4.偲ぶ
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――平穏な日々が続き…江戸への隊士募集から一年が経とうとした、慶応二年 四月一日、七番隊組長 谷 三十郎が殺されているという情報が屯所に入った。
そして、その日 当番だった斎藤が雨に濡れて屯所に帰ってきた。
「お帰りなさい」
「……ああ」
「!」
琴乃は斎藤の袖を掴んだ。
「…なんだ?」
琴乃は顔を斎藤の袖に近づけた。
「……どこかお怪我をされていませんか?」
「?」
琴乃は顔を上げた。
「……微かに血の匂いが…」
「!」
鼻が利く様だな…
斎藤は袖を払った。
「…遺体の血が付いたんだろう」
「……ならいいのですが…」
斎藤は歩き出した。
俺は今まで、新撰組内部での粛清役を多く務めてきた…
その事を話せば こいつは心配して俺を止めようとする……
……俺は…琴乃に無用な心配をさせたくない―――…
慶応二年 六月七日、第二次長州征伐が勃発した。
斎藤たちは戦場に出向き、琴乃は池田屋事件からずっと体調の優れない沖田と共に 屯所に残っていた。
琴乃は沖田と共に縁側に座っていた。
「全く 近藤さんも土方さんも過保護過ぎなんですよ…。 少し咳をしてるくらいで屯所に残れなんて…」
「それだけ沖田さんを心配しているんですよ」
「……そうですね…」
沖田は瞳を伏せた。
…僕の病気は治らないと言うのに―――…
「沖田さんが元気になったら 私も闘いに連れて行ってもらえますかね?」
「……それはどうでしょう?」
「…そんな…」
琴乃は項垂れた。
「…私も新撰組の役に立ちたいのに……」
「琴乃さんは新撰組にいてくれるだけで十分だと思いますよ」
「…え…?」
「琴乃さんがいれば みんな笑顔になれますし、頑張ろうと言う気持ちになりますから」
そう言って 沖田は笑いかけた。
「……沖田さん…」
琴乃は笑みを返した。
「ありがとうございます」
僕は……あとどれくらい…貴女とお話ができるんだろうか―――…?
第二次長州征伐として、圧倒的な兵数をもって長州藩内に攻め入った幕府軍、新撰組であったが、攘夷を捨て外国から近代兵器を取り入れ 軍備の強化をした長州軍は各方面で連戦連勝をした。
そして、慶応二年 七月二十日 徳川 家茂が亡くなり、慶応二年 八月二十一日、長州征伐中止の勅許が出され、事実上 幕府側が敗退したする形になった―――…
――年が明け…
慶応三年 一月四日、伊東に誘われ 一日から島原に繰り出し、隊規を破った斎藤と永倉と伊東が、土方に連れられて屯所に帰ってきた。
切腹を免れた斎藤たちであったが、謹慎処分となった。
琴乃は土方の部屋で謹慎させられている斎藤を訪ねた。
「斎藤様 心配しましたよっ!」
琴乃は今にも泣き出しそうだった。
「……悪かった」
「…もう 無茶な事はしないでください…」
「…それは約束できん」
「!」
琴乃は瞳を伏せた。
「……どうして 私に関わるなと言ったのに…、伊東さんと関わられるんですか……?」
琴乃は右手を左手で握り締めた。
「…とても心配です…」
「………」
土方は琴乃を部屋から去らせた後、斎藤から伊東の動向を聞いていた。
「――やり過ぎだ と言いてェところだが…ご苦労だったな 斎藤」
「……いえ」
「……それで お前が予想している、伊東の離隊が実際に起きたとして……琴乃はどうするつもりだ?」
「……彼女は…新撰組の方で預かってください」
「! ………」
「…お願いします――…」
俺はあいつを危険な目に合わせたくない――…