4.偲ぶ
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「琴乃さんを置いてくなんて最低!」
「…操殿…そうとも言えないでござるよ…」
「…え?」
操は剣心を見た。
「……剣心…」
薫も剣心を見た。
「…そうだな」
「……蒼紫様…」
操は蒼紫を見た。
俺たちも大切な人を置いていった過去がある…
…それは恐らく…斎藤も同じ考え……
…ただ 大切な人を巻き込みたくない…その一心で―――…
「…それで その後はどうなったんだ?」
「…これから話す話は 一様に聞いた話も混ぜた形になりますが……、あの人 ほとんど話してくれないので…」
「……まあ ああ言う性格だし、自分が負けた闘いの話なんて 誰だってしたくもないよな…」
「…そうですね」
一息ついた後、琴乃は続きを話し出した。
「――私が新撰組を去ってから間もない、現在で言うと 明治の元号にもなりますが、慶応四年 一月三日、戊辰戦争が勃発しました。 長州軍は錦の御旗を掲げており、幕府軍は朝敵の烙印を押された上、幕府軍を裏切る藩が急増していきました。 …また、長州軍の洋式銃には成す術もなく、新撰組が属する幕府軍は敗北し、退却を余儀なくされました…」
琴乃は瞳を伏せた。
「…その数日に渡る 退却しながらの闘いによって、六番隊組長 井上 源三郎さん、そして 怪我の時にお世話になった 山崎 蒸さん…その他 多くの隊士が戦死したと聞いております……」
「「「………」」」
「そんな状態の中、慶応四年 一月七日、幕府軍の総大将である徳川 慶喜が松平 容保らを連れ、幕府軍を見捨て 江戸へ敵前逃亡をしました…」
「「「!!?」」」
操たちは目を見開いて驚いた。
「総大将が真っ先に戦線離脱!?」
「信じられねェぜ!!」
琴乃は頷いた。
「――そして、新撰組は海路で二隻に分乗し、江戸へ帰還していきました。 それに伴い、戊辰戦争の戦場は 大坂から少しずつ北へと移っていきました」
「…琴乃さんは江戸へ行ったの?」
「…
「…そうなんだ」
「…“その時”と言う事は その後 江戸へ行ったと言う事でござるか?」
「…はい。 …慶応四年 閏四月八日から三日間、三条大橋にて 板橋で斬首された、局長 近藤 勇さんが晒し首となり、京都の人々にとって時代が変わったことを知らせるものとなりました…」
「……晒し首…」
琴乃は瞳を伏せた。
「…お世話になった方の酷い変わり様を見て 私は泣き崩れ、そして 決心しました…。 …“私だけ平和に過ごしている訳にはいかない”…と――…」
琴乃は顔を上げて 蒼紫たちを見た。
「――そして 私は梅さんにお別れを告げ、江戸に向かいました。 …が、新撰組は既に江戸を離れてしばらく経った後でした……。 …そんな中、新撰組の情報を集めていると 一番隊組長 沖田 総司さんが療養している事を聞きました」
「!」
拙者と闘っている時に 口を出してきた斎藤が“肺を病んでいる”と言っていたな…
「私はすぐに沖田さんが療養している、植木職人の柴田 平五郎さんの家を訪ねました―――…」
「ごめん下さい」
【はい】
奥から平五郎が出てきた。
「こちらですよ」
事情を話した琴乃は、平五郎に沖田が寝ている部屋へ案内された。
「懐かしい声がしたと思ったら 貴女でしたか」
「沖田さん!」
「お久しぶりですね。 またお会いできて嬉しいです」
「私もです!」
琴乃と沖田は笑い合った。
「…明るい性格のせいか 一見元気そうに見えた沖田さんでしたが…、かなり衰弱していて 吐血を何度もしていました…」
「恐らく 労咳ね…」
「…はい。 その後、私は沖田さんの看病をする為、お願いをして 柴田 平五郎さんの家で住ませて頂く事になりました…」
琴乃は瞳を伏せた。
「…沖田さんには何度も、“僕の事より 斎藤さんのもとへ向かった方がいいんじゃないですか?” と言われましたが、今 私が江戸を離れてしまったら もう沖田さんには会えない気がしたもので……」
「……不治の病でもあるからな…」
「……はい」
「「「………」」」
「…でも 少しして、江戸に残ったことにより 懐かしい人に会えました―――…」