4.偲ぶ
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――慶応三年 十月十四日、幕府が政権を天皇に返す 大政奉還をし、翌日 幕府側は勅許を得た。
“御陵衛士”の間者として加わっていた斎藤の報告により、伊東の近藤勇ら暗殺計画を聞いた近藤たちは、先に伊東を暗殺する事にした。
近藤は、活動資金の件を含めて国事について意見を交換したいと申し入れ、近藤の妾邸に伊東を招いた。
そして、泥酔した伊東は帰り道、新撰組の刺客によって暗殺された。
伊東の暗殺を成功させた新撰組は、残る御陵衛士をおびき出し 一掃する為に伊東の遺体を七条油小路に放置した。
隊士を指揮することになったのは、永倉と原田だった。
斎藤が御陵衛士の間者をしていた事を知らない琴乃は、斎藤が七条油小路に来るかもしないと思い 物陰に隠れていた。
駕籠を雇って来たのは、藤堂たちだった。
藤堂さん…!
その時、一発の銃声が轟き、潜んでいた新撰組が一斉に襲いかかった。
そして 合図と同時に藤堂は背後から斬られた。
「藤堂さん!!」
琴乃は物陰から飛び出て 藤堂に向かって駆け寄った。
「「琴乃!?」」
琴乃がいた事に気付かなかった永倉と原田は目を見開いて驚いた。
間に合った…!
だが、琴乃の目の前で 藤堂は振り向きざまに顔面を斬られた。
「!?」
琴乃の目が大きく見開かれた。
藤堂の体は力なく地面に横たわった。
「藤堂さんっ!? 藤堂さんっ!?」
琴乃は藤堂の体を揺らした。
琴乃の瞳から流れた涙は藤堂の顔を濡らしていった。
「……琴乃…」
「!」
琴乃の頬に藤堂の手が当てられた。
「藤堂さんっ!」
「…辛い思いさせて…ごめん…」
琴乃は首を横にぶんぶん振った。
「……最期に……琴乃に会えて…よか…った……」
藤堂の手が琴乃の頬から力なく落ちた。
「藤堂さん…っ!? いやああぁああぁ―――!!!」
琴乃の泣け叫ぶ声が七条油小路に響き渡った。
これが、慶応三年 十一月十八日、油小路の変であった――…
琴乃はあまりのショックに 気を失ってしまった。
「死ねっ!」
横たわっている琴乃に 御陵衛士の一人が刀を振り下ろそうとしていた。
「「琴乃!?」」
その瞬間、琴乃を狙っていた御陵衛士の一人が力なく倒れた。
「お お前は――…」
【後は頼みます】
御陵衛士の間者としての役目を終えた斎藤は、気を失っている琴乃を抱き上げて 新撰組の屯所に戻った。
「斎藤!」
土方は抱き上げられている琴乃に気づいた。
「…何があった?」
「後で話します」
斎藤は琴乃の部屋に入り、琴乃を寝かせた。
「……なんでお前は無茶ばかりするんだ――…」
藤堂の死を目にし、気を失っていた琴乃が目を覚ました。
「……ん…」
【目が覚めたか?】
「!」
何度も聞いた声に琴乃は飛び起き 声の主を見た。
「……どうして…?」
琴乃の瞳から涙が流れ落ちた。
斎藤は微笑した。
そして “御陵衛士”の間者として加わっていた事等を話した。
「……そうだったんですね…」
…よかった…
……でも…藤堂さんは……
琴乃の瞳から涙がぽろぽろと流れ落ちた。
「………」
斎藤は琴乃を抱きしめた。
「お前が責任を感じることはない」
「……でもっ……私は…っっ…」
琴乃は声をあげて泣き出した。
斎藤は琴乃が泣き止むまで 抱きしめてくれていた。
琴乃をこれ以上 巻き込むわけにはいかないな―――…