1.番い
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
琴乃と斎藤はお互いに無言のまま 家に帰ってきた。
斎藤は家の扉を開いた。
「……怒っているのか?」
「!」
琴乃は顔を上げて 斎藤を見た。
斎藤は前を向いたままだった。
「……怒って…いません…。 …ただ…」
「…“ただ”?」
斎藤は振り返った。
「…ただ……あっ…!」
一歩を踏み出した時、琴乃は段差に躓いた。
琴乃は反射的に目を瞑ったが、温もりに包まれた。
琴乃が目を開くと 目の前に斎藤の胸板が見えた。
「ちゃんと下を見ろ」
「……ごめんなさい…」
「………」
斎藤は琴乃を抱きしめた。
「悪かった」
「…え…?」
「…お前に何も話さなかった事だ」
琴乃は首を横に振った。
「そんな事はもういいんです…。 …ただ…」
琴乃は斎藤の胸板に頭をつけた。
「……寂しくて……怖かった……」
琴乃の瞳から一筋の涙が流れた。
「!」
琴乃は斎藤を見上げた。
「…一様が…いなくなってしまう様で……」
「……フン。 阿呆が…」
斎藤は琴乃に口付けた。
その頃、剣心たちは大久保から“人斬り抜刀斎”の後継者である志々雄 真実が京都で暗躍している事を聞かされていた。
顔の血を拭き、上着に袖を通して、新しい刀を家から持った斎藤は、“一緒に行きたい”と 斎藤の言葉を聞かない琴乃をつれて 渋海の家に向かっていた。
「……刀…折れてしまったんですね…」
「……ああ」
「………」
「心配か?」
琴乃は小さく頷いた。
「……お前に心配されるほど 落ちぶれたつもりはないんだがな」
「そんな事っ! ………」
琴乃は瞳を伏せた。
斎藤は琴乃の頭に手を置いた。
「ありがとな」
「……はい」
琴乃は笑った。
大久保が剣心と一週間後の“五月 十四日”に会う約束をして 神谷道場を去っていった頃、琴乃と斎藤は渋海の家に着いていた。
「ここで待っているか?」
琴乃は首を横に振った。
斎藤は微笑した。
琴乃と斎藤は渋海の家に静かに入った。
廊下を歩いていると 渋海と赤松の会話が聞こえてきた。
琴乃と斎藤は、渋海と赤松がいる部屋に入った。
「俺は安全な上海へでもトンズラさせてもらう。 いいな?」
「上海よりもっと安全な逃げ場があるぜ」
「!」
斎藤は怯える赤松の首を斬り落とした。
「地獄と言う逃げ場がな」
「ひぃぃ!?」
足元に転がってきた赤松の首に恐怖を感じた渋海は崩れ落ちた。
「俺が密偵として政府に服従しているのは、その明治を喰い物にするダニ共を 明治に生きる新撰組の責務として始末する為…」
「!!」
斎藤は渋海に歩み寄った。
「大久保だろうが 何だろうが、私欲に溺れ この口の人々に厄災をもたらす様なら、“悪・即・斬”のもとに斬り捨てる」
斎藤は刀を少し上に上げた。
「ま…待て 待ってくれ! 金ならいくらでも―――…「犬はエサで飼える。 人は金で飼える」」
斎藤は冷たい目で渋海を見下ろした。
「だが 壬生の狼を飼う事は 何人にも出来ん」
「っ!?」
斎藤は渋海を斬り殺した。
斎藤の刀の先から血が流れ落ちた。
「狼は狼。 新撰組は新撰組。 そして 人斬りは人斬り。 なあ 抜刀斎…」
斎藤は振り返って琴乃を見た。
「返り血はかからなかったか?」
「………」
「琴乃?」
「!」
琴乃ははっとした。
「大丈夫か?」
「……はい」
琴乃を瞳を伏せた。
「…一様は……平和になった明治の東京でも…その手を血で染めなくてはいけないのですね……」
「……フン。 一度汚れた手なんて 綺麗にはなれないもんだ」
「……一様…」
「さて 帰るか。 今日は色々と疲れた」
斎藤は背を向けて歩き出した。
そして 少し歩いて 立ち止まり、穏やかな表情で琴乃を見た。
「癒してくれるんだろう?」
「……… !」
最初は意味がわからなかった琴乃であったが、少しして 意味を理解した琴乃の顔が赤くなった。
その後、琴乃と斎藤は家に帰り、琴乃は斎藤に身体を委ねた。