浦飯食堂
「おっちゃんが寝込んだぁ?!」
「寝込んだって大げさよ、ぎっくり腰になっちゃっただけ」
幽助を起こしに来たついでに一緒にご飯を食べながら、昨日の出来事を幽助に話していた。
昨日、食堂が閉店後、父さんが食器の後片付けをしている最中に重いものを持ったはずみでぎっくり腰になってしまい、それからというもの全く動けなくなってしまった。
「だから今日から母さんとあたしでしばらくお店やるの。あたしもご飯食べ終わったらすぐ戻らなくちゃだから、幽助後片付けよろしくね」
残り一口のオムライスを食べ終えて、ご馳走さまでした、と手を合わせる。
「おめーとおばちゃん2人で大丈夫なのかよ?」
「まあなんとかなるわよ」
父さんと同じ味を作るっていうことには自信がないけれど、母さんに料理をメインで作ってもらって、あたしが注文とって…
と頭の中でシュミレーションをしていると
「俺も手伝うか?」
「…へ?」
あまりの唐突な提案に、少し抜けた声が出た。
「おっちゃんの味出せるかわかんねーけど俺も一応料理人だし、なんかの役に立てるとは思うけど」
「え、屋台どうすんのよ?」
「店22時までだろ?手伝った後に屋台出す」
「それって幽助大変じゃない…」
「体力には自信あっから」
へへっと笑って見せる幽助がすごく頼もしく見えた。
「…いいの?」
「おお。おっちゃんたちが迷惑じゃなければ!」
「ちょっと、聞いてみる」
家に電話をかけると、両親からは喜びの声が聞こえた。
幽ちゃんが手伝ってくれるなら百人力だよ、とのことでその旨を幽助に伝える。
「よっしゃ!じゃあいっちょやりますかー」
腕まくりまでして、気合いなんか入れちゃって。
頼もしいんだから。
早々に片付けて、2人で家に戻る。
お店にはすでにそこそこお客さんがいて、あたしはすぐに手伝いに入った。
幽助は、2階の寝室で寝ている父さんに挨拶を先にしてから、食堂に降りてきた。
「幽ちゃんありがとねぇ、本当に助かるよ!
やっぱり男手があると頼もしいねえ」
「いいんだって、いつもおばちゃんたちには世話になってるし!
おっちゃんの味は出せないから、雑用的なもん俺に全部回してくれていいから」
「じゃあ下準備とか手伝ってもらおうかな」
「わかった!」
母さんはすごく嬉しそうにニコニコと笑って幽助と話している。
きっと上で父さんと話した時も、父さんニコニコしていたんだろうな。幽助、うちの両親に好かれてるから。
「螢子はお客さんの接客してね」
「はーい」
いつも屋台で料理を作っているせいか、幽助の動きはすごくテキパキとしていた。
たまにカウンターで話しかけてくるお客さんとも楽しそうに談笑していて、見ているこっちまでもなんだか楽しい気分になってきた。
「あの子、けーこちゃんのカレシ?」
いつもの常連のおじさんたちに声をかけられる。
「幼なじみですよ」
「良い子だね〜あんな子が婿に来たら雪村食堂も安泰だな!」
「美人な女将に爽やかな店主、こりゃ大繁盛間違いなしだな!」
「もう、おじさんたち飲み過ぎですよ」
とは言いながらも、そんな未来を少し自分でも想像してしまう。
結婚したら、2人で食堂継いでもいいかも、なんて。
「ありがとうございましたーっ」
「幽ちゃん美味かったよ!また来るから!」
「待ってるぜー」
幽助が、手を振って最後のお客さんに挨拶をする。
「うし、じゃあ片付けっか」
「いいよぉ、幽ちゃん。この後屋台出すんでしょ?後片付けはおばちゃんたちやるから」
「いーのいーの。2人でやるより3人でやる方が早いだろ?」
「でも…」
「サッサっと片付けちまおーぜ」
洗い物に床の掃除など、3人で進めると本当にあっという間に終わった。
「今日は本当にありがとうね、幽ちゃん。」
「気にしないでいいって!
おっちゃんしばらく戻れないだろ?復帰するまで俺手伝うよ」
「そんな甘えるわけには…」
「いつも世話になってるんだから、こういう時にくらい手伝わせてくれよ」
「幽ちゃん…ありがとうね。」
「どーいたしまして!じゃ、俺そろそろ行くわ」
「幽助、ありがとうっ」
「おうっ、螢子も無理すんなよ」
帰り際に頭を撫でられる。
無理するな、ってどっちのセリフよ。
あれから1週間、毎日幽助は店の手伝いにきてくれた。
その頃には店の常連さんたちとも幽助は仲良くなっていて、しまいには幽助の屋台のお客さんも食堂に来てくれたりと、食堂はいつもよりも忙しかった。
そんな時、屋台の常連さんたちと幽助が話している声が聞こえた。
「幽ちゃんの屋台がいつもの時間に出てない時は焦ったぜ〜」
「わりーわりー、会った人にしか言えてないんだよ」
「いやでも、噂の美人彼女見られて大満足だよ」
「怒らせたらすんげー怖いんだぜ?鬼の形相になって俺のことビンタしてくんだから」
「怒られることしてんのは、あんたでしょーが」
ポコっ、と幽助の頭を叩く。
「いてー」
「はは、幽ちゃんは尻に敷かれるタイプだな」
「だな!間違いねーや」
「螢子には腕力じゃ勝てねーからなぁ」
「そんなわけないでしょ!」
屋台の常連さんたちはあたしのことを、幽助の彼女と思っているみたいで、幽助もそれを否定していない。
…あたしいつから幽助の彼女になったのかしら。
「けーこ、3番卓様、から揚げできたから持ってって!」
「あ、はーい!」
今は深く考えないことにしよう。
「ありがとうございました!」
最後のお客さんを見送ったあと、父さんが2階から降りてきた。
「父さん!大丈夫なの?」
「おうっ!安静にしてたらもうピンピンだぜ!」
「幽ちゃんが毎日手伝いにきてくれたんだよ」
「本当に世話になったなぁ、ありがとな幽ちゃん!」
「そんな礼言われることしてねーって、
おっちゃんが元気なったんならよかったぜ」
「もう大丈夫だ!後片付けはもう俺たちでやるから、幽ちゃん屋台行ってくれ」
「あー今日は休みにしたんだよ」
「そうなのかい?じゃあ2人で片付けるから、螢子とゆっくり休んでね」
「え?」
「螢子も学校のあとに手伝ってくれてありがとうね。しばらく2人でゆっくりできなかっただろ?あとは母さんたちがやっとくから」
「あたしは別に大丈夫…」
「んじゃあお言葉に甘えて!螢子借りてくわ」
「え、ちょっと幽助っ」
「家のことは気にしなくていいからね」
「幽ちゃん家に迷惑かけんじゃねーぞ」
幽助に腕を引かれるまま、あたしは浦飯家に連れてこられた。
って、あたしがいつ幽助の家に迷惑かけたっていうよ
「一体なんなのよ…」
「まーまー、おっちゃんたちが気使ってくれたんだろ」
「親公認なの…?」
「俺としてはヤマシイ気持ちなく正々堂々と出来て嬉しいけど」
そう言うと、幽助はあたしを後ろから抱きしめる。
「この1週間すげーしんどかったわ」
「幽助…本当ありがとうね。
屋台と食堂に行ったり来たりで大変だったよね」
「そこじゃねーって」
「え?」
「忙しくてずっとヤってなかっただろ?
螢子ちゃんの身体が触りたくて触りたくて」
そう言いながら、あたしのお尻や腰を撫で始めた。
「はあ?そっち?」
「ったりめーだろ、他になんかあんのか?」
この男は、と思いながらも幽助に触られていなかったあたしの身体は、久々の感覚にドキドキと胸が鳴り始める。
一緒に働いて、新たに幽助の魅力に気づいた。
多分、日常を過ごしていたら気付けなかったかもしれないところ
色んな人とすぐに仲良くなれて
仕事もそつなくこなして
一緒に働いてるあたしや母さんにも気を配ってくれて
そして、父さんや母さんを大切に思ってくれてて
あたし、幽助に惚れ直しちゃったんだろうな
「ん…ねぇ幽助、先にお風呂入りたい」
「じゃあ一緒に入るか」
「…変なことしない?」
「約束はできねー」
「あんたねぇ…」
「嘘つくよりかはいいだろ」
「…バカ」
結局、幽助の本能のままお風呂で愛されて
疲れ果てたあたしは幽助に抱っこされながらベッドへ運ばれる。
「眠い…」
「おーおー、螢子もおつかれさん」
「幽助にとどめ刺されたようなモンだわ」
「ははっ否定できねーわ」
幽助があたしの髪をゆっくりと撫でてくれる。その感触が心地良くて、目を閉じる。
「…ねえ」
「ん?」
「幽助って、屋台のお客さんにあたしのことなんて言ってるの?」
「螢子のこと?」
「うん」
「幼なじみで、俺の女」
「…なんかその言い方嫌」
「なんでだよ、事実だろ」
「俺の、ってあたし幽助の所有物じゃないんですけど」
「でも俺の螢子だろ」
「…」
間違い、ではないけど。
「普通に、彼女って言ってくれればいいのに」
「彼女ってなんか物足りねーんだよ
螢子は螢子。」
「なにそれ…?」
撫でられている心地よさもあり、幽助のよくわからない話を聞いているうちに次第に睡魔に襲われる。
「じゃあ、あたしは幽助との関係聞かれたらなんで言えばいいのよ」
「わたしの男って言ってやれよ」
「あんたじゃないんだから、そんなバカみたいなこと言えるわけないでしょ」
「バカだとー?!」
「もうあたし眠いから寝る」
「おー、おやすみ」
頬にキスを落とされて、あたしは眠りについた。
翌日、幽助と一緒に家に戻ると父さんと母さんが調理場に立っていた。
「おー幽ちゃん、螢子おかえり!」
「ただいま」
「聞いてよ、常連のお客さんから今日は幽ちゃんいないの?ってすごい聞かれてさぁ」
「俺もそろそろ世代交代の波がきたかな〜」
「なに言ってんだよおっちゃん、
またなんかあったら手伝うからいつでも言ってくれよ」
「おう!今日はご馳走するから、幽ちゃん好きなもの頼んでくれ」
「じゃあ
螢子の焼肉定食!」
「それでいいの?」
「おう」
「いつも家で食べてるじゃない」
「店で食うのが1番うまいんだよ」
「ほらほら、幽ちゃんからの注文入ったんだから早く螢子作って」
「わかったわよ」
「んー!うまい!やっぱりここで食う螢子の飯は格段にうまいぜ」
「じゃあいつも家で作ってるのはそんな美味しくないってこと?」
ジーっと睨むと幽助は慌てたように弁解し始める。
「い、いつもの飯もすげーうまいけど、食堂で食うのもすげーうまいんだって!」
「はいはい、ありがとね」
こうして、店の慌ただしい1週間が終わった。
想像以上に大変だったけれど、幽助がいてくれて本当に良かった。
そして、色んな幽助の姿が見れてあたしはまた幽助を好きになって。
しばらくは幽助の好きなこと、させてあげようかな?
「寝込んだって大げさよ、ぎっくり腰になっちゃっただけ」
幽助を起こしに来たついでに一緒にご飯を食べながら、昨日の出来事を幽助に話していた。
昨日、食堂が閉店後、父さんが食器の後片付けをしている最中に重いものを持ったはずみでぎっくり腰になってしまい、それからというもの全く動けなくなってしまった。
「だから今日から母さんとあたしでしばらくお店やるの。あたしもご飯食べ終わったらすぐ戻らなくちゃだから、幽助後片付けよろしくね」
残り一口のオムライスを食べ終えて、ご馳走さまでした、と手を合わせる。
「おめーとおばちゃん2人で大丈夫なのかよ?」
「まあなんとかなるわよ」
父さんと同じ味を作るっていうことには自信がないけれど、母さんに料理をメインで作ってもらって、あたしが注文とって…
と頭の中でシュミレーションをしていると
「俺も手伝うか?」
「…へ?」
あまりの唐突な提案に、少し抜けた声が出た。
「おっちゃんの味出せるかわかんねーけど俺も一応料理人だし、なんかの役に立てるとは思うけど」
「え、屋台どうすんのよ?」
「店22時までだろ?手伝った後に屋台出す」
「それって幽助大変じゃない…」
「体力には自信あっから」
へへっと笑って見せる幽助がすごく頼もしく見えた。
「…いいの?」
「おお。おっちゃんたちが迷惑じゃなければ!」
「ちょっと、聞いてみる」
家に電話をかけると、両親からは喜びの声が聞こえた。
幽ちゃんが手伝ってくれるなら百人力だよ、とのことでその旨を幽助に伝える。
「よっしゃ!じゃあいっちょやりますかー」
腕まくりまでして、気合いなんか入れちゃって。
頼もしいんだから。
早々に片付けて、2人で家に戻る。
お店にはすでにそこそこお客さんがいて、あたしはすぐに手伝いに入った。
幽助は、2階の寝室で寝ている父さんに挨拶を先にしてから、食堂に降りてきた。
「幽ちゃんありがとねぇ、本当に助かるよ!
やっぱり男手があると頼もしいねえ」
「いいんだって、いつもおばちゃんたちには世話になってるし!
おっちゃんの味は出せないから、雑用的なもん俺に全部回してくれていいから」
「じゃあ下準備とか手伝ってもらおうかな」
「わかった!」
母さんはすごく嬉しそうにニコニコと笑って幽助と話している。
きっと上で父さんと話した時も、父さんニコニコしていたんだろうな。幽助、うちの両親に好かれてるから。
「螢子はお客さんの接客してね」
「はーい」
いつも屋台で料理を作っているせいか、幽助の動きはすごくテキパキとしていた。
たまにカウンターで話しかけてくるお客さんとも楽しそうに談笑していて、見ているこっちまでもなんだか楽しい気分になってきた。
「あの子、けーこちゃんのカレシ?」
いつもの常連のおじさんたちに声をかけられる。
「幼なじみですよ」
「良い子だね〜あんな子が婿に来たら雪村食堂も安泰だな!」
「美人な女将に爽やかな店主、こりゃ大繁盛間違いなしだな!」
「もう、おじさんたち飲み過ぎですよ」
とは言いながらも、そんな未来を少し自分でも想像してしまう。
結婚したら、2人で食堂継いでもいいかも、なんて。
「ありがとうございましたーっ」
「幽ちゃん美味かったよ!また来るから!」
「待ってるぜー」
幽助が、手を振って最後のお客さんに挨拶をする。
「うし、じゃあ片付けっか」
「いいよぉ、幽ちゃん。この後屋台出すんでしょ?後片付けはおばちゃんたちやるから」
「いーのいーの。2人でやるより3人でやる方が早いだろ?」
「でも…」
「サッサっと片付けちまおーぜ」
洗い物に床の掃除など、3人で進めると本当にあっという間に終わった。
「今日は本当にありがとうね、幽ちゃん。」
「気にしないでいいって!
おっちゃんしばらく戻れないだろ?復帰するまで俺手伝うよ」
「そんな甘えるわけには…」
「いつも世話になってるんだから、こういう時にくらい手伝わせてくれよ」
「幽ちゃん…ありがとうね。」
「どーいたしまして!じゃ、俺そろそろ行くわ」
「幽助、ありがとうっ」
「おうっ、螢子も無理すんなよ」
帰り際に頭を撫でられる。
無理するな、ってどっちのセリフよ。
あれから1週間、毎日幽助は店の手伝いにきてくれた。
その頃には店の常連さんたちとも幽助は仲良くなっていて、しまいには幽助の屋台のお客さんも食堂に来てくれたりと、食堂はいつもよりも忙しかった。
そんな時、屋台の常連さんたちと幽助が話している声が聞こえた。
「幽ちゃんの屋台がいつもの時間に出てない時は焦ったぜ〜」
「わりーわりー、会った人にしか言えてないんだよ」
「いやでも、噂の美人彼女見られて大満足だよ」
「怒らせたらすんげー怖いんだぜ?鬼の形相になって俺のことビンタしてくんだから」
「怒られることしてんのは、あんたでしょーが」
ポコっ、と幽助の頭を叩く。
「いてー」
「はは、幽ちゃんは尻に敷かれるタイプだな」
「だな!間違いねーや」
「螢子には腕力じゃ勝てねーからなぁ」
「そんなわけないでしょ!」
屋台の常連さんたちはあたしのことを、幽助の彼女と思っているみたいで、幽助もそれを否定していない。
…あたしいつから幽助の彼女になったのかしら。
「けーこ、3番卓様、から揚げできたから持ってって!」
「あ、はーい!」
今は深く考えないことにしよう。
「ありがとうございました!」
最後のお客さんを見送ったあと、父さんが2階から降りてきた。
「父さん!大丈夫なの?」
「おうっ!安静にしてたらもうピンピンだぜ!」
「幽ちゃんが毎日手伝いにきてくれたんだよ」
「本当に世話になったなぁ、ありがとな幽ちゃん!」
「そんな礼言われることしてねーって、
おっちゃんが元気なったんならよかったぜ」
「もう大丈夫だ!後片付けはもう俺たちでやるから、幽ちゃん屋台行ってくれ」
「あー今日は休みにしたんだよ」
「そうなのかい?じゃあ2人で片付けるから、螢子とゆっくり休んでね」
「え?」
「螢子も学校のあとに手伝ってくれてありがとうね。しばらく2人でゆっくりできなかっただろ?あとは母さんたちがやっとくから」
「あたしは別に大丈夫…」
「んじゃあお言葉に甘えて!螢子借りてくわ」
「え、ちょっと幽助っ」
「家のことは気にしなくていいからね」
「幽ちゃん家に迷惑かけんじゃねーぞ」
幽助に腕を引かれるまま、あたしは浦飯家に連れてこられた。
って、あたしがいつ幽助の家に迷惑かけたっていうよ
「一体なんなのよ…」
「まーまー、おっちゃんたちが気使ってくれたんだろ」
「親公認なの…?」
「俺としてはヤマシイ気持ちなく正々堂々と出来て嬉しいけど」
そう言うと、幽助はあたしを後ろから抱きしめる。
「この1週間すげーしんどかったわ」
「幽助…本当ありがとうね。
屋台と食堂に行ったり来たりで大変だったよね」
「そこじゃねーって」
「え?」
「忙しくてずっとヤってなかっただろ?
螢子ちゃんの身体が触りたくて触りたくて」
そう言いながら、あたしのお尻や腰を撫で始めた。
「はあ?そっち?」
「ったりめーだろ、他になんかあんのか?」
この男は、と思いながらも幽助に触られていなかったあたしの身体は、久々の感覚にドキドキと胸が鳴り始める。
一緒に働いて、新たに幽助の魅力に気づいた。
多分、日常を過ごしていたら気付けなかったかもしれないところ
色んな人とすぐに仲良くなれて
仕事もそつなくこなして
一緒に働いてるあたしや母さんにも気を配ってくれて
そして、父さんや母さんを大切に思ってくれてて
あたし、幽助に惚れ直しちゃったんだろうな
「ん…ねぇ幽助、先にお風呂入りたい」
「じゃあ一緒に入るか」
「…変なことしない?」
「約束はできねー」
「あんたねぇ…」
「嘘つくよりかはいいだろ」
「…バカ」
結局、幽助の本能のままお風呂で愛されて
疲れ果てたあたしは幽助に抱っこされながらベッドへ運ばれる。
「眠い…」
「おーおー、螢子もおつかれさん」
「幽助にとどめ刺されたようなモンだわ」
「ははっ否定できねーわ」
幽助があたしの髪をゆっくりと撫でてくれる。その感触が心地良くて、目を閉じる。
「…ねえ」
「ん?」
「幽助って、屋台のお客さんにあたしのことなんて言ってるの?」
「螢子のこと?」
「うん」
「幼なじみで、俺の女」
「…なんかその言い方嫌」
「なんでだよ、事実だろ」
「俺の、ってあたし幽助の所有物じゃないんですけど」
「でも俺の螢子だろ」
「…」
間違い、ではないけど。
「普通に、彼女って言ってくれればいいのに」
「彼女ってなんか物足りねーんだよ
螢子は螢子。」
「なにそれ…?」
撫でられている心地よさもあり、幽助のよくわからない話を聞いているうちに次第に睡魔に襲われる。
「じゃあ、あたしは幽助との関係聞かれたらなんで言えばいいのよ」
「わたしの男って言ってやれよ」
「あんたじゃないんだから、そんなバカみたいなこと言えるわけないでしょ」
「バカだとー?!」
「もうあたし眠いから寝る」
「おー、おやすみ」
頬にキスを落とされて、あたしは眠りについた。
翌日、幽助と一緒に家に戻ると父さんと母さんが調理場に立っていた。
「おー幽ちゃん、螢子おかえり!」
「ただいま」
「聞いてよ、常連のお客さんから今日は幽ちゃんいないの?ってすごい聞かれてさぁ」
「俺もそろそろ世代交代の波がきたかな〜」
「なに言ってんだよおっちゃん、
またなんかあったら手伝うからいつでも言ってくれよ」
「おう!今日はご馳走するから、幽ちゃん好きなもの頼んでくれ」
「じゃあ
螢子の焼肉定食!」
「それでいいの?」
「おう」
「いつも家で食べてるじゃない」
「店で食うのが1番うまいんだよ」
「ほらほら、幽ちゃんからの注文入ったんだから早く螢子作って」
「わかったわよ」
「んー!うまい!やっぱりここで食う螢子の飯は格段にうまいぜ」
「じゃあいつも家で作ってるのはそんな美味しくないってこと?」
ジーっと睨むと幽助は慌てたように弁解し始める。
「い、いつもの飯もすげーうまいけど、食堂で食うのもすげーうまいんだって!」
「はいはい、ありがとね」
こうして、店の慌ただしい1週間が終わった。
想像以上に大変だったけれど、幽助がいてくれて本当に良かった。
そして、色んな幽助の姿が見れてあたしはまた幽助を好きになって。
しばらくは幽助の好きなこと、させてあげようかな?
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