2.嘆き
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志々雄は由美の亡骸をそっと横にした。
「先に立ち上がって次の一撃を入れた方が 最後まで生き残った方が、この闘いの勝者だ!!」
志々雄の血液は凝固せずに蒸発してしまう程に体温が上昇したが、志々雄の剣気によって 再び闘場“大灼熱の間”の周囲の炎が激しく燃え上がった。
そして 志々雄はその状態で立ち上がった。
一方、剣心は仰向けに転がり 刻々と近づいてくる、本当の“死”を感じていた。
志々雄は仰向けに倒れたままにいる剣心に斬りかかろうとした。
みんなで一緒に 東京へ帰ろうね…
帰ろうね…
「剣心さんっ!!」
が、剣心は薫と琴乃の言葉で起き上がった。
「死ねない! 死ぬわけにはいかない!! 俺にはまだ 俺の帰りを待ってる人がいるんだ!! 生きる意志は何よりも…何よりも強い!!」
「………違う。 何より強いのはこの俺!! 所詮この世は弱肉強食! 強ければ生き 弱ければ死ぬ!!」
志々雄は刀を振り上げた。
「生きるべき者はこの俺だ!!!」
そして 剣心より先に刀を振り下ろした。
剣心は刀で防いだ。
「俺の糧となって! 死ね 抜刀斎!!!」
「うぐっ!」
「ついに限界を 超えられた!!」
方冶は志々雄の勝利を確信し 喜びの声をあげた。
…が、肉体的限界を超えた超高熱により 体内の脂肪とリン分が人体発火を引き起こし 志々雄は苦しみ出し、志々雄の体は大炎上した。
「「「!!?」」」
琴乃たちは目を見開いて驚いた。
「幕末の炎から出し修羅が 再び炎をまとって地獄へ還っていく…」
志々雄の炎は由美の亡骸も燃やしていった。
「フ…フフフ。 フハハハハハハハ!! ハーッハハハハハ!!!」
志々雄の高笑いが業火の中 響き渡った。
炎が消えると そこには何も残らず 消滅していた。
一人残された方治は由美が落としていった懐中時計を拾い 地面に投げつけた。
「認めぬ!! 私は認めぬ!! この勝負 志々雄様は勝っていた!!」
そして 悔しそうに地面に何度も拳をぶつけた。
「違うな。 この勝負生き残った方の勝ちだ。 強ければ生き 弱ければ死ぬ。 奴自身が言っている事だ―――…」
「過去から現在へとつながる時間の流れが…志々雄 真実に勝利を許さず 抜刀斎に味方をした…」
剣心は足元に転がっていた壊れてしまった懐中時計を拾い上げた。
「時代が…生きるべき者を選んだんだ…」
錯乱状態の方治は走り出し、剣心にぶつかって 闘場“大灼熱の間”を出て行った。
方治にぶつかられた剣心は左之助にもたれ掛かり 意識を失い、再び瀕死状態になってしまった。
「剣心さん! ぁっ!」
剣心のもとに駆け寄ろうとした琴乃は 気を失い倒れそうになった。
「琴乃!?」
「!」
斎藤は琴乃の体を支えて 顔色を見た。
「顔が青白い…失血のし過ぎだ」
方治によって 出口である甲鉄の扉が閉められていた。
「くそ 開かねェ!! “二重の極みさえ 使えりゃこんな扉!」
瀕死状態の剣心を肩で担いでいる左之助は 甲鉄の扉を拳で何度も殴った。
琴乃をここで死なせぬわけにはいかないというのに…っ!
“天翔龍閃”によって 攻撃力が皆無の蒼紫は 歯痒さに舌打ちをした。
「ちくしょう 早くしねェと剣心と琴乃が…」
「どけ」
「!」
左之助が振り返ると、抱き上げていた琴乃を蒼紫に預けた斎藤が刀を担いでいた。
斎藤は蒼紫が抱き上げている琴乃を見た。
ここで死なせやしない――…
斎藤は牙突の構えをした。
「牙突…」
「ちょっと待て。 お前の傷だって浅くは…」
ガギャァ
左之助の言葉を無視して 斎藤は甲鉄の扉を“牙突”で破壊した。
「……ん…」
琴乃は破壊音でうっすらと目を覚ました。
“牙突”の衝撃により 斎藤の右太腿の傷から血が噴き出した。
「フン」
斎藤は傷口を手で押さえて 後ろに下がった。
「…斎藤…」
「……一様…」
「お前等とはくぐった修羅場の数が違うんだ」
斎藤はうっすらと目を開いている琴乃を横目で見て 背を向けた。
「行け」
その時、左之助たちは出口へ向かおうとしたが、錯乱状態の方治によって 闘場“大灼熱の間”が爆発した。
そして、琴乃を抱き上げている蒼紫たちと斎藤のいる通路が破壊され 分かれてしまった。
「さ…斎藤!!」
「……一様…?」
琴乃は貧血によりぼーっとしていた。
「やれやれ…」
斎藤はマッチを擦り 煙草に火をつけて吸い、煙を吐き出した。
両足を負傷している斎藤にとって 琴乃たちの方へ跳ぶのは無理な距離だった。
「フン」
「斎藤! てめえ!!」
「そこの方向音痴」
「! なんだ!」
「四乃森にここの地図を渡してある。 隠し通路を案内してもらえ」
斎藤の目つきが鋭くなった。
「琴乃を殺すなよ?」
「! て てめェは!?」
斎藤は微笑し 背を向けて歩き出した。
「てめえ “また”勝ち逃げかよ!! 俺との勝負はどーすんだ コラァ!! 答えろ 斎藤!!」」
斎藤は立ち止まり 横目で左之助たちを見た。
「今し方言ったばかりだ。 お前等とはくぐった修羅場の数が違うんだよ」
斎藤は煙草の煙を吐き出した。
「阿呆が」
斎藤は再び背を向ける直前 琴乃を横目で見た。
…琴乃――…
斎藤の姿は爆炎の中へ消えていった。
「っ!!」
琴乃の目が完全に覚めた。
「…一様ぁ――――――っっ!!」
琴乃はそこで、長い夢から目を覚ました。