5.夢現つ
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剣心と左之助が空に浮かぶ気球を見ると 一人いなくなっていた。
道場の天井裏には八ツ目が潜んでいて 薫を襲ってきたが、咄嗟に剣心が薫を抱えて かわした。
八ツ目は自分の手足を説明した。
「この体こそ 八ツ目一族の誇りにして繁栄の要! 故に門外不出。 見た者 知った者は必ず殺すのが絶対の掟!! まずは抜刀斎! そして この場にいる全て皆殺しだ!!」
「フン。 化物の分際でよく吠える」
斎藤が神谷道場の敷地に入ってきていた。
「…あ…」
生きていると信じていた琴乃だったが、いざ 亡くなったかもしれない愛する者が目の前にいる光景が信じられないまま 立ち尽くしていた。
「て…めェ 生きて…やがったのか」
「随分な言い草だな オイ。これでも池田屋を始め 戊辰、西南と多くの死地をくぐり抜けてきた身――新撰組の中では唯一人、“不死身”と呼ばれた男なんだがな」
斎藤は琴乃を見た。
「…久しぶりだな 琴乃」
「! …本当に…一様……?」
「…少し離れている間に 夫の顔を忘れたのか お前は?」
「……っ…」
琴乃の瞳から涙が流れ落ちた。
「…一様――っ!!」
琴乃は斎藤の胸に飛び込んだ。
「…どこ…行ってたんですか…っ!? …ずっと…心配してたのに…っ…!」
斎藤は琴乃を抱きしめ返した。
「……もう…黙って どこかに行かないでください…」
懐かしい匂い…
琴乃は抱きしめる力を強めた。
…本当に…一様が帰ってきたんだ―――…
斎藤は琴乃の髪を撫でた。
「…悪かった…」
…少し 痩せたか…?
…いや…
斎藤は琴乃の体に違和感を感じていた。
斎藤は神谷道場にやって来た理由が、剣心と縁の関係性を問い質しに来た事を言った。
左之助は斎藤の言葉を無視して、姿を現さなかった事を問い詰めた。
「イチイチ五月蝿い奴だ。 そんなに俺に死んで欲しいのか?」
「…後味が良くねぇだろうが。 生きてんならとっとと知らせに来いってんだよ」
左之助は琴乃を見た。
「琴乃が一番 そう思ってんだろ?」
「!」
驚いた琴乃が斎藤を見ると、斎藤と目が合った。
斎藤は左之助に視線を戻した。
「…お前は知らないだろうが、戊辰の時は一年半程、西南の時は半年程 離れ離れになっていたんだ。 今更 二ヶ月くらい離れたところで俺と琴乃の関係が終わる訳ないだろ」
「……一様…」
「そうらしいな。 琴乃に聞いたぞ」
「左之助さん それは内緒… っ!」
琴乃は視線を感じ 恐る恐る斎藤を見た。
「…話したのか?」
琴乃は瞳を伏せた。
「……ごめんなさい…」
「今のお前からじゃ想像できない、こんな話やあんな話を聞いたぜ!」
左之助は愉快そうに笑った。
斎藤はため息をついた。
よりによって こんな阿呆に―――…
その後、琴乃は斎藤にこれまでの経緯を話した。
剣心は屋根の上にいる八ツ目と向かい合っていた。
八ツ目は一族の不運を維新志士への恨みに変えて、全て剣心にぶつけようとしていた。
【不殺で闘うつもりなら 引っ込んでな】
「「!」」
斎藤にぴったりとくっついている琴乃と 斎藤が剣心のもとにやって来た。
「…さっきの声は やはりお前だったか…」
斎藤は微笑した。
「お前はあまり動じない様だな」
剣心は琴乃を見た。
「よかったでござるな 琴乃殿」
「……はい!」
琴乃は満面の笑みを浮かべた。
剣心に 何しに来たのかと問われた斎藤は、志々雄事変の事後処理の一環で 縁に辿り着いた事を言った。
「とりあえず 地上の敵を全て倒せば 奴は降りてくるんだろう? で 残りはあの化物一匹」
斎藤は柄に手を添えた。
「この遇機にして せっかくの好機。 お前がぐずぐずしているうちに逸してはかなわん」
「…一様…?」
琴乃は斎藤を見上げた。
「……なんだ 貴様は…」
「化物風情に “貴様”呼ばわりされるような 筋合いはないな」
「斎藤!」
「剣心さん」
剣心は琴乃を見た。
琴乃は首を横に振った。
「剣心さんは体力の温存をして下さい…」
本命はこの後なんですから―――…