4.偲ぶ
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「沖田さんを看取った私は、江戸を離れて 新撰組の後を追い 会津へ向かいました。 その頃、山口 二郎と名乗っていた一様は、別行動中 壬生での戦いで負傷した土方さんに代わり、白河城の攻防戦である 白河口の戦いの指揮を執っていました」
「じゃあ そこで琴乃さんは再会を果たしたのね!」
琴乃は首を横に振った。
「会津には着いたのですが、そこで砲撃を受けてしまって―――…」
「……ん…」
琴乃が目を覚ました。
「気がついたみたいね」
「! っ!」
琴乃は起き上がろうとしたが、全身に激痛が走った。
「寝ててちょうだい。 砲撃の衝撃で全身を強打しているし、右腕も骨折しているわ。 咄嗟に体を庇ったのでしょうけど…」
「……貴女が手当てを…?」
「そうよ。 私は高木 時尾。 貴女は?」
「……藤田 琴乃です。 助けて頂いて ありがとうございました…」
時尾は妖美な笑みを浮かべた。
「…時尾お姉さんは会津藩大目付の娘さんでした」
「「「……“お姉さん”…?」」」
「勿論 血の繋がりはないですよ。 親しみを込めて そう呼んでいるんです」
「……じゃあ 新月村の時に斎藤が言っていた“義姉”とは?」
「時尾お姉さんの事です。 …私にとっても“義姉”なんですけどね」
そう言って 琴乃は微笑した。
「――その後、私は時尾お姉さんにずっと看病されました。 …しかし、怪我が回復した頃には 既に会津戦争は終わった後でした…。 私は時尾お姉さんに協力してもらって一様を必死に探しました」
琴乃は顔を伏せた。
「…でも……一様を見つける事は出来ませんでした……。 …その頃、一様は越後高田で謹慎していたそうです…」
琴乃は顔を上げて 蒼紫たちに視線を戻した。
「――そして 明治二年 五月十一日、副長 土方 歳三さんが戦死し、新撰組が降伏する形で 明治二年 五月十八日、戊辰戦争は終結しました――…」
「「「………」」」
「それからして、会津藩家臣たちは強制移住をする事になり、私は時尾お姉さんと共に斗南に移住しました」
「「「斗南!?」」」
琴乃は頷いた。
「そりゃあ 随分遠くだな…」
「…はい。 でも そこで、会津藩士と共に移住していた一様と再会する事ができました―――…」
「……斎藤様…?」
斎藤は驚いた顔をした後 微笑した。
「斎藤様―――っ!!」
琴乃は斎藤の胸に飛び込んだ。
「…元気だったか?」
「はい…!」
再会を諦めていた二人にとってもう それ以上の言葉は必要なく、その日、琴乃は初めて 斎藤に身を委ねた―――…
「…そして 少しして、私は一様と結婚をしました」
「それでやっと琴乃さんは…って 結婚!? お付き合いじゃなくて…?」
「? …ええ…」
「どうしたの 操ちゃん?」
「結婚って…蒼紫様が今 二十四歳だから、琴乃さんは当時…」
「…十五歳だな」
「「「十五!!?」」」
蒼紫の言葉に操たちは目を見開いて驚いた。
「………」
拙者も同じ歳で祝言を挙げたでござるな……
「琴乃さん 結婚するの早っ!」
「結婚に歳なんて関係ないですよ。 本当に愛する人と結婚できるか どうかです」
そう言って 琴乃は微笑んだ。
「その後、私と一様は新撰組の皆さんの墓参りを兼ねて 各地を放浪しました。 ――そして、明治七年 7月、私と斎藤様は東京に移住し、斎藤様は警視庁に入りました」
「…よくあいつが 警視庁なんか入ったよな。 新撰組にとって 敵だったのによ」
「……それは私も言いました」
琴乃は瞳を伏せた。
「…“どうして 敵同然の明治政府なんかに入るのですか?” って…」
「…それで斎藤は?」
「……“これからは俺一人の人生じゃない。 お前に苦労を掛けたくないし、夫が職なしは嫌だろ?”…と――…」
「なんだ まともな事をちっとは言えるじゃねェか」
左之助は笑った。
「あんたが言える事でもないけどね」
操と弥彦は「うん うん」と頷いた。
「確かに 一理あるわね。 ねぇ 剣心?」
そう言って 薫は剣心を見た。
「……返す言葉もないでござる…」
その後 琴乃たちは笑った。