5.夢現つ
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家路の途中 剣心が橋に差し掛かろうとした時、橋の中央に縁がいて、そして その隣には既に亡くなっている巴の幻が見えた。
剣心はそこで 縁が首謀者である事に気づいた。
縁は上海に渡り、大陸経由の密造武器 全てを取りしきる、上海闇社会の頭目になった事を言った。
剣心は罰を受けるのは自分一人、他の人をこれ以上巻き込まない様に言った。
「違うナ。 俺の仇はお前一人ではなく、お前の全て!」
縁は巴のいない日本自体が罪に等しい事を言った。
「違う! 縁 罪を犯したのは拙者一人なら、罰を受けるのも 拙者一人!! それ以外は それは復讐ではなく ただの殺戮!! 巴は復讐を望んでも 殺戮は決して 望まないはずだ!!」
ガッ!!
その時 剣心の額に、縁が投げつけた拳銃が当たった。
「貴様が姉さんを語るな! 貴様に姉さんの何がわかる!!」
縁は怒りを露わにした。
剣心の額から血が流れ出た。
「ともかく その前哨戦も今日で終わり。 これより十日後が本戦だ」
「十日後!」
「ああ。 場所は神谷道場。 そこが俺たち六人の人誅完成の場だ」
「!」
縁は不気味に笑みを浮かべながら 背を向けて歩いていった。
「縁!!」
縁は立ち止まり 横目で剣心を見た。
「それ以外に…闘う以外に…俺がお前から姉を奪った罪を償う方法はないのか!! どうすればいい!! 答えろ 縁!!」
縁は呆れた。
「そうだな…強いて答えるなら…せいぜい “苦しむがいい”」
縁は再び不気味な笑みを浮かべた。
人斬りの罪を償う“答え”を見つけられぬまま 十日後、剣心は縁との闘いを迎える
…だが その“答え”が闘いの果てに 最も残酷な姿をして待ち受けている事を 今はまだ誰も知る由もなかった―――
神谷道場には左之助が 恵を連れて戻ってきていた。
また、左之助は戦利品として 夷腕坊 弐號機を持って帰ってきていた。
左之助が思わず言ってしまった “闘い”と言う一言により、隠し事をしていたのがバレてしまった。
「あまり 左之助さんだけ責めないでください」
「琴乃さん…貴女も何か知って…?」
琴乃は頷いた。
「…あまり 薫さんたちを巻き込みたくなくて……。 隠す様な形になってしまって ごめんなさい」
そう言って 琴乃は頭を下げた。
「別に琴乃だけが謝る事じゃねェよ」
「…左之助さん……」
琴乃たちが話をしていると 剣心が帰ってきた。
が、上の空で そのままひと寝入りしに行ってしまった。
琴乃たちは剣心の事が気掛かりだったが、そっとしておく事にした。
寝入りにいった剣心だったが、夢にまで巴が出てきて ゆっくり眠る事もできず、縁側でぼーっと風鈴を見ていた。
「…剣心さん」
剣心を見かけた琴乃は声をかけた。
「…琴乃殿…」
「…お怪我 大丈夫ですか?」
「…大した事ないでござるよ…」
「……そうですか…」
「………」
「………」
剣心さん…まるで魂を抜かれてしまった様な……
【はっ! たぁ!!】
その時 声が聞こえてきた。
「道場…」
「はい。 薫さんが弥彦君に奥義の伝授をしているみたいですよ――」
琴乃と剣心は道場に顔を出した。
薫は燕に弥彦の相手を任せて 剣心のもとにやって来た。
薫は剣心の異変を 自ら聞こうとはせず、傷の心配をした。
「話はいいから 早く恵さんに看てもらって ね」
「……ありがとう 薫殿」
決心した剣心は、その日の夜 今回の闘いの首謀者と 闘いのきっかけとなった、十字傷に込められた恨みの話を話し始めた――――…
元治元年、京都――
黒い封筒が届くたび、剣心…人斬り抜刀斎は天誅と称して 人を殺め続け 血の雨を降らしていた――…
――元治元年四月…剣心は生きようとする執念がとても強い男と対峙した。
そして、剣心はその男を倒したが、左頬に一太刀を受けてしまった。
後に その男を殺めた事で更に悲劇を生む事となり、一条の頬の傷も癒えぬものとなる―――…
剣心は酒処でお酒を嗜んでいたが、血の味しかしなかった。
そこへ綺麗な女性…巴が一人 お店にやって来て、剣心の後ろに席について 冷酒を嗜んだ。
その艶やかな姿に客は見惚れ、似非志士が酒を注ぐように言ってきた。
だが、剣心によって 似非志士は逃げる様に去っていった。
店を後にした剣心は 人通りのない道を歩いていた。
そこで 影の刺客に狙われたが、剣心は呆気なく斬り倒した。
その時、酒処のお礼として追って来ていた巴が その場にいた。
「よく惨劇の場を“血の雨が降る”と表しますけど………」
巴の顔や着物には返り血が付いていた。
「あなたは本当に…血の雨を降らすのですね…」
剣心と巴―――
この瞬間から 二人の運命の輪が静かに廻り始めた
狂狂…
狂狂と―――…
剣心は失神してしまった巴を、仕方なく 自分が住処としている旅館 小萩屋に連れ帰った。
その後、巴は女将さんに気に入られ 小萩屋でお手伝いとして働くことになった。
そんなある日、お手伝いを終えた巴が剣心の部屋を訪れると 刀を抱えて眠っていた。
巴は肩掛けを掛けようとした。
が、その瞬間 剣心は目を覚まし、巴の胸倉を掴み 首元に刀の刃を当てた。
ハッとした剣心は巴の体を押して 離し、謝った。
「ずっと前の問いの答―――…、君が刀を手にしたら斬るか 否か…、答は“斬らない”。 俺は斬らない。 どんなコトがあろうと 君だけは絶対に斬ったりしない…」
無愛想だった巴の頬が少し赤くなった。
「君だけは…絶対に…」
――元治元年 六月五日、祇園祭の最中 池田屋事件が勃発した。
様子を見に行った剣心は、新撰組が並んでいる中にいた斎藤と目が合った。
そして、元治元年 七月十八日、禁門の変が起き、剣心たち 長州派維新志士は惨敗した。
剣心と巴は、小萩屋が焼けてしまった為 桂が用意した京都の外れの農村の家に暮らす事となり、桂には“形だけで構わない”と言われたが、二人は祝言を挙げた。
元治元年 晩夏、剣心 十五歳、巴 十八歳だった―――…