5.夢現つ
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薫の葬式には大勢の人が集まり 涙を流した。
…が、その葬列の中に剣心の姿はなかった――…
埋葬が済んだ後でも、左之助たちは何も手が付かない状態だった。
琴乃は小国診療所に入院していた。
斎藤は時間を見ては、目を覚ました琴乃の見舞いに来ていた。
が、薫の死を聞いてしまった琴乃は上の空だった。
斎藤と恵は別室で話していた。
「琴乃の様態は?」
「安定はしてるわ…。 …でも…目を覚ましてから ずっとあの調子で……」
恵は瞳を伏せた。
「…きっと…あの子の事 自分のせいだと思って 責任を感じているのよ…」
「………」
「…おまけに…食事にも手をつけてくれなくて…」
斎藤は琴乃の病室に戻っていた。
琴乃は窓から外を見ていた。
傍らには 出来立ての食事が置いてあった。
「食べないのか?」
「……いりません…」
「………」
斎藤は野菜のスープを琴乃の口元に運んだ。
「食べろ」
琴乃はそっぽを向いた。
斎藤は野菜のスープを口に含み、琴乃の顔を強引に自分の方に向かせて 深く口付けた。
無理矢理 野菜のスープを飲み込まされた琴乃はむせた。
「お前の為だけに言っている訳じゃない」
そう言って 斎藤は琴乃のお腹に触れた。
「!」
琴乃は瞳を伏せた。
…私…何やってんだろう……?
琴乃は自分のお腹に触れている斎藤の手に 自分の手を重ねた。
大切な子がお腹にいると言うのに……
もう一人の体じゃないのに……
…でも……
琴乃の瞳に涙が浮かんだ。
…薫さん―――…
数日後、左之助の舎弟により 剣心の居場所がわかった左之助たちは、人生を捨てた者達の最終領域、埒外の集落 “落人群”に向かった。
剣心は逆刃刀を鎖で封じて 廃人の様に座り込んでいた。
左之助は剣心に喝を入れたが、どうでもよくなってしまった剣心は 断った。
左之助は怒り 剣心の顔を殴った。
剣心は立ち上がり、元の場所に座り込んで 目を瞑った。
「もういい…。 もう疲れた…。 このまま静かに 眠らせてくれ………」
その後、左之助たちはそれぞれ家路についていった。
その日の夜、弥彦は剣心と薫が出会った橋の上で 涙を流した。
そこに 琴乃と薫の手紙でやって来た蒼紫と操が通りかかった。
神谷道場にやって来た蒼紫と操は、薫の位牌を目の当たりにした。
操は泣き言を言っていた弥彦に喝を入れ、縁の捜索をする意欲を掻き立てた。
…が、カラ元気を振りまいていた操だったが、一人になると こっそり涙を流していた。
――次の日の朝、旅支度をして 再び “落人群”にやって来た左之助は、剣心の頬を殴り 去っていった。
その途中、剣心に会いに “落人群”へ向かっていた操と弥彦に会った。
弥彦は左之助に自分が終わらせない事を宣言をしたが、左之助は振り返らず そのまま去っていった。
その頃、琴乃が入院している小国診療所に、恵を訪ねて 蒼紫が訪れていた。
恵から一部始終を聞いた蒼紫は解せない様子だった。
その後、蒼紫は琴乃の病室を訪れた。
「琴乃」
「! …蒼紫お兄さん…」
蒼紫は琴乃がいるベッドの横に立った。
「…具合はどうだ?」
「……大丈夫です…」
「……そうか…」
高荷 恵から聞いた通り…
斎藤に何か言われてか 食事はちゃんと取る様になった
…が、神谷 薫の件で 相変わらず上の空…か―――……
“落人群”で剣心と会い 少し話した弥彦は、「神谷道場で待ってるぜ」と言い残し、操と共に去っていった。
神谷道場に戻った蒼紫は、薫の亡骸が人形である可能性を示し、“今夜、神谷 薫の墓を暴く”旨を言った。
――夜になり、蒼紫は弥彦たちと共に桶に入っている薫の亡骸を取り出し 恵が触れたが、人形ではなかった。
…が、先代たちの文書により 外からでは判別不能である事を知っていた蒼紫は、薫の亡骸を解体しようとした。
恵に止められたが、薫の亡骸が人形の可能性が零じゃない方にかけた弥彦に頼まれた蒼紫は、薫の体に刀を刺した。
その結果、薫の亡骸から鋼線が出てきて、薫の亡骸が人形である事が判明した。
「神谷 薫はまだ殺されてはいない。 今もどこかで必ず生きている」
…これで お前はまた笑ってくれるだろう……
…琴乃―――…