1.番い
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数日後、斎藤からの偽りの手紙によって剣心は呼び出されていた。
「今日はゆっくりなんですね」
「ああ」
その頃、琴乃と斎藤はお蕎麦屋さんにいた。
「お待ちどおさまぁ」
少しして 二人分のかけそばが運ばれてきた。
「わぁ いい匂い」
琴乃は満面の笑みを浮かべた。
「あら 藤田さん。 こちらの方は?」
「……私の家内です」
「まぁ 可愛らしいお方」
「……あ ありがとうございます」
琴乃は恥ずかしそうにした。
「彼女は照れ屋さんなので…そこまでにしてあげてください」
「あら ごめんなさい。 どうぞ ごゆっくり――」
「はい どうも」
店員さんは去っていった。
「それじゃあ 頂くとしますか?」
「はい」
琴乃と斎藤はかけそばを食べ始めた。
「は…じゃなくて 五郎様、これからお仕事なのに それだけで大丈夫なのですか?」
斎藤は目を開いた。
「フン。 まだ慣れない様だな」
「……はい。 ごめんなさい…」
「別に謝る事じゃない。 それより 質問の答え だったな」
斎藤は目を細めた。
「これから少し動く予定なので 軽めにね」
「…体調 崩さないでくださいね?」
「…ええ」
斎藤は再び目を開いた。
「お前もな」
琴乃と斎藤はお蕎麦屋さんを出た。
「ごちそうさまでした」
「ああ」
「お仕事 頑張ってくださいね」
「……琴乃…」
「はい?」
斎藤は懐から白色の花の簪を出して 琴乃の頭に挿した。
「!」
「…贈り物など久しくしていなかったからな」
「……一様…ありがとうございます。 …嬉しい」
琴乃は満面の笑みを浮かべた。
剣心と赤松の戦いが始まった頃、琴乃と別れた斎藤は神谷道場を訪れていた。
そして、警察と言うことで斎藤を警戒しなかった薫によって、斎藤は神谷道場の中に招き入れられた。
しばらくして、赤松を倒した剣心は神谷道場に戻って来た。
すぐに 薫によって、斎藤が待つ神谷道場に案内された。
「その様子じゃあ 赤松如きに相当 手こずったみたいだな」
斎藤は横目で剣心を見た。
「お前も随分 弱くなったもんだ」
斎藤は立ち上がった。
「十年……言葉にすればわずか二文字だが 生きてみれば随分長い年月だったな」
「……ああ……。 人が腐るには充分な長さの様だ」
「………」
斎藤は剣心に歩み寄った。
そして、会話を交わした。
「お前の言う通り十年は人を腐らせるには 充分な長さだった様だ。 不殺の流浪人などと自己満足のエセ正義に溺れおって…人斬り抜刀斎が人を斬らずにどうして人が守れる?」
「………」
「忘れたか? “悪・即・斬”…それが新撰組と人斬りがただ一つ共有した真の正義だったはず……。 今のお前をこれ以上見ているのは もはや我慢ならん」
「…お前がなんと言おうとそれでも、拙者はもう人を殺めるつもりはござらん」
「「………」」
「……そうか」
斎藤は牙突の構えをした。
「来い。 お前の全てを否定してやる」
剣心は薫に引き止められたが、言葉で安心させて 薫から離れた。
そして 斎藤と剣心の闘いが始まった。
その頃、琴乃は洗い物をしていた。
「あっ…」
パリンッ
その時、斎藤の湯呑を落として割ってしまった。
「…あ…やっちゃった……」
琴乃はしゃがんで 割れた湯呑を拾い始めた。
「一様 怒って……痛っ…」
琴乃が指先を見ると 切れて血が出ていた。
そして 琴乃の指先から地面に血が垂れた。
「………」
…あの日…一様からした血の匂い……
…胸騒ぎがする……
琴乃は家を飛び出た。