4.偲ぶ
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「平和になった明治では、一様と色々な事をして 過ごしていました。 …でも…平和な日々はそう長くは続きませんでした――…」
明治十年 二月、西南戦争が勃発しました――…
「……行かなくてはいけないのですね――…」
「……ああ」
琴乃は斎藤の背中に体を付けた。
「………」
「………」
「……っ…」
「…泣いているのか…?」
「……泣いてません…っ…」
「………」
斎藤はため息をついて 琴乃の方に体を向けた。
「…強がらなくていい」
斎藤は琴乃の涙を拭った。
「…っ…!」
琴乃は斎藤に抱きついた。
「……一様…っ…!」
「……琴乃…」
斎藤は琴乃を抱きしめ返した。
そして、琴乃と斎藤は口付けを交わした――…
「こうして、一様は警視庁抜刀隊として 西南戦争に参加すべく、九州へ向かって行きました。 敵に斬り込みをかける際 銃創を負ってしまいますが、大砲2門を奪う等 手柄を立てました。 ――そして 警視庁警部補となりました」
話し終えた琴乃はひと呼吸置いた。
「…すみません…長々となってしまって…」
「うううん。 素敵な話をありがとう」
「…でもさ、なんだかんだ言って 琴乃さんの事、大切にしてるのよね あいつ」
蒼紫は操の言葉に頷いた。
「警部補になるのはそう簡単なことではない」
「…はい」
琴乃は少し頬を赤く染めた。
「…自慢の夫ですから」
操たちは笑いかけた。
琴乃も笑みを返した。
「琴乃さん こっち! こっち!」
「あ はい!」
その日の夜、琴乃たちは祇園祭に来ていた。
「琴乃さん ぼーっとしてたらはぐれちゃうよ!」
「ごめんなさい…」
琴乃は神輿に視線を戻した。
「… 一様と前に来た事があって…なんだか 懐かしくて…」
「…そうなんだ」
【あんさん達 祭りを楽しんでるんかいな?】
「「「!」」」」
そこには張が立っていた。
「あんたもお祭り?」
「違うわ! 仕事や! 仕事!」
「へぇー…」
操たちは疑いの目で見ていた。
「なんや…?」
「疑われても仕方ねェんじゃねェか ホウキ頭」
「あん?」
「年中 お祭りみたいな格好してるからな」
「なんだと!? もう一遍言ってみィ トリ頭!!」
左之助と張は口喧嘩を始めた。
「…左之助さん…! 張さん…!」
「放っておきましょう」
「…でも…」
琴乃は左之助と張に視線を戻して、恵と共に歩き出した。
「ちょっ 待ち!」
「「!」」
琴乃と恵は振り返った。
「なによ?」
「あんさんじゃなくて…」
張は琴乃を見た。
「…私――…?」
その後、琴乃は合流した張と並んで 剣心たちの一番後ろを歩いていた。
「………」
さっきから微かに視線を感じる……
「あんさん どないした?」
「!」
琴乃は驚き 張を見上げた。
「…いえ…。 …それで…私に何か用ですか?」
「……用って言う程 大した用でもないんやけど…」
「…そうなんですか?」
「…あんさん ホンマいい人やな…。 ま 斎藤の奥さんやってるだけはあるはな」
「……そんな事…」
琴乃は瞳を伏せた後、再び張を見上げた。
「…それより…張さん、一様とそんなに親しい間柄でしたっけ…?」
「!」
張は咳払いをした。
「会ったのは…あんさんが一緒にいた、あの時の一回だけや! あの時で十分 奴が変わり者くらい わかったわ…」
斎藤が生きているのは内緒やったんや…
うっかり口が滑るところだったわ…
「……そうですか…」
琴乃は瞳を伏せた。
「……心配せんで 信じて待ってるのが一番やろ」
「……はい」
「……もし帰ってこなかったら ワイがもらってやるさかい」
「…え?」
「冗談や! 冗談!」
張は笑った。
琴乃は微笑した。
その後、琴乃は屋台を回っていた。
「琴乃さん 綿あめがあるよ! あ! あっちにはりんご飴も!」
「操ちゃん 待… っ!」
その時 琴乃は人にぶつかってしまった。
琴乃はそのまま 倒れそうになった。
「琴乃さん!?」
琴乃は蒼紫に体を支えられた。
「蒼紫お兄さん…」
琴乃は通りにあった椅子に座らされた。
「大丈夫か?」
「……はい。 少し気分が優れなくて…久しぶりに沢山の人がいる所へ来たので、人に酔ってしまったのかもしれません…」
「…無理はするな」
「……はい」
その頃、琴乃たちと別れた張は、斎藤と合流していた。
「思ったよりは元気そうだな」
「……物陰から見てるくらいなら 顔見せてやればいいんちゃいますか?」
「必要ない。 琴乃は強い女だ」
「……いや…結構 滅入ってた気がするんやけどな…」
斎藤は煙草に火を付けて、そして 煙を吐き出した。
「…それで」
斎藤は鋭い目つきで張を見た。
「人の家内に手を出すつもりなのか お前は?」
「!?」
張はあまりの驚きに咳き込んだ。
「…そんな訳ないに決まってんやろ…! 冗談やって…!」
どんだけ地獄耳なんや…
「…フン。 当たり前だ」
斎藤は煙草を吸った。
…琴乃に手を出した奴は、“悪・即・斬”により 始末するだけだがな―――…