3.恋慕う
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朝方、顔や浅葱色のダンダラ羽織に返り血が付いた斎藤たちが屯所に帰ってきた。
「皆さん お帰りなさい。 お疲れ様でした」
山南が屯所の前で出迎えた。
額に怪我を負った藤堂は部屋に運ばれ 山崎の手当を受けていた。
「ところで 琴乃さんは?」
「琴乃さんなら――…」
斎藤たちが縁側に行くと、琴乃が柱に寄り掛かって眠っていた。
「闘いの後の琴乃ちゃんの寝顔…一気に疲れが吹き飛ぶな」
「…全く どこで寝ているんだ…」
「あまり怒らないであげてください 斎藤君」
山南は眠っている琴乃を見た。
「斎藤君たちが帰ってくるまで起きてると、一刻程前まで頑張っていたんですけどね…。 …どうやら 限界だった様です」
「………」
「このままここで寝ていては風邪を引いてしまうかもしれません。 部屋まで運ぶのをお願いしてもいいですか 斎藤君?」
「……わかりました」
眠っている琴乃を抱き上げた斎藤は、琴乃の部屋に入った。
そして、布団をひいて 琴乃を寝かせた。
「…Zzz…」
「……相変わらず 無防備な寝顔だ…」
斎藤は琴乃の頭に触れた。
「寝坊するなよ――」
斎藤が去り 少しした後、琴乃は目が覚めた。
「……私の部屋? …ってことは……私 寝ちゃったっ!? 」
琴乃は飛び起きて、直ぐに髪を結い、着替えを済ませた。
そして 局長たちと組長の部屋を訪れた。
「……来たのはいいけど……」
どんな顔して入ればいいかな……?
普通に入っていいのかな……?
琴乃は部屋の前でうろうろしていた。
【……琴乃さん 何をしているんですか?】
「!」
琴乃は振り返った。
「山南さん! おはようございます」
琴乃は頭を下げた。
「おはよう。 よく眠れたかい?」
「……はい。 ……あの…皆さんは…?」
「…中にいるよ」
そう言った 山南の顔が曇った。
「…でも…藤堂君と沖田君がね――…」
「!?」
琴乃は襖を勢いよく開けて 部屋に入った。
「藤堂さん! 沖田さん!」
「「「!?」」」
斎藤たちが一斉に琴乃を見た。
「あ 琴乃!」
「琴乃さんは朝から元気ですね」
「……あれ? …意外と元気…?」
琴乃は山南を見た。
「若いっていいですね」
山南は悪戯な笑みを浮かべた。
「………」
もしかして…私を部屋に入れる為に……?
「琴乃ー!」
藤堂が琴乃に向かって走ってきた。
「!」
琴乃は斎藤に手を引かれ、藤堂は山南にぶつかった。
「いてっ」
「……痛いのはこちらなんですが…藤堂君?」
「!?」
いつも穏やかな山南の顔が少し怖かった。
「…斎藤様…藤堂さんが…」
「放っておけ」
「ひどい 斎藤君!」
藤堂は斎藤を睨みつけた。
「琴乃…!」
そして 藤堂は琴乃に助けを求めた。
少しして 局長たちと組長の部屋に笑い声が響き渡った。
「あんまり動かないで 安静にしてて下さい 藤堂さん」
「ああ 悪い 山崎」
「藤堂さん 怪我は大丈夫なんですか?」
「そんな心配そうな顔すんなよ! 少し斬られただけだから平気だって!」
「……でも…頭だよ…」
「大丈夫だって!」
「琴乃さんは心配性ですね」
「沖田さん! …体調の方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ」
そう言って 沖田は笑った。
【藤堂と沖田の心配ばっかりで 妬けるぜ…。 な 斎藤?】
「原田さん! …斎藤様」
「………」
琴乃は瞳を伏せた。
「……すみません。皆さんの事も もちろん心配してますよ」
それでも 藤堂さんと沖田さんの状態が悪いって聞いたから……
「でも 斎藤君はすごいよね? 今回 斎藤君 ほとんど無傷だもんね」
「私は後から駆けつけましたし、たまたま運が良かっただけですよ?」
「まあ 斎藤さんには女神がついてますからね」
そう言って 沖田は琴乃を見た。
「……え?」
琴乃は斎藤を見た。
斎藤は咳払いをした。
女神かどうかは知らんが…お前のもとに帰りたいと思った…
…ただ その一心だったんだ―――…