3.恋慕う
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【蒼紫様ー! 琴乃さーん!】
「「!」」
操の声が聞こえ、蒼紫は抱きしめていた琴乃を放した。
「傘 持って来たよ!」
操が琴乃と蒼紫のいる部屋に入ってきた。
「操ちゃん!」
「二人共 立ってどうしたの? あ もしかして、今 帰ろうとしたところだった?」
「…あ うん。 そうなの…」
琴乃は蒼紫を見た。
「ね 蒼紫お兄さん?」
「………」
琴乃は蒼紫に歩み寄った。
「折角 操ちゃんが迎えに来てくれたんだから 帰りましょ?」
「……ああ」
操は笑顔になった。
琴乃たちは操の持ってきた傘をさし、禅寺を出た。
「蒼紫様 琴乃さんとお話できた?」
「……少しな」
操は笑顔で琴乃を見た。
「よかったね 琴乃さん!」
「…はい!」
琴乃は操に笑みを返した。
操ちゃんの笑顔って…心が温まる…
…まるで…
…太陽みたい――――…
――そして…
志々雄との死闘から一ヶ月が経ち、季節は初夏を迎えた――
剣心の傷が癒え 起き上がれるようになった お昼過ぎ、葵屋に張が現れた。
張は自分が警視庁の密偵になった事を言った。
「………」
張さんが一様の代理……
つまりそれは――…
そして 張は捕まった十本刀 六人のその後の処置の話をし、捕まらなかった二人は未だに逃走中である事を言った。
「………」
亡くなったのは 宇水さんだけか――…
「ああ そうそう」
張は持ってきた風呂敷を机に置いた。
「お お土産か!」
「アホ。 そんな訳ないやろ」
張は琴乃を見た。
「あんさんへのもんや」
「……私…?」
「いいから 開けてみ」
「………」
琴乃は風呂敷を広げた。
「!?」
その瞬間、琴乃は目を見開いて驚いた。
「…着物…?」
「! この簪は…!」
「…あの日、琴乃殿が落としていった…斎藤が贈ったと言う白い花の簪…」
「斎藤が!?」
「ああ。 だが まだ真新しいものでござる。 恐らく 血で汚れてしまっていたので、買い直したものでござろう」
琴乃の頬を涙が伝った。
「斎藤の荷物整理をしていたら 出てきたんや」
張は少し目を細めた。
「きっと あんさんに渡そうと思っていたんやろうな」
「!? ……っ…」
そして 琴乃は着物を抱きしめて、大粒の涙をぼろぼろと流した。
張が帰った後、琴乃はぼーっとしていた。
「琴乃殿」
「………」
「琴乃殿」
「!」
肩に手を置かれた琴乃は驚き 剣心を見た。
「…大丈夫でござるか?」
「……はい」
「顔色が悪いな」
「……蒼紫お兄さん…」
琴乃は顔を伏せた。
「……色々 考えてしまって…」
「…琴乃殿…」
「………」
張さんの言っていたのを返すと…
…一様は…警察署に姿を見せていないって事だから……
操は立ち上がった。
「とりあえず その新しい着物 着てみなよ! 新しい簪もしてさ!」
「え ええ! そうね」
「お部屋 こっち使ってな」
「……え…ちょっと…」
しばらくして、操たちに手を引かれ 奥に消えていった琴乃が戻ってきた。
「よく似合っているでござるよ 琴乃殿」
蒼紫は頷いた。
「斎藤も一応 センスはあるみたいだな」
「こら 失礼よ!」
「どっちも どっちだけどね…」
「「!」」
左之助と操は恐る恐る琴乃を見た。
「……ふふっ」
琴乃は笑った。
「琴乃さん…ごめんね!」
琴乃は首を横に振った。
「あの人はああ言う性格なので、きっと 皆さんの気に触る事を平気で言ってしまっているのでしょうから…」
「「「………」」」
図星をつかれた剣心たちは黙り込んでしまった。
「……琴乃殿は斎藤の事 よく分かっているでござるな…」
「……そんな事…」
琴乃は恥ずかしそうに顔を伏せた。
「……一様は私にとって大切な人ですから…。 大切な人の事なら何でも知っていたいと思いますし…」
「……そんだけ想われてれば あいつも幸せ者ってことか…」
「あいつには勿体ねぇけどな」
弥彦の言葉に「うん うん」と剣心たちが一斉に頷いた。
「ところでよ」
「何でしょう 弥彦さん?」
「琴乃って どう言う経緯で斎藤と結婚したんだ?」
「え?」
「こら 弥彦! 何てこと聞いてるのよ!」
「純粋に気になったんだよ! それに お前も勉強になるだろ!?」
薫は剣心を見て 弥彦に視線を戻した。
「……だからってねー!」
「構いませんよ」
「「!」」
琴乃は昔を懐かしむ顔をした。
「少し お話をしましょうか……。 …私と一様のお話を――…」