4.偲ぶ
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【ごめん下さい】
次の日のお昼前、屯所の前に 琴乃が昨日助けたおばあさんがいた。
そこにちょうど島田が通りかかった。
「梅さん!」
「ああ 島田さん。 こんにちは」
琴乃を助けたおばあさんは、島田がおすすめのわらび餅のお店の店主で、一瀬 梅と言う名前だった。
「屯所まで訪ねてくるなんて どうかされましたか?」
「…実は…昨日 こちらの方に助けて頂いて…」
「!」
昨日…って事は、もしかして 琴乃さん……?
島田は琴乃の部屋に梅を案内した。
「……私なんかを助ける為に…こんな怪我をされてしまって…」
梅の瞳に涙が浮かんだ。
「…梅さん」
島田は梅の肩に手を置いた。
「……ん…」
琴乃が目を覚ましたのは それから三日後だった。
「気がついたか?」
謹慎処分が解除されていた斎藤は 琴乃の部屋にずっといてくれていた。
「……斎藤様…」
「起きるな。 寝ていろ」
「……すみません」
起き上がろうとした琴乃は横になった。
「…傷はどうだ?」
「……まだ痛みます…」
「だろうな」
琴乃は弱々しく微笑んだ。
「――全く 人助けをして自分が怪我してたら世話がないな」
斎藤は傍らに置いてある 琴乃の折れた刀を見た。
「おまけに ご丁寧に刀まで折られて」
「……すみません」
琴乃は申し訳なさそうに瞳を伏せた。
「……刀の件、近藤さんに謝っておけよ」
少しからかい過ぎたか…
「……はい」
「………」
斎藤は琴乃の頭に手を置いた。
「……とりあえず よくやったな」
「!」
琴乃は驚き 斎藤を見た。
斎藤は穏やかな表情をしていた。
「……はい!」
琴乃は笑顔になった。
その後、斎藤は琴乃の部屋を去っていった。
「……あ…!」
琴乃はお守りを渡すのを忘れてしまった事に気付いた。
また今度でいいかな―――……
それから 琴乃の傷は少しずつ癒え、屯所内を出歩ける様になった。
…が、未だにお守りを渡せずにいた――…
右腕がまだ使えない琴乃は、毎日 斎藤に髪を結ってもらい、背中越しにさらしを巻いてもらっていた。
【その様子だとまだ渡せてないんだな?】
「!」
縁側に座っていた琴乃は顔を上げた。
「藤堂さん!」
藤堂は笑いかけた。
「傷はもう大丈夫なのか?」
「はい。 …あの…助けてくださってありがとうございました」
琴乃は頭を下げた。
「…別に俺は何もしてないって! …だから、顔 上げてくれよ」
琴乃は顔を上げた。
「…藤堂さん…」
藤堂は笑った。
「――で さっきの質問の答えだけど…」
琴乃は顔を伏せて 頷いた。
「……時間が経つにつれて 渡しづらくなってしまって……」
「ははっ! だろうな!」
「……笑い事じゃないですよ…」
「悪ィ 悪ィ」
「……もう…」
「…でもさ、折角買ったんだから ちゃんと渡してあげなよ。 きっと 斎藤君も喜んでくれるからさ!」
「……だと いいですけど」
「大丈夫だって! ほら 行ってこい!」
藤堂に背中をぽんっと叩かれた琴乃は縁側から立ち上がらされた。
「今 行くんですか!?」
「“善は急げ”って言うだろ!」
「…でも 急な気が…!」
「いいから 行ってこいって!」
「……はい!」
琴乃は笑った。
「じゃあ 行ってきます」
「琴乃」
琴乃は振り向いた。
藤堂は悲しそうな目をしていた。
「……藤堂さん…?」
「! 何でもない! ちゃんと渡してこいよ」
「……はい!」
琴乃は斎藤に贈り物を渡しに 部屋に向かっていった。
「………」
藤堂は顔を伏せた。
琴乃は…俺がいなくなったら 寂しいって思ってくれるのかな―――…?