ひざまくら
「ちょっと…お酒の匂いであんた臭いんですけど」
「けーこちゃんは今日も可愛いなー」
「…はぁ。これだから酔っ払いわ…」
ここは浦飯家。
常連のおじさんたちと飲んで帰ってきた幽助は、アルコール臭をプンプンさせながら帰宅した。
「あんた早くお風呂入っちゃいなさいよ」
「けーこは?」
「とっくに入ったわよ。
寝るところだったのに玄関開けたら大声で名前呼ぶんだから迷惑ったらありゃしない」
「怒った顔もけーこは可愛いよなー」
ぷにぷにと、螢子の頬を指で突く幽助はかなり出来上がっている様子だ。
「もうっどんだけ飲んだのよ」
口ではツンケンとした態度をとっているが、こんなにも幽助が「可愛い」という言葉を言ってくれるのは酔った時とアノ時ぐらいで、言われ慣れていない螢子は少し嬉しくなっていた。
「けーこー、ひざまくらー」
「ええっ?」
しかし今日は特に酔っている様子だった、
幽助は膝枕をせがむとソファに座っていた螢子の太ももに自分の頭を下ろした。
「やらけぇー」
「どういう意味よっ」
デコピンをしつつも、頭をのせている幽助が可愛く思えて頭を撫でる。
「あー疲れがとれてくぜー」
「あんたは疲れるなんて感情持ち合わせてないでしょ」
「ひでー言いようだな」
ヘラっと力なく笑う幽助に、螢子は母性本能をくすぐられた。
幸せそうな顔で自分のももに擦り寄る幽助を見て、螢子も自然と頬が緩んだ。
「おれさー」
目を閉じながら幽助が話し出した。
「うん?」
「けーこ居ないと生きていけねーわ」
「はあ?何言ってんのよ急に」
「この太ももと手がないとまじで生きてけねえー」
「あたしの存在価値は足と手だけですか」
「あとおっぱい」
そう言うと、手を伸ばして螢子の胸を揉み出す。
「ソファから落とすわよ」
「やめてくれー」
胸を揉むのをやめて、両腕を腰に回す。
「ジョーダンなんだから怒んなよ」
「全然ジョーダンに聞こえなかったけど」
「まあけーこがいなきゃ生きていけねーのは事実だからなー」
「…あっそ」
酔っ払いの言うことを真に受けてはいけない、と思いつつも嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてくる。
「おれさー…」
後ろに続く言葉を待ってみたが、言葉を発した本人は既に夢の中へと旅立っていた。
「全く、世話が焼ける旦那様なこと」
自分の太ももで眠りについた旦那に、螢子はキスを落とした。
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