3.恋慕う
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琴乃は蒼紫たちに斎藤と今までに至るまでの話をし始めた。
「私は京都で苗字帯刀を許された身分の高い御用商人の家に 養子として迎えられました」
「…京都!?」
「…はい」
「………」
だから 琴乃さん、京都に詳しかったんだ……
「子供に恵まれなかった夫婦は “養子”と言う形で私を迎え入れてくれましたが、“琴乃”と言う名をそのままにして “藤田 琴乃”と名を付け、実の子供の様に大切に育ててくださいました」
「!」
…藤田…
「…それは穏やかな性格をもつ琴乃さんを見ていればわかるわよ」
「そうね」
「ありがとうございます」
琴乃は微笑んだ。
琴乃は真剣な顔つきに戻った。
「赤子の時から育ててもらった為、私の本当の名前が四乃森 琴乃である事も…、まして 血が繋がっていないなんて 考えた事もありませんでした…」
「まあ…それが普通よね…」
蒼紫たちは頷いた。
「琴乃殿 お一ついいでござるか?」
「…なんでしょう?」
琴乃は剣心を見た。
「…その御用商人の名は…?」
琴乃は瞳を伏せた。
「……“藤田 政吉”…」
「!?」
剣心は目を見開いて驚いた。
歴史にはあまり残っていないが、“藤田 政吉”と言う御用商人が賊に殺害されたと言う事件は聞いたことがあった…
…まさか 琴乃殿の育て親だったでござったとは―――…
「藤田!?」
「藤田って確か斎藤も…」
琴乃は頷いた。
「“藤田 五郎”の苗字もその藤田を取っています。 …一様…そう言う所に気を遣ってくださいましたので…」
「あのさ」
「はい?」
琴乃は左之助を見た。
「少し聞いただけだがよ…つまり 大金持ちの家の養子だったって訳だろ?」
「……ええ まあ」
「それのどこが 斎藤と関係があるんだかイマイチわからねェんだが…」
「…それは……今からお話します」
「左之助 琴乃さんは順を追って説明してるのよ。 少しは結論を我慢しなさい」
「…へいへい」
「左之助さん すみません…」
「…いや 構わねェから続けてくれ」
「はい」
琴乃は瞳を伏せた。
「……そして 月日が流れ、平穏な日々は終わりを迎えました――…」
文久四年 一月――…
琴乃 十一歳の誕生日。
その日は朝から小雨が降っていた。
藤田 政吉と藤田 菊は街中の料亭で琴乃の誕生日を祝った。
そして お店を出た時にはすっかり暗くなっており、雨も強くなっていた。
「ひどい降り様だな」
「だいぶ暗くなってしまいましたね…」
琴乃達は帰路を急いでいた。
政吉は琴乃を見た。
「楽しかったかい?」
「はい! とっても!」
琴乃は満面の笑みを浮かべた。
「琴乃 寒くない?」
「大丈夫」
そして 家まであと少しと言う、人通りがない場所を歩いていると、前方に道を塞ぐように 賊の集団が現れた。
「「「!」」」
「金を出してもらおうか?」
賊の集団は賊は刀を抜いて 琴乃たちに歩み寄ってきた。
琴乃たちは身の危険を感じ、後ろに下がった。
が、後ろにも賊の集団がいた。
「…なんだ お前らは?」
「話す義理もない」
「……っ…」
琴乃は怖くなり 体が震えた。
「大丈夫よ」
菊は琴乃の体を抱きしめた。
「――そして…賊たちは一斉に私たちに向かってきました」
「……政吉って言う人は帯刀していたんじゃないの?」
「操殿 帯刀していたと言っても、武士ではござらん政吉殿一人では 大人数を相手にするのは厳しいでござるよ……」
「……そっか…」
「「「………」」」
「剣心さん 違います」
「?」
「藤田 政吉は…日頃から帯刀しておりませんでした…」