4.偲ぶ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――慶応三年 十二月九日、王政復古の大号令により将軍職が廃止となった。
慶応三年 十二月十八日、伏見への帰路にて 近藤が元御陵衛士によって襲撃された。
肩に重傷を負った近藤は、肺を患っている沖田と共に 治療をする為大坂に下る事になり、土方が新撰組の指揮をする事になった。
それから数日して、琴乃は土方に呼び出された。
「琴乃です」
【入れ】
「失礼します」
琴乃は土方の部屋の襖を開いた。
部屋の中には組長たちが全員揃っていた。
「………」
どうして 皆さんが……?
「琴乃」
「!」
琴乃は土方を見た。
「ここへ座れ」
「……はい」
琴乃は土方の部屋に入り 土方の前に座った。
「単刀直入に言う」
「……はい」
琴乃は姿勢を正した。
「「「………」」」
「…藤田 琴乃、新撰組から直ちに離隊しろ」
「!!?」
琴乃は目を見開いて 驚いた。
「待ってください! 私は…「これは局長命令だ!!」」
琴乃は驚き 黙り込んでしまった。
「…これは俺の独断の意見ではない」
土方は組長たちを見て 琴乃に視線を戻した。
「ここにいる組長 全員、そして 大坂に向かう前、近藤さんも総司も合意した答えだ」
「………」
琴乃は斎藤を見て、土方に視線を戻し 瞳を伏せた。
「……わかりました――…」
その後、琴乃は土方からこれからの生活は一瀬 梅が見てくれる事等を言い、そして 最期に、これから一切 新撰組に近付かない事を押された。
その日の内に琴乃は身支度を済ませ、別れが惜しくならない様に自分の部屋に手紙を残し、夜 こっそりと屯所を出た。
「…お世話になりました」
琴乃は屯所の門の前で頭を下げた。
そして…さようなら―――…
琴乃は一瀬 梅の家に向かって歩き出した。
【挨拶なしにいなくなるつもりか?】
「!」
前方には斎藤と永倉と原田が立っていた。
「……斎藤様…永倉さん…原田さん…」
「全く 夜の一人歩きは危険だとわからんのか…」
「……すみません」
琴乃は瞳を伏せた。
「……言葉を交わしてしまうと…別れ惜しくなってしまうかと思って……」
「…そう寂しい事言うなよ 琴乃ちゃん…」
「そうだよ。 まあ これが別れだとは思わないけどね」
「……はい!」
その後、永倉と原田と少し話した琴乃は、永倉と原田と別れ 斎藤と二人きりで一瀬 梅の家に向かって歩いていた。
一瀬 梅の家までの道中、琴乃と斎藤は無言だった。
このまま…ずっと着かなきゃいいのに―――…
そして、一瀬 梅の家であるわらび餅屋さんの前に着いた。
…な訳ないのにね……
琴乃は瞳を伏せた。
「琴乃」
「!」
琴乃は名前を呼ばれた事に驚き 斎藤を見上げた。
斎藤は悲しそうな目で琴乃を見ていた。
「…斎… !」
斎藤の名を呼び終え前に、琴乃は斎藤に抱きしめられていた。
「……斎藤様…?」
「…何も言うな」
「……っ…」
琴乃は斎藤に体を預け 涙を流した。
…貴方と離れるなんて……死ぬ程辛い――…
琴乃は斎藤の着物を強く掴んだ。
斎藤は驚き 琴乃を見た。
…本当は…
斎藤は琴乃の顎を指で上げさせた。
琴乃の瞳は涙で潤んでいた。
…本当は傍にいたい――…
斎藤は琴乃の結ってある髪を解いた。
そして、顔を近付け、琴乃の唇に自分の唇を重ねた。
…ずっと…お傍に――――…