3.恋慕う
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
琴乃はまず新撰組の雑務から覚えていった。
――そして、ふた月が経とうとしていた…
雑務に大分慣れてきた琴乃は、時間を見ては 斎藤から剣術の稽古を受ける様になった。
「はぁっ!」
琴乃は斎藤に向かっていった。
「甘い」
斎藤は琴乃の木刀を弾いた。
「やぁっ あ」
琴乃は透かさず斎藤に向かおうとしたが、木刀が木の枝に引っかかってしまった。
斎藤は琴乃の首に木刀の切先を向けた。
「っ…!」
「俺が敵だったら お前は死んでいるぞ」
斎藤は木刀を下ろした。
「周りの環境をちゃんと把握して闘え」
「……はい」
その後、三番隊は巡回の勤務だった。
外には三番隊の隊士たちが集まっていた。
「斎藤様 私は…」
「刀をろくに扱えん奴は連れて行けん。 お前は留守番をしていろ」
「……はい」
琴乃は自分の手を握りしめた。
「……上達したら…連れて行ってくれますか…?」
「…考えておいてやる」
琴乃の顔色が明るくなった。
「はい!」
そして 琴乃は満面の笑みを浮かべた。
「行ってらっしゃいませ!」
そして 斎藤が率いる三番隊は、琴乃に見送られながら 巡察に向かっていった。
「…斎藤様が少し厳しい気がするのは…私の気のせいですか…?」
「…巡察でも命を落とす可能性はありますから、斎藤さんはただ 琴乃さんを危険な目に合わせたくないだけだと思いますよ?」
「……私はまだまだ力不足だって事…か…」
琴乃は項垂れた。
「最初の頃に比べれば 上達していると思いますよ」
「本当ですか!?」
琴乃は嬉しそうに顔を上げた。
「はい。 …それに…それは斎藤さんが一番よくわかっていると思いますし」
「……沖田さん よく斎藤様の考えている事がわかりますね?」
「組長同士 一緒にいる時間もそれなりにありますし、それに一応…僕 斎藤さんより二つ年上ですから…」
「……え!? そうだったんですか!?」
琴乃は驚きの声をあげた。
「…あはは…よく言われます。 あ 因みに、斎藤さんと藤堂さんは同い年ですよ」
「……え!? そうなんですか!?」
琴乃は再び 驚きの声をあげた。
……藤堂さんに比べると 斎藤さんの方が大人っぽい気がする…
…ただ無口なだけかもしれないけど……
「そう言えば 琴乃さんはどうして斎藤さんだけ“様”付けなんですか?」
「…あまり深い意味はないですけど……私によって命の恩人だからです」
そう言って 琴乃は笑みを浮かべた。
そう言う意味では特別な人なのかもしれない―――…
――そして
元治元年 六月五日、祇園祭―――…
攘夷志士の会合があると言う情報を聞きつけた新撰組は、池田屋と四国屋を候補にあげた。
そして、増援を待っていた。
…が、増援が来ることはなく、新撰組だけで向かう事にした。
仕方なく、局長である近藤を主として池田屋、副長である土方を主として四国屋に向かう2つの組の編成をした。
「斎藤様」
「お前はここにいろ」
「…どうして いつも私を置いていくんですか…!?」
斎藤は琴乃の言葉を無視して 歩き出した。
琴乃は斎藤を追いかけた。
「私は こう言う日の為に稽古をしてきたつもりです!」
「………」
「私は… っ!」
斎藤は急に立ち止まり 琴乃は斎藤の体に顔をぶつけた。
「なら言おう」
斎藤は琴乃の方に体を向けた。
「弱い奴は邪魔になるだけなんだよ」
「っ!?」
琴乃は目を見開いて驚いた。
その後、斎藤たちは屯所を後にし、置いてかれた琴乃は岩城升屋事件で左腕を負傷している山南と共に屯所にいた。
琴乃は縁側に座っていた。
【……落ち着かないかい…?】
「…山南さん」
「隣 いいかい?」
「…はい」
「ありがとう」
山南は琴乃の横に腰を下ろした。
「………」
「……斎藤君が気がかりかい?」
「! ……はい」
琴乃は瞳を伏せた。
「……私は…斎藤様にとって一体 何なんでしょう……」
琴乃は手を握り締めた。
「…ただの…足手まとい…なんでしょうか…?」
「そんな事はないと思うよ」
琴乃は顔を上げた。
「斎藤君は無口だから 誤解を招く事が多いかもしれないけど、彼はきっと この手薄になる屯所を任せたかったんじゃないかな?」
「!」
「…だから 斎藤君は琴乃さんを足手まといなんて思っていない。 闘いの前で気が立っていて 冷たい言葉になってしまったかもしれないけど、彼は君の事を信頼しているんだと私は思うよ」
そう言って 山南は微笑した。
斎藤様が私を信頼してくださった……
「……はい!」
琴乃は満面の笑みを浮かべた。