3.恋慕う
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「藤田 政吉は…日頃から帯刀しておりませんでした…」
「「「!?」」」
蒼紫たちは目を見開いて驚いた。
「どうして!? 帯刀の許可出てたんじゃないの!?」
「許可は出ておりました。 …でも 藤田 政吉は平和を愛していました…。 …“刀を持たない時代がいずれ来る”と――…」
「「「!? ………」」」
蒼紫たちは黙り込んでしまった。
「刀と言う武器を持っている賊の集団と、傘と言う道具しか持たない只の商人…結果はもう…お分かりだと思います……」
そう言って 琴乃は顔を伏せた。
賊の手から琴乃と菊を守るよう 壁になった藤田 政吉とは即死の状態だった。
「「お父さん(あなた)っ!!」」
政吉の体は力なく地面に横たわった。
「女たちはどうするか?」
「母親はいらん。 娘のみで構わん」
賊の集団は琴乃を守るよう 抱きしめている菊に向かってきた。
「やめてっ! どうかこの子はっ!」
「うるせっ!」
賊は琴乃と菊を放した。
そして 菊は賊に斬られた。
「あぁっ!」
「お母さんっ!!」
琴乃は地面に倒れこんだ菊に駆け寄った。
「お母さんっ!」
「……琴乃……」
菊は琴乃に触れようと ゆっくりと手を伸ばした。
琴乃は菊の手を握った。
「…ごめん…ね……」
琴乃は首を横にぶんぶん振った。
「…あなたが来てくれて本当に幸せだった……。 私たち…“本当の家族”に……なれた……わよね……」
そして 菊の手が琴乃の手から力なく落ちた。
「…お母……さん……」
琴乃の瞳から涙がボロボロ流れ落ちた。
「嫌あぁ―――――っっ!!!」
そして 琴乃は泣き叫ぶ声が静まり返った夜に響き渡った。
「…ひどい…」
「武器を持たない人を斬りつけるなんて…」
「…昔はよくある事でござったよ…」
「………。…その時、私は藤田夫妻が両親だとずっと思っていたので、“本当の家族”…と言う意味をまだ知りませんでした」
「……菊殿は…」
剣心は蒼紫を見て 琴乃に視線を戻した。
「蒼紫の両親とは知り合いだったのでござるか?」
「……恐らく 違うと思います」
「……それで」
琴乃は左之助を見た。
「なんで琴乃だけ無事だったんだ?」
「恐らく 賊は金目当て。 琴乃を売買しようと攫おうとしたのだろう…」
琴乃は頷いた。
「…蒼紫お兄さんの言うとおりです。 …賊は私をその場から連れ去ろうとしました――…」
「ほら お嬢ちゃん行こうか?」
「………」
だが 琴乃は立ち上がらなかった。
「手間 焼かせんじゃねェよ!」
賊は琴乃を立ち上がらせようとした。
琴乃は咄嗟に傘を掴み 賊の腕を薙ぎ払った。
「痛っ! 何しやがる!」
「そうムキになんなよ」
賊は琴乃を見た。
「相手は女子だ…ひっ!」
琴乃の目は憎悪に満ちていた。
琴乃は傘を構えた。
「やろうってか!」
「望むところだ!」
賊は刀を抜いた。
琴乃は一瞬で間合いを詰め 男を傘の竹で殴り倒していった。
「……その時、武器を持ったことなかった私に、そんな才能がどうしてあったのか 全くわかりませんでした…」
琴乃は蒼紫を見た。
「でも 今ならなんとなく わかった気がします……」
「………」
…血筋…か……