縁の本当の狙いが薫である事に激怒した剣心は、縁と死闘を繰り広げていた。


そして、徐々に剣心は縁を圧倒していき、剣心の勝利が見え 止めを刺そうとした。


「バットウサイィィイイ！！！！」

…が、その時 復活した鯨波によって 剣心は掴まれ そのまま壁に体を強打させられた。


縁は剣心に殴られた時に落ちた黒メガネを拾って 掛けた。

「どうやら俺の人誅に 天もやっと味方する気になった様だ」

「待て 縁！」


縁は剣心を無視し、背を向けて 薫の方へ向かっていた。


「縁ィィィッ！！」




その頃、琴乃と恵は薫を説得し、神谷道場から離れようとしていた。


だが、“弥彦を置いていけない”と薫は再び立ち止まった。

「いいわ！ 弥彦君は私が必ず連れていくから、あんたは早くここから――」


その瞬間、強風が吹き 煙幕によって、恵の姿が見えなくなってしまった。


「恵さん！」

「恵さんならきっと大丈夫だから。 先へ……」


その時、煙幕の中 人影が見えたが、それは縁だった。


「「！」」

「私怨は無いが、全ては奴に人誅を下すため。 あんたには ここで犠牲になってもらう」

「！」

「そうはさせない…！」

琴乃は刀を抜いて 構えた。


「八ツ目を倒した警官の女…カ…」

縁は刀を構えた。


「…邪魔をする奴は 容赦しない」

そして 縁は琴乃に向かって来た。


「琴乃さん！」

「っ…！」

琴乃は縁の刀を刀で防いだ。


琴乃は横目で薫を見た。

「薫さん！ 私が時間を稼ぐから！」

「…でも…」

「行って！」

「無駄だヨ」


琴乃は縁の斬撃で弾かれた。


「っ！」

琴乃の体は後ろに押された。


「…ぁっ！」

その瞬間、琴乃の下腹部に強い痛みが走り、琴乃は下腹部を抑えた。

またその時、琴乃の立っている地面に血が流れ落ちた。


「！」

…私…今 斬られた……？


「琴乃さん…？」

「っ！」

下腹部の痛みが激痛に変わり、琴乃は地面に倒れ込み 気を失った。


「琴乃さん！？ ！」

薫は気を失っている琴乃に駆け寄ろうとしたが、縁に掴まれ 口を塞がれた。


「剣―――「諦めろ」」


薫の手から竹刀が落ちた。

「心……」




その頃、剣心は鯨波に行く手を塞がれていた。


そこへ 斎藤と左之助が加勢し、鯨波が倒れた隙に 剣心は薫の方へ走っていった。


だが、縁同様 精神が肉体を凌駕していた鯨波は立ち上がってきた。


斎藤は舌打ちした。

俺も急ぎたいと言うのに……


阿呆だけに任せておけん…


もうしばし待っててくれ…


斎藤は牙突の構えをした。

直ぐ終わらせる――…




剣心は無我夢中で 薫のもとへ向かっていた。


「剣さん！」

横を通っていた剣心に 恵は名前を呼んだが、剣心はそのまま走っていってしまった。



剣心は懐かしい香りがして 足を止めた。


「白梅香。 俺によっては姉さんの香り。 貴様にとってはさしずめ―――……」

「縁！ 薫殿はどうしたッ！！」

「この香りが道標だ。 迷わぬ様 辿れ」


縁は不気味な笑みを浮かべた。

「そこに貴様が探していた“答”が 有る」



剣心は直ぐに 白梅香の香りを辿り、神谷道場にやって来た。


その時 煙幕の中、剣心は倒れている人影が見えた。


「薫殿！！」


そこに倒れていたのは琴乃だった。


「！」

琴乃殿…！

剣心は琴乃に触れた。



琴乃がまだ生きている事を確認した剣心は、後からやって来た恵に任せて 薫のもとに向かった。



そして 神谷道場の中に入った。

「！！」

剣心は目の前の光景が信じられず 立ち尽くした。





その頃、鯨波の捕縛の処理を手短に済ませた斎藤が 琴乃の処置をちょうど終えた恵のところへやって来ていた。


「……琴乃は？」

「…本人も子供も 無事よ」

「……“子供”？」

「……琴乃さん 妊娠しているわ――…」

「！？」

斎藤は目を見開いて驚いた。


俺が琴乃の体に感じた違和感の正体―――…




「剣心！」

剣心が立ち尽くしているところへ左之助がやって来た。



「…何が飛天御剣流だ」

剣心の手から刀が落ちた。


「何が緋村 剣心だ…」

剣心は両膝を床に付いた。


「俺はまた…一番大切な人を守れなかった…」


左之助は目の前の光景が信じられず 立ち尽くしていた。


「薫……殿……」


剣心は涙を流した。

「薫」


神谷道場の壁に寄り掛かり 頬に十字傷を刻まれた薫は、縁の刀で左胸を貫かれていた―――…