ハッピー?バレンタイン
「雪村!俺と付き合ってくれ!」
「ごめんなさい」
「絶対俺のこと好きにさせるから!」
「私好きな人いるから、」
「そいつなんかよりも俺の方がいいって!
なっ?頼むよ!」
「…」
これで何回目だろうか。
2月に入ってからというもの、男子から告白の嵐だった。
大体一回断ればすぐに身を引いてくれるけれど、何この人、しつこい。
ため息出ちゃいそう
「お気持ちを嬉しいけど、あなたとは付き合えません」
「じゃあ!バレンタインにチョコレートくれるだけでいいから!」
「はあ?」
思わず出ちゃった。
「雪村のチョコ、俺にだけくれよ!そしたら諦めるから!」
「な、何言ってるの‥?」
もう苦笑いしかできない。
むしろ笑えてるかしら‥
「俺と付き合わなくていいから、バレンタインの日、俺にだけチョコレート渡してほしいってこと!」
「なんであなたに、」
「そしたら諦めるから!!」
グッ、と距離を縮められて慌てて身を引く。
手を握られそうな勢いで少し怖い、
危なく右手が出そうになっちゃう
「そんなことっ」
できるわけない、と言おうとしたけれど
「じゃあ当日楽しみにしてるから!」
そう言って颯爽と目の前からいなくなってしまった。
はあ、なんて人の話を聞かない人なんだろう。
バレンタインなんて来なければいいのに。
あの人になんか絶対作らないし。
肩を落として教室に戻った。
「けーこ!!2組の尾山と付き合ってたの?!」
教室にもどるやいなや、友人の夏子があたしのそばまで駆けてきた。
「えっ?ちょっと待って、どういうこと?」
「だってさっき尾山が色んなクラスの子に
俺雪村からチョコもらうから!しかも俺にしかくれない本命チョコだから!
って言いふらしてたよ?」
「あたしそんなこと一言も言ってないんだけどっ!」
思わず夏子に怒鳴ってしまいそう勢いで声が出た。
「さっき告白されて断ったのにすごいしつこくて、最終的には俺にだけチョコくれたら諦めるからくれって言われて、それも断ったのよ?
それがどうしてそんな話になるわけ?」
夏子に文句を言いながら自席に座る。
イライラとした気持ちが指先に表れ、タンタンタン、と机を叩く。
「そ、そうだよねっわたしもおかしいなとは思ったんだけど。螢子から尾山を好きだなんて一言も聞いたことなかったし、それに」
「それに?」
「っ、なんでもない!」
何かいいたそうな顔をしていたけれど、夏子がなんでもない、と言ったのであえてそれ以上深く聞き入ることはしなかった。
放課後を告げるチャイムがなり、帰り支度をしているとまた色んな人達から例の話を聞かれる。
いちいち否定をするのがめんどくさかったけれど、このままにしておくとあの人と付き合うという最悪なシナリオになるのだけは避けたかった。
バレンタインまであと数日。
明日にはみんな忘れてるといいんだけど、、
バレンタイン前日。
あの噂が流された初日に比べれば、あまり言ってくる人も少なくなったけれど、本人からのアプローチが激しくなった。
廊下でたまたますれ違えば、馴れ馴れしく呼びつけられたり、昼休みのたびに教室に来ては一緒に弁当を食べようと誘われたり、一緒に帰ろうと誘われたり。全てを断っても全く応えていない様子だった。
今日もいつものように、昼休み、あの人はまた教室へときた。
「雪村!昼飯一緒にくおーぜ!」
しかし、今日はいつもと違う。
きっとこの後あいつが来てくれる、そんな予感がした。
「だから何回も言ってるでしょ?
あなたとは食べません、って」
「恥ずかしがらないでいいんだぜ?
2人っきりで屋上で食べようぜ!」
「だからー‥」
教室の入り口で押し問答をしていると、屋上の昼寝から戻ってきた幽助が後ろに立っていた。
「ふあー‥なあ、邪魔なんだけど‥」
伸びをしながら、あからさまに機嫌の悪い様子で尾山に話しかける幽助。
「あ、ご、ごめん‥今日はいいや!
じゃ、またな、雪村!
明日すっげー楽しみにしてるから!」
幽助の様子を見てすぐに逃げ出すようにしてクラスへと戻っていった姿を見て、少し清々とする。
「明日?なんかあんのか?」
「知らなーい」
「あっそ?なー、腹減ったんだけどお前飯持ってる?」
「自分の分しかないわよ」
「くれ」
「自分で購買で買ってきなさいよ」
「たりーんだよ、あ、桑原に買ってきてもらおーっと」
「あんた、桑原君のことなんだと思ってるのよ?」
「んー仲間?」
「仲間になんてことさせよーとしてんのよ‥仕方ないわねぇ、あたしのあげるから」
「螢子めしどーすんの?」
「あたしが購買で買ってくるわ」
「やりぃ!今日の弁当誰作ったんだ?」
「あたしだけど?」
「じゃあ俺が毒見してやる」
「失礼ねっそんなこと言うとあげないわよ」
「うそうそ!螢子ちゃん特製弁当ありがたーく頂くぜ!」
「ちゃんと感謝して食べなさいよ」
嬉しそうに笑う幽助に、あたしもつられて笑顔になってしまう。
「幽助」
「ん?」
「あたしのお弁当食べる代わりに、明日ちゃんと学校来るって約束して」
「明日?なんかあんのか?」
「約束して」
「お、おお。わかった」
明日、幽助もいればあの人のこともなんとかなるだろう、
明日で全て片付く、そう思うと少し心が軽くなった。
家に帰り、買ってきたチョコレートの材料を見渡す。
うん、家族の分と友チョコと‥
作れそうね。
あたしは鼻歌混じりで、チョコレートを作り始めた。
「ごめんなさい」
「絶対俺のこと好きにさせるから!」
「私好きな人いるから、」
「そいつなんかよりも俺の方がいいって!
なっ?頼むよ!」
「…」
これで何回目だろうか。
2月に入ってからというもの、男子から告白の嵐だった。
大体一回断ればすぐに身を引いてくれるけれど、何この人、しつこい。
ため息出ちゃいそう
「お気持ちを嬉しいけど、あなたとは付き合えません」
「じゃあ!バレンタインにチョコレートくれるだけでいいから!」
「はあ?」
思わず出ちゃった。
「雪村のチョコ、俺にだけくれよ!そしたら諦めるから!」
「な、何言ってるの‥?」
もう苦笑いしかできない。
むしろ笑えてるかしら‥
「俺と付き合わなくていいから、バレンタインの日、俺にだけチョコレート渡してほしいってこと!」
「なんであなたに、」
「そしたら諦めるから!!」
グッ、と距離を縮められて慌てて身を引く。
手を握られそうな勢いで少し怖い、
危なく右手が出そうになっちゃう
「そんなことっ」
できるわけない、と言おうとしたけれど
「じゃあ当日楽しみにしてるから!」
そう言って颯爽と目の前からいなくなってしまった。
はあ、なんて人の話を聞かない人なんだろう。
バレンタインなんて来なければいいのに。
あの人になんか絶対作らないし。
肩を落として教室に戻った。
「けーこ!!2組の尾山と付き合ってたの?!」
教室にもどるやいなや、友人の夏子があたしのそばまで駆けてきた。
「えっ?ちょっと待って、どういうこと?」
「だってさっき尾山が色んなクラスの子に
俺雪村からチョコもらうから!しかも俺にしかくれない本命チョコだから!
って言いふらしてたよ?」
「あたしそんなこと一言も言ってないんだけどっ!」
思わず夏子に怒鳴ってしまいそう勢いで声が出た。
「さっき告白されて断ったのにすごいしつこくて、最終的には俺にだけチョコくれたら諦めるからくれって言われて、それも断ったのよ?
それがどうしてそんな話になるわけ?」
夏子に文句を言いながら自席に座る。
イライラとした気持ちが指先に表れ、タンタンタン、と机を叩く。
「そ、そうだよねっわたしもおかしいなとは思ったんだけど。螢子から尾山を好きだなんて一言も聞いたことなかったし、それに」
「それに?」
「っ、なんでもない!」
何かいいたそうな顔をしていたけれど、夏子がなんでもない、と言ったのであえてそれ以上深く聞き入ることはしなかった。
放課後を告げるチャイムがなり、帰り支度をしているとまた色んな人達から例の話を聞かれる。
いちいち否定をするのがめんどくさかったけれど、このままにしておくとあの人と付き合うという最悪なシナリオになるのだけは避けたかった。
バレンタインまであと数日。
明日にはみんな忘れてるといいんだけど、、
バレンタイン前日。
あの噂が流された初日に比べれば、あまり言ってくる人も少なくなったけれど、本人からのアプローチが激しくなった。
廊下でたまたますれ違えば、馴れ馴れしく呼びつけられたり、昼休みのたびに教室に来ては一緒に弁当を食べようと誘われたり、一緒に帰ろうと誘われたり。全てを断っても全く応えていない様子だった。
今日もいつものように、昼休み、あの人はまた教室へときた。
「雪村!昼飯一緒にくおーぜ!」
しかし、今日はいつもと違う。
きっとこの後あいつが来てくれる、そんな予感がした。
「だから何回も言ってるでしょ?
あなたとは食べません、って」
「恥ずかしがらないでいいんだぜ?
2人っきりで屋上で食べようぜ!」
「だからー‥」
教室の入り口で押し問答をしていると、屋上の昼寝から戻ってきた幽助が後ろに立っていた。
「ふあー‥なあ、邪魔なんだけど‥」
伸びをしながら、あからさまに機嫌の悪い様子で尾山に話しかける幽助。
「あ、ご、ごめん‥今日はいいや!
じゃ、またな、雪村!
明日すっげー楽しみにしてるから!」
幽助の様子を見てすぐに逃げ出すようにしてクラスへと戻っていった姿を見て、少し清々とする。
「明日?なんかあんのか?」
「知らなーい」
「あっそ?なー、腹減ったんだけどお前飯持ってる?」
「自分の分しかないわよ」
「くれ」
「自分で購買で買ってきなさいよ」
「たりーんだよ、あ、桑原に買ってきてもらおーっと」
「あんた、桑原君のことなんだと思ってるのよ?」
「んー仲間?」
「仲間になんてことさせよーとしてんのよ‥仕方ないわねぇ、あたしのあげるから」
「螢子めしどーすんの?」
「あたしが購買で買ってくるわ」
「やりぃ!今日の弁当誰作ったんだ?」
「あたしだけど?」
「じゃあ俺が毒見してやる」
「失礼ねっそんなこと言うとあげないわよ」
「うそうそ!螢子ちゃん特製弁当ありがたーく頂くぜ!」
「ちゃんと感謝して食べなさいよ」
嬉しそうに笑う幽助に、あたしもつられて笑顔になってしまう。
「幽助」
「ん?」
「あたしのお弁当食べる代わりに、明日ちゃんと学校来るって約束して」
「明日?なんかあんのか?」
「約束して」
「お、おお。わかった」
明日、幽助もいればあの人のこともなんとかなるだろう、
明日で全て片付く、そう思うと少し心が軽くなった。
家に帰り、買ってきたチョコレートの材料を見渡す。
うん、家族の分と友チョコと‥
作れそうね。
あたしは鼻歌混じりで、チョコレートを作り始めた。
1/1ページ