彼女の薔薇
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血の臭いに満ちていた。ある者はベッドで悶え、ある者は床で呻き、そしてある者は担架の上で息絶える。
衛生室の地獄絵図に、毎夜、窓を訪れる夜鳥もなりをひそめ、ガラスの向こうには、ただ闇だけがわだかまっていた。
ここに戻って来られた者たちは幸せだ。戦場で置き去りにされた兵士や、銃に戻ったまま破棄せざるをえなかった貴銃士も大勢いた。
レオポルトは、幸運な者たちに属していた。そう思おうとした。耐え難い痛みに侵されていても、生きて戻れただけ恵まれているのだと。
壁にもたれて目を閉じる。冬の壁は冷たすぎて、それなのになぜか体が熱い。体温に熱せられた傷がドクドクと痛む。
何度目かの呻きをあげたとき、温かいものがふいに額へ触れた。
「すごい熱……」
知らぬだれかの声で初めて、自分が発熱していることに気がついた。
額へ触れていた指が離れ、腕、腹、脚に走った裂傷を確かめる。軟膏が塗られる。傷に触れられる激しい痛みが去ったあと、嘘のように苦痛は収まった。
「これで、痛みが楽になるはずです」
レオポルトは重いまぶたを開けた。衛生服に身を包んだ女性が、優しげな、しかししっかりとした目でこちらを覗きこんでいる。
「マスターが他の任務から帰られたら、怪我を治してもらえます。それまではこれで我慢してください」
ハーブと西洋薬を混ぜたものだろう。独特のにおいと味のする粉末を、彼女はレオポルトの口へ、水とともに含ませた。
「解熱と鎮痛、睡眠に効果のある薬です。これで眠ってしまえば、少しは楽になりますから」
微笑み、レオポルトの額に浮かんだ汗を拭ってから、彼女は別の兵士のもとへ去っていった。
優しい笑顔を脳裏に抱いたまま、レオポルトは深い眠りに落ちた。
衛生室の地獄絵図に、毎夜、窓を訪れる夜鳥もなりをひそめ、ガラスの向こうには、ただ闇だけがわだかまっていた。
ここに戻って来られた者たちは幸せだ。戦場で置き去りにされた兵士や、銃に戻ったまま破棄せざるをえなかった貴銃士も大勢いた。
レオポルトは、幸運な者たちに属していた。そう思おうとした。耐え難い痛みに侵されていても、生きて戻れただけ恵まれているのだと。
壁にもたれて目を閉じる。冬の壁は冷たすぎて、それなのになぜか体が熱い。体温に熱せられた傷がドクドクと痛む。
何度目かの呻きをあげたとき、温かいものがふいに額へ触れた。
「すごい熱……」
知らぬだれかの声で初めて、自分が発熱していることに気がついた。
額へ触れていた指が離れ、腕、腹、脚に走った裂傷を確かめる。軟膏が塗られる。傷に触れられる激しい痛みが去ったあと、嘘のように苦痛は収まった。
「これで、痛みが楽になるはずです」
レオポルトは重いまぶたを開けた。衛生服に身を包んだ女性が、優しげな、しかししっかりとした目でこちらを覗きこんでいる。
「マスターが他の任務から帰られたら、怪我を治してもらえます。それまではこれで我慢してください」
ハーブと西洋薬を混ぜたものだろう。独特のにおいと味のする粉末を、彼女はレオポルトの口へ、水とともに含ませた。
「解熱と鎮痛、睡眠に効果のある薬です。これで眠ってしまえば、少しは楽になりますから」
微笑み、レオポルトの額に浮かんだ汗を拭ってから、彼女は別の兵士のもとへ去っていった。
優しい笑顔を脳裏に抱いたまま、レオポルトは深い眠りに落ちた。
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