3.恋慕う
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池田屋事件の後、琴乃は早起きして 稽古に取り組む様になっていた。
【琴乃ちゃん 朝早くから精が出るね】
「!」
琴乃は振り返り 声の主を見た。
「原田さん! おはようございます」
「おはよ」
原田は縁側に座って 琴乃の稽古をする姿を見ていた。
琴乃は原田の視線が気になり ちらっと原田を見た。
「ん? …俺がいると気が散るか?」
琴乃は首を横にぶんぶん振った。
「そう言う訳じゃなくて…、ずっと無言で見ていられると 恥ずかしいと言うか…」
「…あ それは悪かったな…。 …琴乃ちゃんの刀を振る姿、無駄がなくて 綺麗だったからさ!」
そう言って 原田は笑った。
「琴乃ちゃん、そろそろ八時になるから 準備した方がいいぜ」
「………」
少し 頭痛いな…
「琴乃ちゃん?」
「………」
…稽古 少しし過ぎちゃたかな……
「琴乃ちゃん!」
「! はい!」
琴乃は驚き 原田を見た。
「…そろそろ八時になるぞ」
「あ もうそんな時間ですか!?」
琴乃は刀を鞘に収めた。
「私 体拭いてきます!」
「…ああ。 じゃあ また後でな」
「はい!」
琴乃は急いで自分の部屋に戻っていった。
「……琴乃ちゃん 大丈夫か――?」
間もなく 八時になろうとしていた頃、広間には隊士たちが集まっていた。
「……あれ? 琴乃は?」
「…最近 早く起きてたと思ってたんだけどな……」
「…とうとう寝坊したか…」
「決め付けるのは早いと思うよ 斎藤君」
【琴乃ちゃん いねェのか!?】
「「「!」」」
斎藤たちは声の主を見た。
そこには 原田が立っていた。
「原田さん 慌ててどうしたんですか?」
「琴乃ちゃんならさっき 一緒にいたんだよ! 少し様子がおかしかったから ここに来る前に部屋の前で声かけたんだが、返事がなかったから てっきりもう行ったのかと思ったんだが…」
「「「!」」」
斎藤は琴乃の部屋に向かおうとした。
その時 襖が開き 近藤たちが入ってきた。
「斎藤 おはよう。 …どうした?」
「おはようございます。 …いえ 少し」
斎藤は近藤たちの横を通り過ぎていった。
「おい 斎藤! もう八時だぞ!」
「すみません。 先にしていて下さい」
斎藤はそのまま去っていた。
「斎藤!」
「近藤さん!」
近藤たちが振り返ると 沖田たちが近藤の後ろに立っていた。
「ん? どうした 血相を変えて?」
「実は琴乃ちゃんが―――」
斎藤は琴乃の部屋の前に着いた。
「おい いるか?」
「………」
琴乃の返事はなかった。
「入るぞ」
斎藤は琴乃の部屋の襖を開けた。
「!?」
目の前の光景に斎藤は目を見開いて驚いた。
「山崎 琴乃の具合はどうだ?」
「…恐らく 暑気あたりでしょう」
山崎は布団で眠っている琴乃を見た。
「…昨日に比べ 急に気温が上がり、そんな中 水分も摂らずに稽古を続けていたものと思われます」
「「「………」」」
「………」
…琴乃……
「とりあえず、このまま体を冷やして そっとしておきましょう」
「……俺がもっと早く気づいていれば……」
原田は頭を抱えた。
「原田さんのせいではありませんよ」
原田は顔を上げた。
「隊士の体調管理をできなかった私の責任です」
「…斎藤…?」
斎藤の目は悲しそうだった。
「でも 元はと言えば 斎藤さんが悪いんですよ」
沖田の目つきが変わった。
「斎藤さんが琴乃さんを巡回に連れてってあげないから…」
「!」
斎藤は目を見開いて驚いた。
…俺が…原因――…?