3.恋慕う
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琴乃は蒼紫から視線を戻した。
「……でも…刀と傘では…必然的に差が出てきました――…」
琴乃は武器にしていた傘を斬られ そのまま壁に吹っ飛ばされた。
「っ!」
「おいおい やりすぎじゃねェか…」
「そうも言ってられねェだろうが! こっちだって何人もやられてるんだからな!」
道端には琴乃が気絶させた賊が数人倒れていた。
琴乃は倒れ込んだまま 荒い呼吸をしていた。
賊は倒れている琴乃に歩み寄り 前に立った。
「こいつは もう用済みだ」
そして 刀を上に振り上げた。
「死ね―――!!」
「……っ…」
…ごめんなさい……お父さん…お母さん……
琴乃は死を覚悟して目を瞑った。
その瞬間 琴乃を殺そうとした賊が倒れた。
「っ!?」
【し 新撰組だっ!!】
新撰組が現れた事により 賊たちは逃げ出していった。
新撰組の隊士たちは賊のあとを追っていった。
「斎藤さん 僕も追うんで、ここ お願いしますね」
「…ああ」
斎藤は刀についた血を払った。
「頼んだよ 沖田君」
沖田は微笑すると 賊のあとを追っていった。
「…傘でここまでやるなんて…面白い女子だ…」
琴乃の閉じゆく瞳に浅葱色のダンダラ羽織を着て 口元に笑みを浮かべている男が映った。
…私を助けてくれたの――――…?
「琴乃殿にとって斎藤は命の恩人であったのでござるな…」
「はい」
琴乃は手を握った。
「あの時 一様がいなかったら……私は…この世にはもういませんでした…。 今 こうして生きれているのも全て…一様のお蔭なんです…」
「それで その後、新撰組に所属したって事か?」
「「「“新撰組”!!?」」」
操たちは目を見開いて驚いた。
琴乃は頷いた。
琴乃が目を覚ましたのは、藤田 政吉、菊が殺害されてから一週間が経った頃だった。
「……ん…」
琴乃はゆっくりと目を開いた。
【あ 気づかれました?】
「!」
琴乃は声の主を見た。
「傷も大した事なくてよかったですね」
琴乃が眠っている布団の側には 人懐っこい笑みを浮かべた男がいた。
「僕 あなたが目を覚ましたことを近藤さん達に伝えてきますね」
沖田は立ち上がり 襖に手をかけた。
「あの」
琴乃は上体を起こした。
「…ここは…?」
「新撰組の屯所です。 すぐ戻ってきますから 少し待っていて下さい 藤田 琴乃さん」
そう言って 沖田は琴乃の部屋を出ていった。
「………」
浅葱色のダンダラ羽織は…やっぱり 新撰組だったんだ……
琴乃の脳裏に政吉と菊が殺害された日の記憶が戻ってきた。
「……そっか…お父さんとお母さんは……」
琴乃の瞳から涙が流れ落ちた。
そして 琴乃は声を殺して泣き出した。
【………】
斎藤は襖越しに琴乃の様子を伺っていた。
【失礼する】
少しして 沖田に呼ばれた近藤と土方、山南が部屋に入って来た。
琴乃は近藤たちに会釈した。
「ご両親の件、大変申し訳なく思う。 すまない」
そう言って 近藤は頭を下げた。
土方と山南も同様に頭を下げた。
「! ……そんな あなた方が頭を下げる事では…! 私の方こそ 助けていただいて感謝しております。 ありがとうございました」
そう言って 琴乃は深々と頭を下げた。
言葉では表せないくらい感謝はしてる……
…でも―――…