5.夢現つ
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お互いに奥義を繰り出す覚悟を決めた 剣心と縁の剣気がぶつかり合っていた。
薫の顔は唇まで真っ青になっていた。
「薫さん 大丈夫ですか!?」
「でも………」
「琴乃 そいつを連れて ここから去れ」
「! ………」
確かに薫さんの顔色は悪い…
…でも…
愛する人が闘ってるのに 自分だけ去るなんて事……
…私だったら 絶対出来ない――…
琴乃は斎藤を見た。
「……ごめんなさい 一様…。 それは出来ません」
「!」
琴乃は穏やかな表情をして 薫を見た。
「薫さん 見届けよう」
「!」
「剣心さんの闘いを…」
薫はゆっくりと頷いた。
多分 雪代 縁にあるのは、姉の復讐をせんとする“罰”の意識…
けれど
剣心にあるのは 巴さんを殺めてしまったと言う“罪”の意識――
剣心は“この闘いの向こうに 償う答を見つけ出す”と言ったけど
もしかして…
答を見つけ出してからでなければ この闘いには―――
「飛天御剣流 奥義 “天翔龍閃”!!!!」
「倭刀術 絶技!! “虎伏絶刀勢”!!!!」
そして お互いに奥義を出し合った。
が、少しして 剣心の体から大量の血が吹き出て、剣心は地面に両膝を付いた。
斎藤は剣心の“天翔龍閃”が縁の“虎伏絶刀勢”の特性と相俟って 敗北した事を説明した。
「天翔ける龍の牙も爪も、地に伏せる虎には届かなかった」
斎藤は煙草を踏み消した。
剣心は深手によって動けなくなっていた。
「サァ…これで準備は整った。 これより 真の“人誅”に入る」
その瞬間、外印は辺りに煙幕を張った。
縁は琴乃たちの方へ歩み寄って行った。
「所詮…所詮 “死”などただ一瞬の痛み。 それしきのコトでは 姉さんの無念も、俺の恨みも決して晴れない。 貴様は姉さんから許嫁を奪った……。 貴様は俺から姉さんを奪った――。 だから今度は俺の番………」
煙幕で見辛くなった琴乃たちの視界に、向かって来る縁の影が見えた。
「今度は俺が 貴様から最も大事な存在を奪い! 貴様を“生き地獄”に突き落とす!」
縁は不気味に笑った。
剣心は縁の言葉に反応した。
「これこそ 雪代 縁、究極の復讐 “人誅”也!!」
「こっちへ来る!」
「言わんこたぁない」
「ヤロウ!!」
「邪魔だヨ。 神谷 薫以外は退いてろ」
「!」
琴乃は薫を守る様に自分の背中に隠した。
“人誅”の真の目的が薫である事を知った剣心は激怒し、縁を殴った。
「…それだけは許さんぞ 縁…」
「!」
「例え 巴の本当の魂がお前に微笑んだとしても、それだけは絶対に許さんッ!!!」
剣心と縁の姿は煙幕で見えなくなり、薫は剣心の名を呼んだ。
「剣心は俺達で何とかする! 恵! 嬢ちゃんを連れて逃げろ!!」
左之助は琴乃を見た。
「琴乃! 二人を頼む!」
「…はい!」
「人の家内に 勝手に頼み事をするな」
琴乃は斎藤を見た。
「…薫さんと恵さんの事は、剣心さんからも頼まれていた事ですから!」
「…阿呆からだろうが、抜刀斎からだろうが 結局変わらんがな」
「…ですね」
琴乃は微笑した。
「気をつけろよ」
「はい!」
その後、斎藤と別れた琴乃は 薫と恵と共に神谷道場を後にしようとしていたが、薫がなかなか行こうとはしなかった。
「薫さん!」
「しっかりしなさい!」
恵は薫の頬を叩いた。
「あんた 言ったでしょ! “自分が死んだら剣さんが自分を責めて苦しむから 何があっても絶対死なない”って! 今が正にその瀬戸際なのよ!!」
「………」
薫は叩かれた頬に触れていた。
「薫さん 剣心さんならきっと大丈夫。 一様と左之助さんも加勢してくれるはずだから」
「……琴乃さん…」
その頃、左之助に促された斎藤が、左之助と共に剣心に加勢しようとしていた。
「ヤレヤレ。 本当にどいつもこいつも自分勝手な事だ。 …琴乃も悪影響を受ける訳だ…」
斎藤は刀を抜いた。
「まあいい。 あんな青二才に 一番愉しい獲物を潰されのはつまらん。 ここは一つ 貸しておいてやる」
…琴乃も多少は世話になっただろうからな―――…