3.恋慕う
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わらび餅を食べ お茶を飲み終えた琴乃と蒼紫は、横に並び 座禅をしばらく組んでいた。
「………」
「………」
「………」
「………」
座禅なんてあまり組んだ事ないけど…、終日やってるなんて 退屈じゃないのかな……?
琴乃は横目で蒼紫を見た。
「…飽きたか?」
「! ……いえ…」
琴乃は直ぐに正面を向いて、顔を伏せた。
「…操が振り回した様だな」
「そんな事!」
声が少し大きくなってしまい、琴乃は口を手で覆った。
「…私が貴方に会いに行こうとしたら、道案内を買って出てくれたんです」
「……そうか…」
「……はい…」
「………」
「………」
操ちゃん…本当は蒼紫お兄さんと話したかったんだろうな……
…それなのに…私……
「……気持ちが乱れたな」
「!」
琴乃は姿勢を正して 深呼吸をした。
そして 蒼紫に体を向けた。
「……蒼紫お兄さん…」
「…なんだ?」
「操ちゃんと 少しずつでもお話をしてあげてくださいね」
「! ………」
蒼紫は驚き 黙り込んでしまった。
「…操ちゃん…蒼紫お兄さんの事 とても心配してますよ?」
「………」
「……だから…」
「………」
「………」
「……善処する…」
「……はい」
琴乃は微笑んだ。
「じゃあ 私そろそろ…痛っ」
琴乃は立ち上がろうとしたが、足が痺れていて立ち上がれなかった。
「…大丈夫か?」
「大丈夫で…っ!」
琴乃はバランスを崩し 蒼紫に倒れこんだ。
「ご ごめんなさいっ!」
琴乃は蒼紫から体を離した。
「気にするな。 足を見せてみろ」
「…はい… っ!」
琴乃は足を蒼紫の方へ向けた。
蒼紫は琴乃の足をマッサージし始めた。
「痛くないか?」
「…大丈夫です……」
…と言うか 少し恥ずかしい……
琴乃がしばらくマッサージを受けていると、日が暮れてきて 雨が降ってきた。
「…あ 雨……」
「……梅雨だからな…」
その頃、葵屋にいた操が 雨が降っている事に気づいた。
「蒼紫様と琴乃さん 傘持ってないだろうから、持っててあげようっと!」
操は琴乃と蒼紫用の傘も持って 葵屋を出た。
無言でマッサージを受けている琴乃と無言でマッサージをしている蒼紫の間に、雨の心地よい音が響いていた。
一様と出会ったのも…こんな雨の日の夜だったな―――…
少しして 蒼紫のマッサージのお蔭で 琴乃の足の痺れが取れた。
「…もう 大丈夫です」
「……そうか…」
蒼紫は琴乃の足から手を退けた。
「ありがとうございました」
琴乃は頭を下げた。
「…ああ」
「じゃあ 私、そろそろ帰りますね」
そう言って 琴乃は立ち上がった。
そして 琴乃は一礼して、蒼紫に背を向けて歩き出した。
「!?」
その瞬間 琴乃は後ろから抱きしめられた。
「……外はまだ雨が降っている」
「…これくらいの雨 大した事ないですよ?」
「万全じゃない体調でも 同じ事を言えるか?」
「!」
琴乃は蒼紫の腕に触れた。
「……蒼紫お兄さんは…優しいですね…」
「……“優しい”…?」
「…え だって、私の事 こうやって心配してくれているじゃないですか?」
「………」
「蒼紫お兄さんは優しい方ですよ」
そう言って 琴乃は蒼紫に笑いかけた。
「………」
…俺はまだ……お前を“妹”として見れていないのかもしれないな―――…