4.偲ぶ
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藤堂に後押しをされた琴乃は、お守りを渡しに 斎藤の部屋を訪れていた。
「斎藤様 いますか?」
【後にしろ】
【あら 私の要件はもう終わりましたけど?】
「!?」
伊東さん…!?
【遠慮なさらないでください。 隊士など待たせておけばいいんですから】
【じゃあ もう少しだけ…】
「……っ…」
悲しくなってきた琴乃は斎藤の部屋から立ち去った。
益々 斎藤様が伊東さんと親しくなっている気がする―――…
「琴乃!」
「!」
琴乃が顔を上げると 前方から永倉と島田が歩いてきた。
「元気ねェみたいだけど どうした?」
「……いえ…」
「……よし! こう言う時は甘いもの 食いに行くぞ!」
永倉は琴乃の左手を引いて 歩き出した。
「え ちょっと…!」
「島田」
「はい。 行ってらっしゃいませ」
琴乃は永倉に連れられ、京都の街中を歩いていた。
「永倉さん! 私 まだ山崎さんから外出の許可を…「気にすんなって!」」
琴乃は驚いて 永倉を見上げた。
「山崎は心配性だからな。 特に琴乃ちゃんは女の子だから 完治するまで許可しないつもりかもしれねェぞ!」
「……え!?」
「別に戦いに行く訳じゃねぇんだし、それに ずっと屯所にいたら 息も詰まるだろ?」
「………」
琴乃は瞳を伏せた。
「…皆さんが仕事しているのに…私だけ 休んでいるのが……」
「ははっ! 琴乃は真面目だな」
永倉は琴乃の頭を撫でた。
永倉に連れてこられたのは、琴乃が先日助けた 一瀬 梅が営むわらび餅屋さんだった。
「……わらび餅…」
もしかして 以前頂いた……?
琴乃と永倉はわらび餅屋さんに入った。
「あら 永倉さん」
奥から梅が出てきた。
「!?」
琴乃はおばあさんを見て驚いた。
「…貴女は…先日の……」
梅は頭を下げた。
「助けて頂き ありがとうございました」
「……いえ…隊務として 当然の事をしただけですから…」
なんだろう…
…この人の雰囲気…誰かに似てる――…?
その後、琴乃と梅は自己紹介をし合った。
琴乃と永倉は、助けてくれたお礼にと わらび餅を頂いていた。
「俺まですみません」
「構いませんよ。 新撰組の皆さんには感謝しきれませんから…」
「……?」
琴乃は永倉を見た。
永倉は、梅の亡くなった旦那と新撰組の前の壬生浪士組の時から親しい関係だった事を話した。
「――さてと 俺はそろそろ行こうとするかな」
そう言いながら 永倉は立ち上がった。
「……じゃあ 私も… !」
そう言って 琴乃も立ち上がろうとしてが、永倉に制止させられた。
「琴乃はゆっくりしてな」
「……でも…」
「大丈夫。 こいつが付き合ってくれるからさ」
そう言って 永倉はわらび餅屋さんの扉を開けた。
「!」
開いた扉の向こうには斎藤が立っていた。
永倉と島田が去り、わらび餅屋さんには琴乃と斎藤が向かい合って座っていた。
梅は再び お礼としてわらび餅を出してくれた。
「…梅さん 先程頂いたのに悪いですよ…」
「気にしないでください。 お礼としてこれくらいしかできなくてすみません」
「…そんな事っ…!」
梅は微笑んだ。
「では ごゆっくり」
梅は一礼して 奥に戻っていった。
「……あ…」
琴乃は梅を引き止めようとした手を下ろした。
「…人の厚意は素直に受け取っておくものだ」
そう言って 斎藤はわらび餅を食べた。
「! ……はい」
琴乃はわらび餅を食べ始めた。
しばらくして 琴乃と斎藤はわらび餅屋さんを出た。
空には雪が舞っていった。
「……っ…」
琴乃はあまりの寒さに体を縮めた。
その瞬間、琴乃の体に着物が羽織らされた。
琴乃は驚き 羽織らされた着物を見ると、斎藤が羽織っていたものだった。
琴乃は斎藤を見上げた。
「……風邪 引くなよ」
「……ありがとうございます」
その後、琴乃と斎藤はお互いに無言だった。
斎藤様 最近口数が減ってきた気がする…
…でも…とても優しい――…
――結局、お守りを直接渡すのが恥ずかしかった琴乃は、後日 借りた着物を返す時にこっそりと忍び込ませるのだった―――…