本当の思い
今日は、以前から夏美がどうしても幽助と話してみたいということで2人で幽助の屋台にやってきた。
「いらっしゃいませー、
ってなんだよ螢子か。」
「なによ失礼ね。友達連れてきてあげたのに」
「お、新規のお客さんか?
そりゃありがてぇ」
「こんばんは〜、螢子の友達の夏美です」
「おー、こんばんはー
ってあれ?」
「あ、覚えてます?」
少し気まずそうに夏美が聞いた。
以前あたしは夏美から誘われた合コンに行き、たまたま幽助たちが飲んでいる居酒屋で鉢合わせをした。すると幽助は、あたしを合コンの場から攫い自分たちの飲み会の場に合流させられたのだ。
後に、あの合コンになんで行ったんだなどと聞かれた。あんなに不機嫌そうな幽助をみたのは初めてだったから、驚いたのと同時に少し嬉しかった。
そして、あの時にいた夏美の顔を幽助は覚えているみたいだった。
「覚えてるって、あの時螢子のこと合コンに連れてった子だろー?」
「その節はすみませんでした!」
夏美はペコっと勢いよくお辞儀をする。
「ははっ、ジョーダンだよジョーダン。
螢子も正直に答えねーのが悪いよなー」
「なによ、別にあんたあたしの彼氏じゃないじゃない」
「まーたそんな冷てぇこと言って。
本当かわいくねー女だなー
まあ、いいや。今日なんにする?」
「あたし味噌。」
「じゃあ、私は醤油でお願いします」
「あいよ!少々お待ちをー」
そう言ってあたしたちに背を向けて作業に取りかかった。
「はぁー、ようやく謝れた!スッキリ!」
「話したいって、あやまりたかったってこと?」
「そうだよーあんなラブラブな旦那がいるなら螢子ちゃんと言ってよー!」
「だ、旦那って!まだ結婚してないわよ!」
「まだ、ってことは予定はあるんだ?
結婚式呼んでね〜」
夏美はニヤニヤしながら言ってくる。
「も、もうっ」
「螢子かーわいいっ」
「からかわないでっ」
話をしているといい香りが漂ってきた。
「ほれっお待ちどーさん」
「わー!美味しそう!」
「味には自信あるぜー?」
「いただきまーす!
…んー!美味しい!」
「へへっ、どーも!」
幽助が本当に嬉しそうに笑う姿に、自分までも嬉しくなってしまう。
その様子を見届けてからあたしもラーメンをすする。
「あのー、幽助さんたちっていつ籍入れるんですか?」
「え!…ゲホッ」
夏美からの唐突の質問にあたしはむせてしまった。
「んー俺はいつでもいいんだけど、やっぱり螢子の将来のこともあるだろうからなぁ。
大学卒業して教員なってからのがいいかなぁって考えてる」
そんなこと考えてるなんて初耳だった。
「そうなんですね!ちゃんと螢子のことも考えてて、いい彼氏さんですねー」
「まあなー俺は一応考えてるつもりなんだけどよぉ」
「螢子は幸せ者ねっ!」
このこの!と夏美にヒジで突かれる。
あたしは、幽助の言葉を聞いて素直に喜べなかった。
幽助がそういう風に考えてくれていたことを知れたのは嬉しかったけど、本気であたしと結婚したいのだろうか、とか、結婚したあとも変わらず魔界へといってしまうのだろうか、とか、そもそも本当にあたしのことを好きなのだろうか、とか。
今まであえて深く考えてこなかった、幽助の思いを知りたくなってしまった。
「はー本当に美味しかった!
幽助さん、ごちそう様でした!」
「いい食べっぷりで見ていてこっちも嬉しかったぜー、またきてくれよな!」
「はい!じゃ、螢子、わたし帰るね。
また明日学校でねー」
「あ、うん、ばいばいっ」
夏美とさよならと手を振り合うと、屋台は幽助と2人きりになった。
「もー客も来ねーだろうし、閉めるか」
「えっいいの?」
「まー、大丈夫だろ。お前たち来る前は今日もそこそこ客きてたし」
「そーなんだ」
「片付けるからちょっと待っとけ」
屋台の片付けを始める、その後ろ姿をあたしはただただ見つめていた。
幽助の、本当の思いが知りたい。
「うし、帰るか!」
「うん」
さっきから幽助に聞きたいことが、頭の中でぐるぐるとループしている。
聞きたい、でも聞いたら幽助になんとも思われるのか、怖くて聞けない。
重い?お荷物?邪魔?
そんなこと思われたらあたしは立ち直れない。
「螢子どした?さっきからなんか変だぞ?」
終始無言だったあたしに幽助は気づいていたみたいだ。
「…なんにもないわよ」
「はぁ。お前それはないだろ。
なにかありまくりなのバレバレだっての」
「…」
「腹でも痛いか?」
「…うんん。」
「じゃあどした?」
心配そうに顔を覗いてくる幽助。
…そんな表情が嬉しくて、思わず口からこぼれてしまった。
「幽助は、本当にあたしと結婚したいの?」
「…はあ?」
「だって、結婚しようっていう割には
幽助から、好き、とか、そういう言葉言われたことないし…」
自分で言ってて、なんて女々しいのだろうと思った。でも話し出したら言葉が止まらなかった。
「結婚、だって、さっき夏美に言ってたけど、あんなの初耳だし、あれが本気なのかもわかんないし。
それに結婚したからって幽助はこれからも魔界に行くっていう生活は変わらないわけでしょ?あたし…」
初めて幽助から魔界に行くと告げられたあの日、心の底から本当に幽助と別れるつもりでいた。
それでも彼は戻ってくると。そう約束してあたしを繋ぎ止めた。そして約束していた年月よりも早く戻ってきてくれた。
でも今は、あの頃よりも幽助と離れたくない、そう思ってるあたしがいる。
この状態でまた長い年月離れることを考えだけで、今までに感じたことのない虚無感に襲われてあたしがあたしでなくなってしまうのではないだろうか。
でもそんな思いを、幽助の前では言ってはいけないことは重々分かっていた。
「あー…」
幽助は立ち止まって頭をポリポリとかき始める。困っている、もしくは考えている時の仕草だ。
…やっぱり言わなきゃ良かった、
「んーと、まずはだ。俺はお前と結婚する。それが、なんだ、当たり前のことだって俺は思ってるし。
たしかに、お前には将来のことなんも言ってなかったけど俺の中ではそういう風にするって決めてたし。」
「…」
「魔界のことも、そうだなぁ、絶対行かねえとは言い切れねぇ。
でも螢子のことは手放したくない。誰かにやるつもりない」
「…そんなわがまま通用すると思ってるの?」
「思ってる」
「なんでそんな自信満々なのよ」
「そりゃ、螢子から世界で1番愛されてる自信があるからだ」
ニッ、といつものあの笑顔をあたしに向けてくる。
「なによそれ…」
なんだか話してて、これだけ悩んでいた自分がバカバカしく思えてきた。
はぁ、とため息がこぼれた。
すると急に真面目な顔になる幽助。
「魔界にはこれからも行く。
寂しい思いをさせちまうかもしれねぇけど
そんな思いさせねーくらいにお前をずっと愛し続ける」
「俺はこの世界で愛してるのは螢子だけだから」
「だから、死ぬまで俺の側にずっと居てくれ」
幽助からのまっすぐな目線にあたしは目が逸らせなくなった。少しずつ、胸の突っかかりが解されていく感じがした。
「…」
「お、おいおい。なんか言えよ」
今度は不安そうにあたしの顔を覗き込んでくる、さっきまでの自信はどこ行ったのよ。
「…考えとくわ」
「なにー!俺の一世一代のプロポーズを!」
「あんたのプロポーズなんて聞き飽きてるわ」
「お前なぁ!」
「あははっ」
あたしは幽助が好き、世界で1番愛してる。
それと同じくらい、幽助もあたしのことを愛してくれている。
それが知れただけでこんなにも満たされた気分になるなんて。
この気持ちが一生続くとは、誰にもわからない。けれど、こうして2人でずっと一緒にいられますように。
何十年も、何百年も、その先も。
「いらっしゃいませー、
ってなんだよ螢子か。」
「なによ失礼ね。友達連れてきてあげたのに」
「お、新規のお客さんか?
そりゃありがてぇ」
「こんばんは〜、螢子の友達の夏美です」
「おー、こんばんはー
ってあれ?」
「あ、覚えてます?」
少し気まずそうに夏美が聞いた。
以前あたしは夏美から誘われた合コンに行き、たまたま幽助たちが飲んでいる居酒屋で鉢合わせをした。すると幽助は、あたしを合コンの場から攫い自分たちの飲み会の場に合流させられたのだ。
後に、あの合コンになんで行ったんだなどと聞かれた。あんなに不機嫌そうな幽助をみたのは初めてだったから、驚いたのと同時に少し嬉しかった。
そして、あの時にいた夏美の顔を幽助は覚えているみたいだった。
「覚えてるって、あの時螢子のこと合コンに連れてった子だろー?」
「その節はすみませんでした!」
夏美はペコっと勢いよくお辞儀をする。
「ははっ、ジョーダンだよジョーダン。
螢子も正直に答えねーのが悪いよなー」
「なによ、別にあんたあたしの彼氏じゃないじゃない」
「まーたそんな冷てぇこと言って。
本当かわいくねー女だなー
まあ、いいや。今日なんにする?」
「あたし味噌。」
「じゃあ、私は醤油でお願いします」
「あいよ!少々お待ちをー」
そう言ってあたしたちに背を向けて作業に取りかかった。
「はぁー、ようやく謝れた!スッキリ!」
「話したいって、あやまりたかったってこと?」
「そうだよーあんなラブラブな旦那がいるなら螢子ちゃんと言ってよー!」
「だ、旦那って!まだ結婚してないわよ!」
「まだ、ってことは予定はあるんだ?
結婚式呼んでね〜」
夏美はニヤニヤしながら言ってくる。
「も、もうっ」
「螢子かーわいいっ」
「からかわないでっ」
話をしているといい香りが漂ってきた。
「ほれっお待ちどーさん」
「わー!美味しそう!」
「味には自信あるぜー?」
「いただきまーす!
…んー!美味しい!」
「へへっ、どーも!」
幽助が本当に嬉しそうに笑う姿に、自分までも嬉しくなってしまう。
その様子を見届けてからあたしもラーメンをすする。
「あのー、幽助さんたちっていつ籍入れるんですか?」
「え!…ゲホッ」
夏美からの唐突の質問にあたしはむせてしまった。
「んー俺はいつでもいいんだけど、やっぱり螢子の将来のこともあるだろうからなぁ。
大学卒業して教員なってからのがいいかなぁって考えてる」
そんなこと考えてるなんて初耳だった。
「そうなんですね!ちゃんと螢子のことも考えてて、いい彼氏さんですねー」
「まあなー俺は一応考えてるつもりなんだけどよぉ」
「螢子は幸せ者ねっ!」
このこの!と夏美にヒジで突かれる。
あたしは、幽助の言葉を聞いて素直に喜べなかった。
幽助がそういう風に考えてくれていたことを知れたのは嬉しかったけど、本気であたしと結婚したいのだろうか、とか、結婚したあとも変わらず魔界へといってしまうのだろうか、とか、そもそも本当にあたしのことを好きなのだろうか、とか。
今まであえて深く考えてこなかった、幽助の思いを知りたくなってしまった。
「はー本当に美味しかった!
幽助さん、ごちそう様でした!」
「いい食べっぷりで見ていてこっちも嬉しかったぜー、またきてくれよな!」
「はい!じゃ、螢子、わたし帰るね。
また明日学校でねー」
「あ、うん、ばいばいっ」
夏美とさよならと手を振り合うと、屋台は幽助と2人きりになった。
「もー客も来ねーだろうし、閉めるか」
「えっいいの?」
「まー、大丈夫だろ。お前たち来る前は今日もそこそこ客きてたし」
「そーなんだ」
「片付けるからちょっと待っとけ」
屋台の片付けを始める、その後ろ姿をあたしはただただ見つめていた。
幽助の、本当の思いが知りたい。
「うし、帰るか!」
「うん」
さっきから幽助に聞きたいことが、頭の中でぐるぐるとループしている。
聞きたい、でも聞いたら幽助になんとも思われるのか、怖くて聞けない。
重い?お荷物?邪魔?
そんなこと思われたらあたしは立ち直れない。
「螢子どした?さっきからなんか変だぞ?」
終始無言だったあたしに幽助は気づいていたみたいだ。
「…なんにもないわよ」
「はぁ。お前それはないだろ。
なにかありまくりなのバレバレだっての」
「…」
「腹でも痛いか?」
「…うんん。」
「じゃあどした?」
心配そうに顔を覗いてくる幽助。
…そんな表情が嬉しくて、思わず口からこぼれてしまった。
「幽助は、本当にあたしと結婚したいの?」
「…はあ?」
「だって、結婚しようっていう割には
幽助から、好き、とか、そういう言葉言われたことないし…」
自分で言ってて、なんて女々しいのだろうと思った。でも話し出したら言葉が止まらなかった。
「結婚、だって、さっき夏美に言ってたけど、あんなの初耳だし、あれが本気なのかもわかんないし。
それに結婚したからって幽助はこれからも魔界に行くっていう生活は変わらないわけでしょ?あたし…」
初めて幽助から魔界に行くと告げられたあの日、心の底から本当に幽助と別れるつもりでいた。
それでも彼は戻ってくると。そう約束してあたしを繋ぎ止めた。そして約束していた年月よりも早く戻ってきてくれた。
でも今は、あの頃よりも幽助と離れたくない、そう思ってるあたしがいる。
この状態でまた長い年月離れることを考えだけで、今までに感じたことのない虚無感に襲われてあたしがあたしでなくなってしまうのではないだろうか。
でもそんな思いを、幽助の前では言ってはいけないことは重々分かっていた。
「あー…」
幽助は立ち止まって頭をポリポリとかき始める。困っている、もしくは考えている時の仕草だ。
…やっぱり言わなきゃ良かった、
「んーと、まずはだ。俺はお前と結婚する。それが、なんだ、当たり前のことだって俺は思ってるし。
たしかに、お前には将来のことなんも言ってなかったけど俺の中ではそういう風にするって決めてたし。」
「…」
「魔界のことも、そうだなぁ、絶対行かねえとは言い切れねぇ。
でも螢子のことは手放したくない。誰かにやるつもりない」
「…そんなわがまま通用すると思ってるの?」
「思ってる」
「なんでそんな自信満々なのよ」
「そりゃ、螢子から世界で1番愛されてる自信があるからだ」
ニッ、といつものあの笑顔をあたしに向けてくる。
「なによそれ…」
なんだか話してて、これだけ悩んでいた自分がバカバカしく思えてきた。
はぁ、とため息がこぼれた。
すると急に真面目な顔になる幽助。
「魔界にはこれからも行く。
寂しい思いをさせちまうかもしれねぇけど
そんな思いさせねーくらいにお前をずっと愛し続ける」
「俺はこの世界で愛してるのは螢子だけだから」
「だから、死ぬまで俺の側にずっと居てくれ」
幽助からのまっすぐな目線にあたしは目が逸らせなくなった。少しずつ、胸の突っかかりが解されていく感じがした。
「…」
「お、おいおい。なんか言えよ」
今度は不安そうにあたしの顔を覗き込んでくる、さっきまでの自信はどこ行ったのよ。
「…考えとくわ」
「なにー!俺の一世一代のプロポーズを!」
「あんたのプロポーズなんて聞き飽きてるわ」
「お前なぁ!」
「あははっ」
あたしは幽助が好き、世界で1番愛してる。
それと同じくらい、幽助もあたしのことを愛してくれている。
それが知れただけでこんなにも満たされた気分になるなんて。
この気持ちが一生続くとは、誰にもわからない。けれど、こうして2人でずっと一緒にいられますように。
何十年も、何百年も、その先も。
1/1ページ