな人だかりの中に行くなんて真っ平ごめんだぜ」 「・・・あっそ。じゃああたし帰って友達と行くから」 「待てって。初詣なんて今日じゃなくたっていいだろ?あったかくなったら一緒に行こうぜ」 「あたしは今日行きたいの」 「なんだっていちばん混んでる日に行きてえんだよ」 「1年のスタート、元旦らしく過ごしたっていいじゃない」 「だけどよー」
お互い一歩も譲らない。ただの思いつきで提案したけれど、ここまできたら絶対行きたい、もはやただの意地の張り合いだ。 だけどそんな時はいつも、幽助が折れてくれる。
「わーったよ、行けばいーんだろ」 「やった!あたし準備してくる。朝ごはんは外で食べましょ」
ため息をこぼしている幽助に対して、あたしは鼻歌混じりで準備をする。 浦飯家にしょっちゅう泊まっているので、着替えや化粧道具一式などはほぼ揃っている。 お気に入りのニットのワンピースに袖を通し、暖かいタイツを履いて。 少しだけお化粧をしてバッグに最低限のものをつめてコートを羽織って準備万端。 あ、大事なものをポケットに2つ忍ばせる。
「螢子、行くぞ」 「はーい」
幽助はというと寒い寒いという言う割にはジーパンにジャケットという装いで、見るからに寒そうな格好だった。
「それでいくの?」 「?ああ」 「寒いって言う割には厚着しないわよね」 「だって動きにくいじゃねえか」 「そんな運動するわけじゃないんだから、もっと着込めばいいのに」 「いーんだよ。ほら、行くぞ」
玄関を出ると、今にも雪が降りそうなくらい空気が冷たかった。
「あ”ー・・・スッゲェさみぃ・・・」 「だから厚着すればって言ったのに」 「・・うっせ」
ポケットの中に忍ばせたカイロが、少しずつ温まってきた。
「幽助っ」
いつも、2人で出かける時は手を繋いだり腕を組んだりしないけど 今日は、一年の始まりだし、ね。
幽助の空いている左手をとって自分の右手と繋ぐ。
手を繋ぐこと以上のことをしているのに、なぜか恋人つなぎはとても恥ずかしくって。 それは幽助も同じみたいで耳がほんのり赤くなっていた
「幽助、耳赤いわよ」 「…さみぃからだよ」 「ふーん?」
ポケットの中に手を入れ温まったカイロを幽助の目の前に差し出す。
「使う?」 「お、ありがてえ!」
左のポケットの中にしまい込むのを見て、少し違和感を感じると幽助と目があった。
「どうしたの?なんで、」
こっちのポケットに入れるの?と、 疑問をぶつける前に繋いでいた手を幽助のジャケットの左ポケットへとすぽりと入れられ、ギュッと手を握られた。
「…ま、この方があったけぇだろ」
寒さなのか、照れなのか、 幽助の耳は先ほどよりも赤くなっていて つられてあたしの耳も熱くなっていくのを感じた。
「…そうね」
ふふっと笑みが溢れる。
どうか、この時間がいつまでも続きますように。 今年も来年も、その先もずっと。 幽助の隣にいられますように
少し早いけれど、心の中で神様に祈りを捧げた。
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