3.恋慕う
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琴乃の部屋には斎藤と近藤だけが残っていた。
「………」
「………」
斎藤は沖田に言われた言葉を思い返した。
「琴乃さんは斎藤さんに巡回に連れて行ってもらえる様に こうやって無理して稽古していたんですから―――…」
馬鹿な奴だ……
…どうして 俺がお前を連れて行かないのかわからないのか……
「斎藤」
「何でしょう?」
「琴乃を巡回に連れて行ってあげたらどうだ?」
「……それは局長命令ですか?」
「命令ではない。 …だが このままでは…この子は また同じ事を繰り返すぞ…」
「………」
「お前が琴乃の事を心配しているのはよくわかっている。 それでも 彼女は、表向きでは新撰組の隊士なんだし、お前が側にいれば安全だろう?」
「……私が側にいれば安全とは言い切れませんが……琴乃が隊士と言う事はわかっているつもりです…」
近藤は斎藤の肩に手を置いた。
「そう 心配するな。 彼女はもう 自分の身は自分で守れるくらいの力量は付いている。 それは一番近くにいるお前がよくわかっているだろう―――?」
近藤も去り、琴乃の部屋には斎藤だけが残っていた。
「……ん…」
しばらくして 琴乃が目を覚ました。
「気づいたか?」
「…斎藤様…」
琴乃は上体を起こそうとした。
「起きるな。 寝ていろ」
「……すみません」
琴乃は横になった。
「山崎さんを呼んでくるから 待っていろ」
斎藤は立ち上がろうとした。
が 琴乃に腕を掴まれた。
「…なんだ?」
「……行かないで…」
「!」
斎藤は座り直した。
「…ありがとうございます…」
「…体調はどうだ?」
「…大丈夫です」
琴乃は弱々しく笑った。
「無理に笑うな」
斎藤は琴乃の頭を愛おしそうに撫でた。
あ…斎藤様の手…落ち着く―――…
その後、琴乃は再び 眠ってしまった。
幸せそうな寝顔で―――…
次の日の朝、琴乃は寝坊した。
「やばいっ!」
琴乃は直ぐに髪を結い、着替えを済ませた。
そして 襖を開けた。
「「「琴乃(さん、ちゃん)!!」」」
琴乃の部屋の前では近藤たちが立っていた。
「皆さん! !」
琴乃は壁に寄り掛かっている斎藤に気づいた。
斎藤は微笑した。
「寝坊してしまって すみません!」
琴乃は頭を深々と下げた。
「気にしなくて大丈夫だよ。 なぁ 歳?」
土方は頷いた。
「…ありがとうございます…」
「そんな事より、琴乃 大丈夫か!?」
「“そんな事”と言う事はないですが…、琴乃さん 具合はどうですか?」
「はい。 もうすっかり良くなりました」
「顔色もいい様で 安心しました」
「山崎さん 看病してくださってありがとうございました」
「…僕が看病したのは最初の方だけで、あとは斎藤さんが…」
そう言って 山崎は斎藤を見た。
琴乃はつられて 斎藤を見た。
斎藤は視線を逸らした。
琴乃は斎藤の前に立った。
「看病してくださって ありがとうございました」
そう言って 琴乃は頭を下げた。
「……自分の隊の隊士を面倒を見るのが 組長の仕事でもあるからな」
斎藤は琴乃の髪を撫でた。
「……斎藤様…?」
「……これからは巡回連れて行ってやるから、もう無茶はするな」
「……え…」
琴乃は驚き 斎藤の顔を見ていた。
「なんだ その阿呆面は?」
「…え……だって…」
琴乃の瞳に涙が浮かんだ。
「あ 斎藤君、琴乃の事泣かしたー!」
「……私は別に…」
「よしよし」
原田は琴乃の頭を撫でた。
「よかったですね 琴乃さん」
「……はい!」
琴乃は涙を浮かべなから 満面の笑みを浮かべた。
…それから…一様との距離が少しずつ近づいていったんだ―――
「斎藤の方が琴乃の事を気に入っていたって事か!」
「ちょっと意外…」
「あの不良警官 女に興味なさそうだものね」
恵の言葉に操たちは頷いた。
「………」
剣心は黙り込んでいた。
「剣心?」
「! 大丈夫でござるよ」
「…そっか…琴乃たちと剣心は敵同士だったんだよな……」
「…そうですね」
琴乃は剣心を見た。
「…剣心さんにとっては少し辛い話だったかもしれません。 すみません…」
剣心は首を横に振った。
「敵同士とは言え、仲間同士の信頼関係があったのは 共通する部分でござったな…と思っていたでござるよ」
「……はい」
琴乃は瞳を伏せた。
「…その後、池田屋事件で一躍脚光を浴びた新撰組の名は広まり 有名になっていきました。 ……でも…その時はまだ思っていませんでした……一様たちと別れが来るなんて―――…」