愛を込めて、
幽助と距離を取るようになってから何日か経ったある日、ぼたんさんからの電話が鳴った。
「はいっ、もしもし」
「あっ、螢子ちゃん?
急なんだけど明日って暇かい?」
「明日は…うん、何にもないですよ」
「行きたいところあるんだけれどまた付き合ってくれるかい?」
「いいですよ」
「ありがとう!
じゃあ14時に駅前待ち合わせでいいかい?」
「はいっ」
「明日楽しみにしてるさね!」
「あたしもです」
「それじゃまた明日!」
胸のこのモヤモヤを聞いてほしいと思っていたので、とてもタイミングが良かった。
ぼたんさんとの通話を切り、あたしは眠りについた。
次の日、約束の時間になったので待ち合わせ場所へ向かった。
10分前に着いたけれどまだぼたんさんの姿はなかったので、ベンチに座り周りの景色を見ていた。
沢山の人が行き交う街並みはとても賑やかで、楽しそうで。
友達同士で歩く人たち、
家族連れ、
そして、手を繋いで歩く恋人たち。
みんな笑顔で歩いていく。
幽助と一緒にいて笑ったのはいつが最後なんだろう。
会える距離にいるのに…
もしかしたら幽助は、逃げるあたしに愛想を尽かせてすでに魔界に行ってしまったのでは、と嫌な予感がする。
幽助に会いたいのに…
「おい螢子!!」
「え…?」
俯いついた顔をあげると、
目の前に現れたのは、ぼたんさんではなくあたしの悩みの種張本人だった。
何週間ぶりだろう、幽助の姿を見るのは。
「てめー俺の連絡無視しやがって!」
「な、なんのことよ」
「いいからちょっとこっち来い」
そう言って、手首を掴まれる。
「ちょっと離してよ。
あたしぼたんさんと待ち合わせしてるんだけど」
「来ねーよ」
「…はあ?」
「お前のこと呼び出すためにぼたんに協力してもらったんだよ」
「なんでそんなことするのよ」
「おめーが俺のこと避けるからだろ?」
「避けてなんかっ‥」
「あーもーいいから黙ってついて来いっての!
人が必死こいて考えてきたのに台無しにしやがって」
幽助の言葉に刺がある。
必死こいてなにを考えたっていうのよ
終わりの言葉?
「‥聞きたくない」
「はあ?」
「幽助の口から、聞きたくないって言ってんの!」
「何勝手に勘違いしてんのか知らねーけど、俺はお前に渡したいものがあんだよ!」
「え?」
そう言って連れてこられたのは、幽助の家だった。
「え、なんで幽助の家?」
頭が混乱しているあたしに構うことなく、幽助は家に入り、リビングに通されると掴まれていた手首が離された。
「ったく…
俺はおめーに、コレをやりたかったんだよ」
幽助がおもむろにテーブルから拾い上げたのは、前にデートであたしが綺麗だと言った花をメインで作られたブーケだった。
忘れもしない、海のように透き通った綺麗な青い花。
そしてその中には、1本の向日葵が咲いていた。
「これっ…」
「お前が前に気に入ったようだったから、これでブーケっつーの?作ってもらった。
おめーにやる。」
幽助はずいっとブーケをあたしに差し出しながら、そっぽを向いた。
「なっ、なんか言えよ」
「…この花、覚えててくれたんだ」
「まあ…」
「嬉しい。
ありがとうっ…」
すごくすごく嬉しくて、あたしはそっと花を抱き抱えた。
嬉しい反面、頭には多くの疑問が浮かんだ。
「でもなんで?急にどうしたの?」
「あー…それは、だな」
幽助の言葉が詰まる。
何かを隠していることは容易にわかった。
「何よ?」
歯切れの悪さから、あたしに後ろめたいことがあるのだろうと察した。
「…また魔界行くの?今度は何年?」
幽助が言いづらい事といえばこれしかない。
「ちげーよ!
…おめー花言葉って、知ってるか」
「花言葉?」
予想外の言葉幽助から出てきてあたしはびっくりした。
「まあ、知ってるものもあるけど」
「じゃあこいつらの花言葉は知ってるか?」
そう言ってブーケの花たちを指した。
「んー、どっちも知らない」
「‥そっか」
幽助は少しホッとしたような、残念なような曖昧な表情をした。
「それがどうしたの?」
「まあ、なんだ。そのー…」
「はっきりしないわねー」
魔界関係じゃなかったら、なんだっていうのよ。
まさか、夢の話が本当に?
でもそうだとしたらこのブーケは一体?
頭の中にハテナが舞う。
すると、幽助は意を決したかのような表情をした。
「ー螢子」
「な、なによ」
まっすぐな幽助の目線とぶつかる。
「俺がお前を必ず幸せにするって言い切れねーし
お前をこれからも泣かせちまうと思うし
怒らせることだって何億回もあると思う。
だけど、」
え…
「俺はお前をこれからもずっと愛し続ける」
これって
「そんで、命かけて一生守ってく。だから」
まさか…
「俺と結婚しよう」
幽助の目線から逃れられない。
「…はい。」
あたしは無意識に、幽助のプロポーズに頷いていた。
「…まじ?」
「言った本人がなに驚いてんのよ」
「いや、いつものノリのやつじゃねーぞ?」
「わかってるわよ、そんなこと」
「よっしゃ!じゃあこれ書け!」
幽助はポケットから四つ折りの紙を出した。
「えっこれって」
「あとはおめーが書くだけだから」
それは紛れもなく婚姻届だった。
そこには幽助の名前が先に書かれていた。
「相変わらず字汚いわねー」
「うっせ!ほら、早く書けよ」
「準備良すぎじゃない?」
「いーだろ!この日のために色々準備してきたんだから」
「そーなの?」
「ったりめーだろ!
なのに螢子に無視されるわ避けられるわで散々だったぜ」
「ご、ごめんってば」
「避けてたこと認めるんだな?」
「だって‥」
「だってなんだよ?」
「幽助に振られると思ったから」
「はあ?んなことありえねーだろ」
「だって最近様子おかしかったじゃない」
「それは…まあ俺なりに一応色々考えてたからしょーがねーだろ。
つーか、お前がそんなことで悩むタマかよ?
いつもならすぐ俺に文句言ってくんじゃねーか」
「そういう風に悩む時もあるのよ」
「…嫌な思いさせて悪かったよ。」
「え。幽助が素直に謝るなんて、なんだか怖いわね」
「おいおい、僕はいつでも素直な男の子なんだけどなぁー」
「男の子なんて可愛いもんじゃないでしょ」
「まあたしかに立派なもの持ってるしな」
「変態っ」
頭を小突く。
「いてっ。
まっこれで螢子は俺のもんになったわけだ」
幽助はニヤニヤと嬉しそうな表情を浮かべた。
「ちょっと、人を物みたいな言い方しないでよ」
「じゃあ俺の嫁」
「それもなんか嫌」
「注文が多いやつだな」
「むしろ幽助があたしのモノじゃない?」
「おい、それじゃあ一緒じゃねーかよ」
「ふふっ」
今までも、これからも
幽助はあたしだけの人で、
あたしも幽助だけの人なの。
「ところで、この花の花言葉ってなんなのよ?」
「あー?
んなの自分で調べろよ」
「教えてくれたっていいじゃない」
「俺のことを無視したバツだ、バツ」
「なによそれー!」
「国王を無視するなんてとんでもねぇ女だよ、全く」
「元はと言えばあんたが悪いんじゃない
それにこの国はあんたが王様じゃないんだから全然関係ないでしょ」
「ちぇっけーこちゃんには敵わねーなー」
「あたしがそばにいてあげるだけで幸せでしょ?」
「違いねーや」
幽助に愛されてる、そう思うだけで
こんなにも満たされた気持ちになれる。
あんなに落ち込んでいた自分が嘘のようだった。
「けーこ、」
「ん?」
チュッ
優しいキスが降ってきた。
「っん…」
「避けられてた分、今から取り返すからそのつもりでいろよ」
「…ばか。」
言葉にするのは恥ずかしいけれど、
どんなことがあっても
あたしはずっと幽助のそばにいるから。
だから幽助も、あたしだけを見ていてね。
「はいっ、もしもし」
「あっ、螢子ちゃん?
急なんだけど明日って暇かい?」
「明日は…うん、何にもないですよ」
「行きたいところあるんだけれどまた付き合ってくれるかい?」
「いいですよ」
「ありがとう!
じゃあ14時に駅前待ち合わせでいいかい?」
「はいっ」
「明日楽しみにしてるさね!」
「あたしもです」
「それじゃまた明日!」
胸のこのモヤモヤを聞いてほしいと思っていたので、とてもタイミングが良かった。
ぼたんさんとの通話を切り、あたしは眠りについた。
次の日、約束の時間になったので待ち合わせ場所へ向かった。
10分前に着いたけれどまだぼたんさんの姿はなかったので、ベンチに座り周りの景色を見ていた。
沢山の人が行き交う街並みはとても賑やかで、楽しそうで。
友達同士で歩く人たち、
家族連れ、
そして、手を繋いで歩く恋人たち。
みんな笑顔で歩いていく。
幽助と一緒にいて笑ったのはいつが最後なんだろう。
会える距離にいるのに…
もしかしたら幽助は、逃げるあたしに愛想を尽かせてすでに魔界に行ってしまったのでは、と嫌な予感がする。
幽助に会いたいのに…
「おい螢子!!」
「え…?」
俯いついた顔をあげると、
目の前に現れたのは、ぼたんさんではなくあたしの悩みの種張本人だった。
何週間ぶりだろう、幽助の姿を見るのは。
「てめー俺の連絡無視しやがって!」
「な、なんのことよ」
「いいからちょっとこっち来い」
そう言って、手首を掴まれる。
「ちょっと離してよ。
あたしぼたんさんと待ち合わせしてるんだけど」
「来ねーよ」
「…はあ?」
「お前のこと呼び出すためにぼたんに協力してもらったんだよ」
「なんでそんなことするのよ」
「おめーが俺のこと避けるからだろ?」
「避けてなんかっ‥」
「あーもーいいから黙ってついて来いっての!
人が必死こいて考えてきたのに台無しにしやがって」
幽助の言葉に刺がある。
必死こいてなにを考えたっていうのよ
終わりの言葉?
「‥聞きたくない」
「はあ?」
「幽助の口から、聞きたくないって言ってんの!」
「何勝手に勘違いしてんのか知らねーけど、俺はお前に渡したいものがあんだよ!」
「え?」
そう言って連れてこられたのは、幽助の家だった。
「え、なんで幽助の家?」
頭が混乱しているあたしに構うことなく、幽助は家に入り、リビングに通されると掴まれていた手首が離された。
「ったく…
俺はおめーに、コレをやりたかったんだよ」
幽助がおもむろにテーブルから拾い上げたのは、前にデートであたしが綺麗だと言った花をメインで作られたブーケだった。
忘れもしない、海のように透き通った綺麗な青い花。
そしてその中には、1本の向日葵が咲いていた。
「これっ…」
「お前が前に気に入ったようだったから、これでブーケっつーの?作ってもらった。
おめーにやる。」
幽助はずいっとブーケをあたしに差し出しながら、そっぽを向いた。
「なっ、なんか言えよ」
「…この花、覚えててくれたんだ」
「まあ…」
「嬉しい。
ありがとうっ…」
すごくすごく嬉しくて、あたしはそっと花を抱き抱えた。
嬉しい反面、頭には多くの疑問が浮かんだ。
「でもなんで?急にどうしたの?」
「あー…それは、だな」
幽助の言葉が詰まる。
何かを隠していることは容易にわかった。
「何よ?」
歯切れの悪さから、あたしに後ろめたいことがあるのだろうと察した。
「…また魔界行くの?今度は何年?」
幽助が言いづらい事といえばこれしかない。
「ちげーよ!
…おめー花言葉って、知ってるか」
「花言葉?」
予想外の言葉幽助から出てきてあたしはびっくりした。
「まあ、知ってるものもあるけど」
「じゃあこいつらの花言葉は知ってるか?」
そう言ってブーケの花たちを指した。
「んー、どっちも知らない」
「‥そっか」
幽助は少しホッとしたような、残念なような曖昧な表情をした。
「それがどうしたの?」
「まあ、なんだ。そのー…」
「はっきりしないわねー」
魔界関係じゃなかったら、なんだっていうのよ。
まさか、夢の話が本当に?
でもそうだとしたらこのブーケは一体?
頭の中にハテナが舞う。
すると、幽助は意を決したかのような表情をした。
「ー螢子」
「な、なによ」
まっすぐな幽助の目線とぶつかる。
「俺がお前を必ず幸せにするって言い切れねーし
お前をこれからも泣かせちまうと思うし
怒らせることだって何億回もあると思う。
だけど、」
え…
「俺はお前をこれからもずっと愛し続ける」
これって
「そんで、命かけて一生守ってく。だから」
まさか…
「俺と結婚しよう」
幽助の目線から逃れられない。
「…はい。」
あたしは無意識に、幽助のプロポーズに頷いていた。
「…まじ?」
「言った本人がなに驚いてんのよ」
「いや、いつものノリのやつじゃねーぞ?」
「わかってるわよ、そんなこと」
「よっしゃ!じゃあこれ書け!」
幽助はポケットから四つ折りの紙を出した。
「えっこれって」
「あとはおめーが書くだけだから」
それは紛れもなく婚姻届だった。
そこには幽助の名前が先に書かれていた。
「相変わらず字汚いわねー」
「うっせ!ほら、早く書けよ」
「準備良すぎじゃない?」
「いーだろ!この日のために色々準備してきたんだから」
「そーなの?」
「ったりめーだろ!
なのに螢子に無視されるわ避けられるわで散々だったぜ」
「ご、ごめんってば」
「避けてたこと認めるんだな?」
「だって‥」
「だってなんだよ?」
「幽助に振られると思ったから」
「はあ?んなことありえねーだろ」
「だって最近様子おかしかったじゃない」
「それは…まあ俺なりに一応色々考えてたからしょーがねーだろ。
つーか、お前がそんなことで悩むタマかよ?
いつもならすぐ俺に文句言ってくんじゃねーか」
「そういう風に悩む時もあるのよ」
「…嫌な思いさせて悪かったよ。」
「え。幽助が素直に謝るなんて、なんだか怖いわね」
「おいおい、僕はいつでも素直な男の子なんだけどなぁー」
「男の子なんて可愛いもんじゃないでしょ」
「まあたしかに立派なもの持ってるしな」
「変態っ」
頭を小突く。
「いてっ。
まっこれで螢子は俺のもんになったわけだ」
幽助はニヤニヤと嬉しそうな表情を浮かべた。
「ちょっと、人を物みたいな言い方しないでよ」
「じゃあ俺の嫁」
「それもなんか嫌」
「注文が多いやつだな」
「むしろ幽助があたしのモノじゃない?」
「おい、それじゃあ一緒じゃねーかよ」
「ふふっ」
今までも、これからも
幽助はあたしだけの人で、
あたしも幽助だけの人なの。
「ところで、この花の花言葉ってなんなのよ?」
「あー?
んなの自分で調べろよ」
「教えてくれたっていいじゃない」
「俺のことを無視したバツだ、バツ」
「なによそれー!」
「国王を無視するなんてとんでもねぇ女だよ、全く」
「元はと言えばあんたが悪いんじゃない
それにこの国はあんたが王様じゃないんだから全然関係ないでしょ」
「ちぇっけーこちゃんには敵わねーなー」
「あたしがそばにいてあげるだけで幸せでしょ?」
「違いねーや」
幽助に愛されてる、そう思うだけで
こんなにも満たされた気持ちになれる。
あんなに落ち込んでいた自分が嘘のようだった。
「けーこ、」
「ん?」
チュッ
優しいキスが降ってきた。
「っん…」
「避けられてた分、今から取り返すからそのつもりでいろよ」
「…ばか。」
言葉にするのは恥ずかしいけれど、
どんなことがあっても
あたしはずっと幽助のそばにいるから。
だから幽助も、あたしだけを見ていてね。