3.恋慕う
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その日の夜更け、琴乃は目を覚ました。
琴乃は障子を開けた。
空には月が浮かんでいた。
「……新月…」
琴乃は目を閉じて 願いを込めた。
どうか…一様とまたお会い出来ます様に―――…
琴乃は目を開いた。
「お願いの仕方とか違うけど…」
【起きているのか?】
「!」
琴乃は振り返り 襖の方を見た。
【…下で食事を取っていないと聞いたが…】
琴乃は瞳を伏せた。
「……あまり食欲がなくて…」
【……そうか…】
蒼紫は自分の部屋に戻ろうと 襖に背を向けた。
【夜はまだ冷える。 体に障らない内に眠れ】
そして 一歩を踏み出した。
「待って…!」
蒼紫は立ち止まった。
「…少しだけ…話相手をしてくれませんか……?」
【! ………】
蒼紫は黙り込んでしまった。
「………」
やっぱり…迷惑だったかな……
【…部屋に入ってもいいか?】
「! …はい!」
琴乃は蒼紫を部屋に招き入れた。
「………」
「………」
琴乃と蒼紫は無言で向かい合っていた。
やっぱり 無口な人なんだな…
…つい 引き止めちゃったけど……、特に話したかった事もない……
琴乃は重ねていた手を強く握り締めた。
…ただ…寂しかったから―――…
琴乃の重ねていた手に涙がこぼれ落ちた。
「!」
その瞬間 琴乃は蒼紫に抱きしめられていた。
「…蒼…「悲しいのなら泣けばいい」」
驚いた琴乃は蒼紫を見た。
「俺が兄として出来る事は…お前に胸を貸す事くらいしかできん」
「! ……っ…」
琴乃は蒼紫に身を預けて、声を殺して泣き出した。
…一様は…必ず生きてる……
…信じよう……あの人を―――…
次の日の朝、琴乃は目を覚ました。
「…私……昨日…」
琴乃はちゃんと布団をかぶって寝ている事に気づいた。
「寝かしてくれたんだ…」
琴乃は瞳を閉じた。
もう…クヨクヨするのはやめよう……
みんなに心配かけるだけだから……
そして 瞳を開いた。
私は…あの人の帰りを信じて待つ―――
決心を固めた琴乃は枕元に置いてあった、冴が直してくれた自分の着物に着替えて、初めて一階に下りた。
「「「琴乃(さん)!?」」」
朝食を食べていた左之助たちは驚いた顔で琴乃を見た。
「ご心配をおかけしました」
琴乃は左之助たちに頭を下げた。
「…もう 大丈夫なのか?」
「はい。 いつまでもクヨクヨしてられませんし…。 それに…」
琴乃は顔を上げた。
「…一様の亡骸を見るまで 信じる事にしたんです。 あの人を――」
そして 笑みを浮かべた。
琴乃は冴に歩み寄った。
「私にも朝食を頂けますか―――?」
その後、琴乃は操たちと一緒に朝食を食べ ゆっくりしていた。
「剣心さんと蒼紫お兄さんはいないんですね?」
「剣心なら まだ二階で安静にしているわよ」
「…蒼紫なら禅寺じゃよ」
あまり似ていないが…蒼紫と双子とは…
「…そうなんですか。 場所はどちらですか?」
【私が案内してあげるよ!】
「「!」」
会話に入ってきたのは操だった。
操の案内で蒼紫がいる禅寺へ向かうことになった琴乃は、まず 剣心がいる二階の部屋を訪れた。
「ここが緋村の部屋だよ」
【その声 操殿でござるか?】
「うん! 琴乃さんもいるよ!」
「剣心さん 入ってもいいですか?」
【もちろんでござるよ】
琴乃と操が剣心の部屋に入ると、上体を起こしていた剣心が笑みを浮かべた。
そして 少しの間 話をした。
「そろそろ 緋村、休んだ方いいんじゃない?」
「あ…すみません。 すっかり長居してしまって…」
「大丈夫でござるよ。 拙者も琴乃殿とゆっくり話が出来て楽しかったでござる」
琴乃と操は立ち上がった。
「じゃ 緋村、そろそろ行くね」
琴乃は頭を下げ、操と共に部屋を出ていこうとした。
「琴乃殿」
琴乃は振り向いた。
「拙者が知る限り、斎藤は闘いの中以外で死ぬとは思えんでござるよ…」
「! ………」
琴乃は笑みを浮かべた。
「はい」
剣心さん ありがとう―――