4.偲ぶ
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「…琴乃…俺はいつもお前を見守っている――…」
夜中、琴乃は目が覚めた。
「…また同じ夢…」
一様の話を皆さんにしてから 毎日の様に見る…
…貴方が会いに来てくれる夢……
琴乃は瞳を伏せた。
「…一様―――…」
琴乃たちは 新・葵屋が完成して、寄宿していた白べこから移動していた。
そして、琴乃は蒼紫と共に 奥の間で座禅を組むのが日課となっていた。
座禅の途中、 斎藤の夢を見る事によって 睡眠不足になっていた琴乃は眠ってしまっていた。
そして 琴乃は隣で座禅している蒼紫にもたれ掛かった。
「………」
蒼紫は眠っている琴乃に触れようとした。
が、琴乃に着物を掴まれた。
「……琴乃?」
「……何処にいるのですか……一様……?」
眠っている琴乃の瞳から一筋の涙が流れた。
「! ………」
操が断られたようだが…仕方あるまい―――…
後日、蒼紫は内密に、翁と協力し 斎藤の生死を突き止めることにした。
――そして 数日後、斎藤の生存を確認し 居場所を突き止めた。
蒼紫は斎藤と会った。
「まさか お前に呼び出されるとはな…」
「…妹の為だ」
「フン。 まだ妹の実感もないんだろうがな…」
「………」
斎藤は微笑した。
「――なぜ 琴乃の前に姿を現さない?」
「お前には関係ない事だろう?」
「……琴乃の辛い顔を見ているのは…忍びない」
「………」
その頃、琴乃は薫と話していた。
「近々、東京に帰ろうと思うんだけど、琴乃さんはどうしますか?」
「……随分長くお世話になってしまいましたからね…」
「…ええ。 …それに…剣心にとって 京都は苦い思い出の街でもあるから…」
「…そうですね……」
琴乃は瞳を伏せた。
「琴乃さんなら 新・葵屋にお兄さんもいる事だし、まだ居てもいいかなと思うんだけど…」
「…私は――…」
斎藤は蒼紫に背を向けた。
「琴乃の事はよくわかっているつもりだ」
「………」
斎藤は横目で蒼紫を見た。
「最近会ったばかりのお前と違って、琴乃との付き合いは長いからな――」
その後、斎藤は立ち去っていった。
「……掴み所のない男だ――…」
数日後、琴乃たちが東京に帰る日がやって来た。
「色々と本当にお世話になりました」
「うむ。 元気での」
琴乃たちは新・葵屋の前で操たちと別れを惜しんでいた。
「翁さん…蒼紫お兄さんはいつもの所ですか――?」
琴乃たちは、琴乃と蒼紫が終日 禅を組んでいた 新・葵屋の奥の間にやって来た。
蒼紫は背を向けて 禅を組んでいた。
「蒼紫――拙者たちはこれでお暇するでござる」
「………」
「…機会があればそのうち 酒でも飲み交わそう」
「俺は下戸だ。 酒は飲めん」
「そうか……」
蒼紫は少し振り返った。
「…茶の湯なら いずれつき合おう」
人を寄せ付けない雰囲気だった蒼紫が少し心を開いてくれた様で、琴乃たちの顔が明るくなった。
剣心たちが先に表に出ていき、奥の間に琴乃と蒼紫が残っていた。
「蒼紫お兄さん…お世話になりました」
琴乃は頭を下げた。
「…ああ」
「……じゃあ 私も、もう行きますね」
琴乃は一礼して 奥の間を出ようとした。
「琴乃」
琴乃は名前を呼ばれ 立ち止まった。
蒼紫は立ち上がり 琴乃の前に立った。
そして 琴乃を抱きしめた。
「…蒼紫お兄さん…?」
「………」
「………」
琴乃は蒼紫を抱きしめ返した。
その後、蒼紫と別れた琴乃は剣心たちに合流し、琴乃たちは東京へ帰っていった。
その様子を張と斎藤が物陰から見ていた。
「……いいんですかい」
張は横目で斎藤を見た。
「“話す必要なし”と言われたさかい、この間は伏せといたけど ああ見えても連中、あんさんの事 結構気にしてると思いまっせ。 それに…」
張は組んでいた腕を解いた。
「あんさんの奥さんなら尚更…」
「琴乃なら俺がいなくてもやっていける」
斎藤は微笑して言った。
「……あんさん 楽しんでる様に見えるんやけど…」
「…気のせいだ。 …ただ 昔を思い出していただけだ…」
「…昔?」
斎藤は煙草に火を付けた。
離れ離れになった、戊辰、西南の時の事を――…
斎藤は煙草を吸った。
「それに 抜刀斎とは志々雄一派の殲滅の為に一時的に共闘しただけの事、任務が完了すればそれまでだ」
「そんなもんスか?」
「フン。 だが、互い 闘いの中に身を置く宿命。 機会があればどこぞの修羅場で鉢合わせる」
斎藤は煙草の煙を吐き出した。
「その時は敵同士で相対せれば言う事はない。 さすれば今度こそ遠慮なく 幕末からの勝負に決着がつけられる」
そう言った 斎藤は不気味な笑みを浮かべた。
「………あんさんが生き延びた事は 抜刀斎にとってはとんでもない不幸やな」
斎藤は微笑し 煙草を指で弾いた。
そして 背を向けて歩き出した。
「さあ行くぞ。 次の任務は 既に始まっている」
もうしばしの辛抱だ…
今の任務が一段落したら 迎えに行く…琴乃――…