5.夢現つ
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三時間近く話しっぱなしだった剣心はそこで一息つくことにした。
その場にいた誰もが話そうとせず、縁側に剣心と薫を残し 琴乃たちは家の中に入った。
「………」
逆の立場で話を聞くと…なんだか悲しい気持ちになってくる……
「琴乃 ぼーっとしてどうした?」
「!」
琴乃は はっとした。
「…いいえ…」
「……そう言えば 琴乃も斎藤とケッコンしたの 十五だって言ってたよな?」
「…え…はい」
「当時はケッコンが早かったって事か?」
「……どうなんでしょう…? …私はあまり知り合いがいないですし…」
琴乃は瞳を伏せた。
「…当時の知り合いは もう…亡くなっている方がほとんどなので…」
「……悪ぃ…」
「……いえ…」
「………」
左之助は琴乃の肩に手を置いた。
「あまり無理すんなよ」
「……え?」
琴乃は顔を上げて 左之助を見た。
「…この間、琴乃から新撰組目線からの話を聞いたからか…、剣心目線の話を聞くと 何か辛いもんがある…。 …お前なら 尚更じゃねェのか…?」
琴乃は再び 瞳を伏せた。
「……そうですね…」
琴乃は右拳を左手で握り締めた。
目指していた先は違うけど…
…その目指すものの為に お互いに命を掛けた事には変わりないから―――……
琴乃たちは剣心と薫のもとに戻った。
剣心は黙り込んでいたが、薫に促され 剣心は続きを話しだした。
元治元年 十二月…剣心と巴が一緒に暮らしてから早五ヶ月が経った――…
剣心と巴の家に、巴の弟である縁がやって来た。
縁は以前 巴が剣心を暗殺する為の策略に手を貸した闇乃武の連絡係になっていた。
仇であった剣心を愛してしまった巴は縁を帰した。
そして、家に帰ってきた剣心に自分と縁の話をし始めた。
縁と巴の母親は病弱で 縁を産んで間もなく亡くなってしまい、縁は巴を姉であると同時に 母の様に慕っており、巴の嫁ぎ先が決まった時は駄々をこねた。
…が、その相手は“一廉の武士として誰からも認められるようにならなければ 君を幸せには出来ない”と、祝言を一旦延ばして 京都見廻組に参加した。
…そして…京都で還らぬ人となった――…
巴は涙を流しながら 後悔している心の内を話した。
剣心は巴を抱き寄せ、巴は剣心の腕の中で泣き叫んだ。
その後、剣心は自分の話をした。
「新時代を迎えられたら…甘い戯言かもしれないけど、俺は人を斬る事なく 人を守れる道を探そうと思う…。 もちろん この手にかけた人達の幸せを奪った罪を背負い 償う道を探しながら…」
「………」
「…巴…」
「はい?」
「君がこの動乱の中で一度は失ってしまった幸せ…今度こそ俺が守り抜いて見せる…」
「!」
「………」
「はい…」
笑うのが苦手だった巴は満面の笑みを浮かべた。
次の日の早朝、目を覚ました巴は支度をし、眠っている剣心を見た。
――この人は私の幸せを奪った人…――
――そして もう一つの幸せをくれた人――
これから先も人を斬り…
…けれど…
その更に先、斬った数より大勢の人を必ず守る…
――今ここで決して死なせてはならない――
「さよなら…私が愛した二人目のあなた…」
巴は眠っている剣心に別れを告げて 家を後にした。
その後、巴は闇乃武のアジトを訪れた。
闇乃武頭領である辰巳は、抜刀斎の弱点を問い、巴は“寝込み”である事を言った。
そして、そこで弱点を探ると言うのは仮の目的で、本来の目的が巴自身が剣心の弱点になる事である事に気づいた。
自分のせいで剣心を危険な目に合わせたくない巴は、隠し持っていた脇差で敵の数を減らそうとしたが、辰巳の拳打によって 気を失ってしまった。
一方、縁によって家に投げ入れられた 闇乃武からの文を読んだ剣心は怒り、第六感である“直感”が働かない 死の樹海…“結界の森”にやって来た。
まず、剣心は後に 乙和に恨まれるきっかけになる、中条を相手にした。
中条は暗器で対峙したが、腸が煮えくり返っている剣心には全く効かず、両腕を切り落とされた。
そして、爆薬を仕込んでいた洞窟に剣心を誘い込み、爆薬を起爆させ 中条は結界となり、剣心の“聴覚”を奪った。
次に、角田と、後に人誅のメンバーとして姿を現す 八ツ目のコンビを相手にした。
角田は巨大な斧で木々を飛ばし、八ツ目は角田の飛ばした木々に潜んで 剣心を攻撃した。
角田と八ツ目の連携技に苦戦していた剣心だったが、角田の脚を斬り、八ツ目は剣心の肩を攻撃してきた際に もう一本の刀で右手を刺し、身動きが取れなくした時に 剣心は八ツ目の姿を初めて見た。
姿を見られた事に激怒した八ツ目は、右手を無理矢理 引き裂いた。
「見た者は必ず殺すのが一族の掟!! 今は勝負を預ける! だが必ず殺す! 時が経とうと 時代が変わろうと 必ず殺す!!」
そして 復讐を誓いながら逃走していった。
残された角田は 仕込んでいた閃光弾を起爆させ 結界となり、剣心の“視覚”を奪った。
「巴を返してもらうぞ」
そして…視覚”は閃光による一時的なものであったが、巴を案じ 直ぐに辰巳のいる小屋へ向かった剣心は、そこで 辰巳と対峙した。
その頃、気を失っていた巴は目を覚ましていた。
また、巴と入れ違いになった事に気づいた縁は 巴を迎えに“結界の森”の中に来ていた。
剣心は“満身創痍”、“疲労困憊”、“直感”、“聴覚“、“視覚の不全”、そして 辰巳の格闘術である“無敵流”により 押されていたが、何とか反撃をしていた。
目を覚ました巴は、外から聞こえる刀と拳がぶつかり合う音が気になり 中途半端に開いた小屋の扉から外を見た。
外では巴の許嫁であった 清里明良が闘っている姿が見え、巴が目を擦ると 剣心だった。
――ああ…そうか――
私はあの人を止めることが出来ず 死なせてしまって…
この人を死なせる為に自分の全てを賭けて…
…けれど…
死なせるどころか…
それどころか…愛してしまった―――
もう二度と死なせたくない…
そして――…
辰巳は徐々に相手の戦力を削いでいく戦法に変え、剣心は大量の出血と極寒気温により “触覚”を奪われつつあった。
「いくぞ!!」
剣心は瞳を閉じ 役に立たない“視覚”を自ら断って、相討ち覚悟で辰巳に向かっていった。
「おぉぉお!!!」
その瞬間、白梅香の香りがしたが、剣心はそのままの勢いで刀を振り下ろさざる得なかった。
辰巳の体を押さえていた巴は 辰巳と共に剣心に斬られ、その際 持っていた脇差が手から落ちて 剣心の左頬を切り、元々あった一条の傷が十字傷になった。
ガッ!!
そして、巴と辰巳は倒れた。
巴が剣心の手によって斬られた光景を見てしまった、縁の中の何かがブツンと切れた――…