3.恋慕う
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
斎藤に連れてこられたのはお墓だった。
「……お墓…?」
「………」
無言で歩を進める斎藤について行くと、一つのお墓についた。
「!」
そのお墓には“藤田”と書いてあり、琴乃は両親である藤田 政吉と菊のお墓である事に気づいた。
「……っ…」
琴乃は泣き崩れた。
「………」
斎藤は琴乃の隣に腰を下ろし 頭に手を置いた。
琴乃は顔を上げて 斎藤を見た。
斎藤は普段より柔らかい表情をしていた。
その後、琴乃と斎藤は、お墓を綺麗にして 道中に購入した花を供えた。
そして 手を合わせた。
少しして 琴乃と斎藤は立ち上がった。
「お前の体に刀傷がなかったのは、お前自身の闘いの才能と、両親が体を張って守ったお蔭だ」
琴乃は顔を伏せた。
「……はい…」
斎藤は琴乃に紙片を差し出した。
「……これは…?」
「お前の母親が持っていた物だ」
「お母さんが…!?」
琴乃は紙片を受け取り 中を見た。
「…これは…」
「その紙が本当なら、お前の名は“四乃森 琴乃”と言うらしいな」
「!」
琴乃は驚き 斎藤を見た。
「もう一方を見てみろ」
琴乃は二枚目を見た。
そこには、琴乃の誕生日と共に、“武器を持たない、優しい子に育てて下さい”と言う願いが込められていた。
「…これって……」
琴乃は再び 斎藤を見た。
「……どう言う事ですか…?」
「俺が知る訳がない…」
「……そうですよね」
斎藤は体を横に向けた。
「ただ 予想できるものとして、お前は藤田家ではなく、四乃森家の娘だと言う事だ」
「!?」
琴乃は目を見開いて驚いた。
お墓を後にした琴乃と斎藤は街中を歩いていた。
琴乃は浮かない顔をしていた。
…私の本当の名前が“四乃森 琴乃”で……
…私の両親だと思っていたお父さんとお母さんは本当の両親じゃなくて……
…私の本当の両親は別にいて……
…私は…養子だったって事になる訳で……
【琴乃!】
「!」
琴乃は声がした方を見ると、巡察中だった 藤堂が率いる八番隊がいた。
「しょぼくれた顔してどうした 琴乃? あ また斎藤君にでもいじめられた?」
「……いえ…」
藤堂は琴乃の肩に腕を回した。
「可愛い顔が台無しだよ」
「!」
琴乃は驚いて 藤堂を見た。
藤堂は悪戯な笑みを浮かべた。
“斎藤君に行きつけのお店 連れて行ってもらいな―――”
藤堂たちと別れた琴乃は、斎藤に連れられお蕎麦屋さんにいた。
「………」
お蕎麦 好きなのかな……?
琴乃はかけそばを食べている斎藤を見ていた。
「何を呆けている?」
「……いえ。 …いただきます」
琴乃はかけそばを食べ始めた。
「………」
「おい」
「………」
「…おい!」
「っ!? げほっ げほっ」
琴乃は驚き そばを詰らせた。
「何をやっている?」
斎藤は琴乃にお茶を差し出した。
琴乃は一気にお茶を飲んだ。
「……ふーっ…」
琴乃は湯呑を置いた。
「……死ぬかと思いました……」
「…全く…食事を味わうって言う事は出来んのか?」
「……すみません。 …お茶 ありがとうございました」
琴乃は頭を下げた。
その後、琴乃と斎藤はお蕎麦屋さんを出た。
「ご馳走して頂いて ありがとうございました」
「……気にするな」
「………」
「……まだ悩んでいるのか?」
「…え……はい」
琴乃は瞳を伏せた。
「私はこれから…どうすればいいのかと……」
「……くだらん」
斎藤は背を向けた。
「! “くだらん”って… !」
斎藤は穏やかな表情で琴乃を見ていた。
「……斎藤さん…?」
「琴乃」
「!」
…初めて…私の名前……
「四乃森を名乗るも、藤田を名乗るも、自分の人生は自分で決めろ」
斎藤は琴乃の方に体を向けた。
「お前自身の人生だろう?」
「……はい!」
琴乃は笑顔になった。
…四乃森と言う苗字は一様しか知らないと言う事から
私はお世話になった藤田夫妻の苗字のままで過ごす事にした―――…