3.恋慕う
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琴乃は操の案内で、蒼紫がいる禅寺に向かっていた。
「操さん、道案内ありがとうございます」
「“操さん”なんて そんな堅苦しい呼び方はやめてよ! “操”でいいよ!」
操の脳裏に、蒼紫と結婚した姿を思い浮かべた。
「琴乃さんはいずれ 義妹になるんだからさ!」
「……え?」
「あ こっちの話!」
「……じゃあ、あまり 人を呼び捨てにするのは好きじゃないので、操ちゃんでもいいですか?」
「うん!」
操は嬉しそうに笑った。
道中、操は琴乃に蒼紫の話をずっとしてくれた。
「あ ちょっとそこ寄ってもいいですか?」
「……そこ?」
琴乃が示していたのは路地裏だった。
琴乃は操を路地裏にひっそりとある、わらび餅屋さんに案内した。
「こんな所にわらび餅屋さんがあるなんて 知らなかった!」
「ここのわらび餅 美味しいんですよ。 京都へ来た時はいつも食べに来てます」
琴乃は瞳を伏せた。
一様への差し入れもここで―――…
琴乃と操はわらび餅屋さんに入った。
「いらっしゃい。 あら 琴乃ちゃん」
琴乃は昔 世話になった、温厚なおばあさんの一瀬 梅に笑みを返した。
「今日は
「!?」
あいつ 今、藤田 五郎って名じゃ……
「……ええ。 色々 ありまして…」
「……そうかい。 …それで 今日はどうするんだい?」
「いつもの差し入れ用を一つと、食事用を二つでお願いします」
「あいよ。 少し 待ってなさい」
おばあさんが差し入れ用のわらび餅を包んでくれている間、琴乃と操はわらび餅を食べていた。
「美味しーい!」
操は幸せそうな顔をしていた。
琴乃は微笑した。
「…ところで 琴乃さんは京都に住んでいた事あるの?」
「……え…」
琴乃は瞳を伏せた。
「……ええ…」
「! ………」
“いつから?”とか“何してたの?”とか色々 聞きたかったけど……
…その時はまだ聞けなかった……
琴乃さんがとても悲痛な顔をしていたから―――
そして 琴乃と操は蒼紫がいる禅寺に着いた。
「ここだよ」
「とても静かな所ですね」
「……うん」
操の声が暗くなった。
「…どうしたの 操ちゃん?」
「…蒼紫様に会っても 話…出来ないかもよ?」
「……え…」
琴乃と操は蒼紫がいる部屋に入った。
蒼紫は座禅を組んでいた。
「…でしょ?」
「…そうですね」
【…操と…琴乃か…】
「「!」」
琴乃と操が蒼紫を見ると、少し振り返り 琴乃と操を見ていた。
「お邪魔をしてしまったみたいでごめんなさい。 …昨日のお礼を…」
「?」
…昨日のお礼?
琴乃は頭を下げた。
「あなたのお蔭で 心の迷いが晴れました。 ありがとうございました」
「………」
「それと こちら差し入れです。 ここに置いておきますね」
琴乃は棚にわらび餅を置いた。
蒼紫は立ち上がり 琴乃を見た。
「茶を出そう」
「…お構いなく。 もう 用は済みましたので」
「………」
「………」
「ちょっと 待った!」
「「?」」
琴乃と蒼紫は操を見た。
「そんなんじゃ ダメだよ! 24年ぶりの再会なんだよ!」
「…でも」
操は蒼紫の手を引いて 琴乃の前に立たせ、二人の手を繋がせた。
「「……操(ちゃん)…?」」
「蒼紫様の為に、琴乃さん 美味しいわらび餅も買ってくれたんだからさ!」
「………」
「二人で仲良く話くらいして! 私は帰るから!」
「操ちゃん!?」
操は振り返らず 部屋を出ていってしまった。
「………」
琴乃は蒼紫を見た。
「……そこで待っていろ」
そう言って 蒼紫は奥の部屋に入っていった。
奥の部屋から戻って来た蒼紫はお茶を点て始めた。
琴乃は蒼紫が持ってきたお皿にわらび餅を乗せた。
少しして 蒼紫は点てたお茶を琴乃に渡した。
「頂戴致します」
琴乃は正面を避けるように 椀を2度回し、そして一口飲んだ。
「結構なお点前でした」
蒼紫は穏やかな表情をしていた。