5.夢現つ
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斎藤にぴったりとくっついている琴乃と 斎藤は屋根の上にいる八ツ目に歩み寄った。
「人間ならば知性で“引き際”と言うものを悟る。 犬畜生でも本能で察する。 だが 己れの敗北を勝者のせいにして 引き際を見失った奴などそれ以下。 犬畜生にも劣る化物同然」
「…五分預かるぞ 抜刀斎」
「待て 八ツ目!」
斎藤は微笑した。
「五分も要らん。 三分で十分だ」
「この姿を化物と呼んだ奴から 今まで俺は真っ先に殺してきた!!」
八ツ目は怒りを露わにした。
「一様」
「離れていろ。 …すぐ戻る」
「…はい」
琴乃は斎藤から離れた。
八ツ目は斎藤に向かって来た。
そして、長い左腕で地面を壕の様に掘った。
「!」
あの人 口だけじゃない…
「どうだ この威力。 俺は化物じゃなく 人間を超えた者なんだ!!」
八ツ目は長い左腕を長い舌で舐めた。
斎藤に牙の事を聞かれた八ツ目は 人体精製である事を答えた。
「その舌もか?」
「これは自前だ」
「成程。 十分 化物だ」
斎藤は微笑した。
「殺ス!!」
「“殺す”? お前が? 俺を?」
斎藤は刀を少し抜いた。
「身の程知らずが」
更に体を侮辱された事に激怒した八ツ目は “殺す”を連呼した。
斎藤は牙突の構えをし、八ツ目も構えた。
…左 対 左……
久しぶりに見る 一様の闘い……
斎藤は八ツ目に向かっていった。
八ツ目は左手で土砂を削盤して “土砂の防壁”を作り出し、そして 斎藤と八ツ目は交差し合った。
手応えを感じた八ツ目は不気味な笑みを浮かべ、斎藤の右脇腹辺りから血が吹き出た。
「!」
八ツ目さんが削盤した土砂によって 一様の牙突の突進力が僅かに鈍り 競り負けた…
…でも 一様が負けるとは思えない……
琴乃は右拳を左手で触れた。
きっと 戻って来てくれる――…
八ツ目は剣心を見て、斎藤に視線を戻した。
「侮蔑無粋に横槍を入れた事、しかと後悔させてやる」
斎藤は微笑した。
「化物風情とは言え…身の程知らずも程々にしとけよ」
斎藤は牙突の構えをした。
「この 阿呆が」
「貴様まだ“化物”と口にするか!」
「ホウ。 “阿呆”より“化物”の方に反応するとは 本当は自覚してるんじゃねェのか」
「もう殺す!!」
「聞き飽きたと言ってるだろうが」
斎藤は再び 八ツ目に向かっていき、八ツ目は再び “土砂の防壁”を作り出した。
斎藤は防壁より先に出ている 左腕の先端に牙突を繰り出した。
「決ま… !?」
が、機械より速く精密に動ける八ツ目の左手に 斎藤の刀が掴まれていた。
…そんな…
琴乃は微笑した。
…でも 残念
一様の狙いはここから だから――…
「牙突零式!!」
斎藤は手から刀を離し、八ツ目の体は後ろに吹っ飛んでいった。
「グギャアァアァアッ!!」
斎藤の刀が左腕に深く突き刺さり 左腕が折れた八ツ目は、激痛のあまり 喚き声をあげた。
「一様!」
斎藤の勝利を確信した琴乃は斎藤に駆け寄った。
「…随分と心配そうな顔をしていたじゃないか?」
琴乃は瞳を伏せた。
「……それは… !」
その瞬間 琴乃の頭に手が置かれた。
琴乃が斎藤を見上げると、斎藤は微笑していた。
「うおおお!!」
「「!」」
琴乃と斎藤は声を上げた八ツ目を見た。
八ツ目は斎藤の刀を折れた左腕の芯棒にしていた。
「!」
まだやる気なの…?
斎藤は呆れてしまった。
「ここで闘わずして退くならば、死んだ方がマシだ!」
「退いて下さい 八ツ目さん。 死ぬなんて無意味なこと…「黙れ!!」」
「人の家内が親切に言ってやってると言うのに…、ならば 早々と死ね」
「ほざけ!!」
そう言って 八ツ目は神谷道場の天井裏に戻っていった。
「…やれやれ」
「一様」
「お前はまだ離れていろ。 あの化物はまだやる気らしいからな…」
「…でも…」
【そうはさせるか!!】
八ツ目が琴乃と斎藤のもとに戻って来た。
「その女は俺に対して 侮辱とも取れる言葉を言った!」
「…そんな事 !」
琴乃を制止する様に 斎藤の腕が目の前にあった。
「オイオイ 人の親切心を素直に受け取れねェのか…」
「いくぞッ!!」
八ツ目は斎藤の言葉を無視して、琴乃と斎藤に向かって来た。