3.恋慕う
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【おい 見えんぞ】
【あまり押さないで下さいよ 原田さん】
【原田さん 少しじっとしていてくださいよ…】
琴乃、近藤、土方がいる部屋の襖をほんの少しだけ開けて 沖田と藤堂と原田が様子を伺っていた。
沖田はただ立っているだけの斎藤を見た。
「中 気にならないんですか?」
「……フン」
「人が悪いな 斎藤さんは」
沖田は琴乃の部屋に視線を戻した。
「琴乃さんが起きる前から ずーっと様子を伺っていたって言うのに…」
「………」
「え!? まじか!?」
その瞬間 琴乃の部屋の襖が開いた。
「「「!?」」」
「お前ら ここで何してる?」
襖を開けたのは土方だった。
「あーあ バレちゃった…」
沖田は原田を見た。
「原田さんが大きな声出すからですよ…」
「……だって…沖田が変な話するから…」
そう言って 原田は斎藤を見た。
「……私を見ないでくれますか?」
近藤は琴乃に視線を戻した。
「すまないな。 騒がしくて…」
「…いいえ。 とっても 仲がいいのですね」
そう言って 琴乃は微笑んだ。
幾つかの質問等に疲れてしまった琴乃は再び眠ってしまった。
斎藤たちは広間に招集されていた。
「皆を集めたのは、藤田 琴乃をどうするかを決める為にほかならない」
山南は頷いた。
「もちろん 傷が癒えるまではここに療養してもらうけど、その後の事も考えなくてはいけない」
土方は沖田を見た。
「総司によると 彼女は闘いの才能があると聞いた」
斎藤は沖田を見た。
沖田はにっこりと笑った。
土方は斎藤たちに視線を戻した。
「俺的には藤田 琴乃をこのままここで預かるって言うのも 考えている」
「「「!?」」」
斎藤たちは驚いた。
「無論 彼女の意志は尊重するつもりだ」
「一ついいですか?」
土方は斎藤を見た。
「なんだ 斎藤?」
「…彼女がここに居ると言ったら……、それは 彼女に隊士になれと言う事ですか?」
「………」
近藤は斎藤を見た。
「お前が自主的に意見するとは珍しいな」
「………」
「もちろん それに関しても彼女の意見を尊重するつもりだ」
「………」
「何か不満があるか 斎藤?」
「……いえ…」
使える人材は使う…か……
確かに彼女には才能がある……
…だが―――…
次の日、目を覚ました琴乃の部屋に斎藤たちが集まっていた。
こんなに人が集まって何をするんだろう……?
「あ」
その時 斎藤と目が合った。
私を助けてくれた人……
琴乃は会釈した。
斎藤は目を逸らした。
「!」
失礼な人…!
「琴乃」
「はい!?」
琴乃は姿勢を正して 近藤を見た。
「単刀直入に申すが、ここに居るつもりないか?」
「……え…?」
「近藤さん 言葉が足りませんよ…」
土方は琴乃に視線を戻した。
「お前は“親戚との付き合いが無く、藤田夫妻の他に身寄りがない”と言ったな?」
「……はい」
「どこかの家に養子としていくと言う事もできる。 …だが 俺的には闘いの才能がある君を手放してしまうのも惜しいと考える…」
「……闘いの才能…?」
「気づいていないと言う事は、無意識の中に闘いの才能があると言う事でしょうか」
「?」
「ああ。 …だから ここ、新撰組に残ってもらい 京都の治安維持を共にしていきたいと思っている」
「!?」
琴乃は目を見開いて驚いた。
「直ぐに答えを出してくれとは言わん。 だが…「構いません」」
「「「!?」」」
「私の命は元々 あなた方に助けて頂いたもの……。この命が役に立てるのであれば…私はここに居たいと思います」
「本当にいいんだな?」
土方の目つきが一段と鋭くなった。
「お前は本当に人を斬れるのか?」
「っ! ………」
琴乃は自分の手を見た。
…私の手で人を……
「歳 言い過ぎだぞ」
黙り込んでしまった琴乃の肩に近藤は手を置いた。
「!」
琴乃は顔を上げて 声の主を見た。
「……近藤さん…」
「人を殺めろとまでは言わない。 …人を殺めるだけが新撰組の仕事ではないからな」
「………」
近藤は笑いかけた。
「君の両親の様に 救えたはずの命をこれ以上増やさぬ様、京都の治安維持に努めてくれないだろうか?」
「………」
…京都の治安維持……
「もちろん 新撰組の世話係と言う形でも構わない」
「………」
新撰組の世話係……
「…愛する者を無くす辛さを知っている君ならきっとできると 私は思うよ」
「……山南さん…」
私の様な不幸な人をもう出さない為に…!
琴乃は手を握り締めた。
「…私…隊士となって、頑張ります!」
…お父さん、お母さん…ごめんなさい……
私は武器を取る事にします…
そして、この命を捧げて 新撰組の仕事を全うしようと思います
…親不孝な娘ですが、どうか 見守っていて下さい―――