幼なじみな僕ら
「っく…、ひっく…」
遅かった。
幽助が女の子に抱きつかれているところを見てしまった。
胸の中が、黒く嫌な感情で埋め尽くされている。
あたしだって、幽助に気持ちを伝えて抱きついてみたい。
けど、そんなことできるわけがなくて。
でもあの子は、自分がやりたいことをいとも簡単にやっていた。
そして、幽助はそれを拒んでいなかった。
受け入れてた?2人は付き合ってしまうの?幽助もあの女の子が好きなの?
考えれば考えるほど胸が苦しくなる
キーンコーンカーンコーン…
昼休みが終わるチャイムの音が聞こえる。
こんな顔で教室に戻れるわけもなく、あたしは落ち着くまで部室に居ることにした。
ここなら誰も来ないだろうと思っていたけれど、急に部室のドア開いた。
「あれ?螢子ちゃん?」
「え?…部長…!」
南野部長だった。
慌てて涙を止めようするけど、なかなか止まってくれない。
「ご、ごめんなさいっ、」
「…どうしたの?幽助のこと?」
「ど、どうして分かるんですか?」
「螢子ちゃんが泣く理由は、幽助にしかないからだよ」
「部長は…なんでもお見通しなんですね」
「これでもみんなの部長だからね」
柔らかい笑みを浮かべる部長に、あたしは話を聞いて欲しくなった。
「…幽助が…
お昼休みに、女の子に告白されてて。
なにを話してるかわからなかったんですけど、急に女の子が幽助に抱きついて。
それを幽助も受け入れてて…」
「うん」
「…あたしそれ見たら、なんだか苦しくなってきてっ、」
あの光景を思い出して、また涙がこぼれそうになった。
幼なじみが女の子と抱き合っていただけなのに、こんなにも胸が苦しくなるなんて。
「螢子ちゃんは本当に幽助のことが好きなんだね」
「あ、あたしはっ、別にっ…」
途中まで言いかけたけれど、
部長は、あたしの気持ちなんてお見通し、そんな表情であたしを見ている。
「別に?」
首を左右に振る。
「…あたし、アイツのこと相当好き、なんですよね」
ぼたん以外の人に、初めて自分の気持ちを口にした。
「うん、見てると伝わってくるよ」
「う、うそ!」
「まあ幽助本人は気付いてないみたいだけど」
クスッと笑う部長。
南野部長の優しい手があたしの頭を撫でてくれる。
「大丈夫だよ螢子ちゃん。
幽助はその告白、受け入れてないから」
「えっどうしてわかるんですか?」
「それはね、」
ガチャっ
「っ、けーこ!」
あたしの名前を呼びながら、息を切らした幽助が部室に入ってきた。
「ゆうすけ…?」
「ったく、あんな顔してどっか行くんじゃねーよ、心配させやがって!」
「噂をすればなんとやらだね」
「ん?部長なんでいんの?
って…とりあえず螢子からその手どけろよ」
「ああ、ごめんごめん」
そう言うと部長は笑いながら手をあたしの頭から離した。
「幽助、今日昼休み女の子に告白されたんだって?」
「あー、まあな」
「抱きつかれたらしいね」
「そーなんだよ。なんか急に抱きつかれて。参ったよ。」
「参った?」
「いやー、離そうとしたんだけど、どれぐらいの力加減で押せばいいか分からなくってよー
いつも通りの力で押して怪我でもさせたらやべぇし」
そうだったんだ…
あたしてっきり、幽助は嫌がってないのかと思った
ていうかどんだけ手加減を知らないのよこのバカは
そんなことを思う余裕が生まれてきた
「で、断ったの?」
「当たり前だろ、名前も知らねえやつなんかと付き合うかっての。」
「名前知ってたらよかったんだ?」
「なわけねーだろ、第一付き合うとか、彼女とか。…興味ねぇし」
「だそうだよ、螢子ちゃん?」
「?まさかっ部長が螢子泣かせてたのかよ?!」
「はあ、なんでそういう思考になるのかなぁ」
今度は苦笑いを浮かべている部長、
幽助の話を聞いているうちにあたしの涙は止まっていた。
「違うわよ、部長は全然関係ないから」
「じゃあお前なんで泣いてたんだよ」
「…秘密」
「なにー!」
「ははっ、幽助は螢子ちゃんのことになると本当必死だよね」
「ち、ちげーよ!別に、俺はっ」
「…2人して同じこと言ってるね。
螢子ちゃん、さっきの話の続きは今度、また、2人で、ゆっくりしようね」
「あ、はっはい!」
「じゃあ俺は戻るよ」
「部長っ、話聞いて頂いてありがとうございました」
「どういたしまして。
幽助もちゃんと授業出るんだよ」
「わーってるよ!」
「じゃあまた後でね」
部長が出ていき、部室にはあたしと幽助の2人きりになった。
「結局なんで部長ここにいたんだよ?」
「…さあ?」
ふと、あたしの胸の中の黒いものはどこかへと消えていることに気付いた。
「まあいいじゃないっ。
教室戻ろっ」
部長に話を聞いてもらって、幽助があの告白を断った、その事実が聞けて。
先ほどの胸の苦しさが嘘のように心が軽い。
「…部長と何の話してたんだよ」
「気になる?」
「…べっつにー」
「じゃあ教えなーい」
「けっ、どーせいつも俺は仲間外れだよっ」
「あははっ」
「おいっ笑ってんじゃねーぞ!
俺がどんだけ必死こいてお前を探したと思ってんだよ」
「そんなに探してくれたの?」
「そーだよ!教室戻ってもいねーし、ぼたんに行き先聞いてもわからねーって言われるし、学校中走り回っちまったぜ」
「一生懸命探してくれたんだ…」
「まあな」
「…ありがと」
「お、おう」
そう言いながら右頬を指で掻き出す幽助。
それは昔から変わらない、照れてる時の癖。
一生懸命探してくれたことが、すごくうれしかった。
「心配してくれたの…?」
「当たり前だろ。
あんな顔、他の奴らに見せれねえよ」
「幽助…」
不意の言葉に、胸がドキドキとし始める。
「…お前の泣いた顔なんて見たら、みんなおっかなすぎて腰抜かしちまうだろーからな!」
そう言って、いつものいたずらっ子のように笑う幽助。
「なっ!なんですってー!」
幽助を目掛けて手を振り下ろす、
けれど見事にかわされてしまった。
「あっぶねぇ、構えといてよかったぜ!
じゃあ俺先行くから部室の戸締りよろしくな!」
「あ!ちょっと、待ちなさい!幽助!」
はぁあ、あたしのドキドキ返してほしいわ。
せっかく素直にありがとうって言えたのに。
でも、いつか他の子に負けないように
幽助にこの気持ちを直接伝えたい。
それまでは、まだ【幼なじみ】でいてあげるから。
覚悟しててね?
遅かった。
幽助が女の子に抱きつかれているところを見てしまった。
胸の中が、黒く嫌な感情で埋め尽くされている。
あたしだって、幽助に気持ちを伝えて抱きついてみたい。
けど、そんなことできるわけがなくて。
でもあの子は、自分がやりたいことをいとも簡単にやっていた。
そして、幽助はそれを拒んでいなかった。
受け入れてた?2人は付き合ってしまうの?幽助もあの女の子が好きなの?
考えれば考えるほど胸が苦しくなる
キーンコーンカーンコーン…
昼休みが終わるチャイムの音が聞こえる。
こんな顔で教室に戻れるわけもなく、あたしは落ち着くまで部室に居ることにした。
ここなら誰も来ないだろうと思っていたけれど、急に部室のドア開いた。
「あれ?螢子ちゃん?」
「え?…部長…!」
南野部長だった。
慌てて涙を止めようするけど、なかなか止まってくれない。
「ご、ごめんなさいっ、」
「…どうしたの?幽助のこと?」
「ど、どうして分かるんですか?」
「螢子ちゃんが泣く理由は、幽助にしかないからだよ」
「部長は…なんでもお見通しなんですね」
「これでもみんなの部長だからね」
柔らかい笑みを浮かべる部長に、あたしは話を聞いて欲しくなった。
「…幽助が…
お昼休みに、女の子に告白されてて。
なにを話してるかわからなかったんですけど、急に女の子が幽助に抱きついて。
それを幽助も受け入れてて…」
「うん」
「…あたしそれ見たら、なんだか苦しくなってきてっ、」
あの光景を思い出して、また涙がこぼれそうになった。
幼なじみが女の子と抱き合っていただけなのに、こんなにも胸が苦しくなるなんて。
「螢子ちゃんは本当に幽助のことが好きなんだね」
「あ、あたしはっ、別にっ…」
途中まで言いかけたけれど、
部長は、あたしの気持ちなんてお見通し、そんな表情であたしを見ている。
「別に?」
首を左右に振る。
「…あたし、アイツのこと相当好き、なんですよね」
ぼたん以外の人に、初めて自分の気持ちを口にした。
「うん、見てると伝わってくるよ」
「う、うそ!」
「まあ幽助本人は気付いてないみたいだけど」
クスッと笑う部長。
南野部長の優しい手があたしの頭を撫でてくれる。
「大丈夫だよ螢子ちゃん。
幽助はその告白、受け入れてないから」
「えっどうしてわかるんですか?」
「それはね、」
ガチャっ
「っ、けーこ!」
あたしの名前を呼びながら、息を切らした幽助が部室に入ってきた。
「ゆうすけ…?」
「ったく、あんな顔してどっか行くんじゃねーよ、心配させやがって!」
「噂をすればなんとやらだね」
「ん?部長なんでいんの?
って…とりあえず螢子からその手どけろよ」
「ああ、ごめんごめん」
そう言うと部長は笑いながら手をあたしの頭から離した。
「幽助、今日昼休み女の子に告白されたんだって?」
「あー、まあな」
「抱きつかれたらしいね」
「そーなんだよ。なんか急に抱きつかれて。参ったよ。」
「参った?」
「いやー、離そうとしたんだけど、どれぐらいの力加減で押せばいいか分からなくってよー
いつも通りの力で押して怪我でもさせたらやべぇし」
そうだったんだ…
あたしてっきり、幽助は嫌がってないのかと思った
ていうかどんだけ手加減を知らないのよこのバカは
そんなことを思う余裕が生まれてきた
「で、断ったの?」
「当たり前だろ、名前も知らねえやつなんかと付き合うかっての。」
「名前知ってたらよかったんだ?」
「なわけねーだろ、第一付き合うとか、彼女とか。…興味ねぇし」
「だそうだよ、螢子ちゃん?」
「?まさかっ部長が螢子泣かせてたのかよ?!」
「はあ、なんでそういう思考になるのかなぁ」
今度は苦笑いを浮かべている部長、
幽助の話を聞いているうちにあたしの涙は止まっていた。
「違うわよ、部長は全然関係ないから」
「じゃあお前なんで泣いてたんだよ」
「…秘密」
「なにー!」
「ははっ、幽助は螢子ちゃんのことになると本当必死だよね」
「ち、ちげーよ!別に、俺はっ」
「…2人して同じこと言ってるね。
螢子ちゃん、さっきの話の続きは今度、また、2人で、ゆっくりしようね」
「あ、はっはい!」
「じゃあ俺は戻るよ」
「部長っ、話聞いて頂いてありがとうございました」
「どういたしまして。
幽助もちゃんと授業出るんだよ」
「わーってるよ!」
「じゃあまた後でね」
部長が出ていき、部室にはあたしと幽助の2人きりになった。
「結局なんで部長ここにいたんだよ?」
「…さあ?」
ふと、あたしの胸の中の黒いものはどこかへと消えていることに気付いた。
「まあいいじゃないっ。
教室戻ろっ」
部長に話を聞いてもらって、幽助があの告白を断った、その事実が聞けて。
先ほどの胸の苦しさが嘘のように心が軽い。
「…部長と何の話してたんだよ」
「気になる?」
「…べっつにー」
「じゃあ教えなーい」
「けっ、どーせいつも俺は仲間外れだよっ」
「あははっ」
「おいっ笑ってんじゃねーぞ!
俺がどんだけ必死こいてお前を探したと思ってんだよ」
「そんなに探してくれたの?」
「そーだよ!教室戻ってもいねーし、ぼたんに行き先聞いてもわからねーって言われるし、学校中走り回っちまったぜ」
「一生懸命探してくれたんだ…」
「まあな」
「…ありがと」
「お、おう」
そう言いながら右頬を指で掻き出す幽助。
それは昔から変わらない、照れてる時の癖。
一生懸命探してくれたことが、すごくうれしかった。
「心配してくれたの…?」
「当たり前だろ。
あんな顔、他の奴らに見せれねえよ」
「幽助…」
不意の言葉に、胸がドキドキとし始める。
「…お前の泣いた顔なんて見たら、みんなおっかなすぎて腰抜かしちまうだろーからな!」
そう言って、いつものいたずらっ子のように笑う幽助。
「なっ!なんですってー!」
幽助を目掛けて手を振り下ろす、
けれど見事にかわされてしまった。
「あっぶねぇ、構えといてよかったぜ!
じゃあ俺先行くから部室の戸締りよろしくな!」
「あ!ちょっと、待ちなさい!幽助!」
はぁあ、あたしのドキドキ返してほしいわ。
せっかく素直にありがとうって言えたのに。
でも、いつか他の子に負けないように
幽助にこの気持ちを直接伝えたい。
それまでは、まだ【幼なじみ】でいてあげるから。
覚悟しててね?