2.嘆き
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「……よくも…」
琴乃はゆっくりと刀を抜きながら立ち上がった。
「ん?」
志々雄は琴乃を見た。
「…一様……剣心さん……左之助さん…を……っ!」
顔を上げた琴乃の目つきが一段と鋭くなっていた。
「なんだ、あんたそんな顔もできたのか? …ま 伊達に元新撰組じゃねェか……」
志々雄は微笑した。
「志々雄様! 私の調べによると その女も“不殺”! 志々雄様の相手ではありません!」
「…そうでもねェよ 方治」
志々雄は方治を横目で見て 琴乃に視線を戻した。
「この女は確かに抜刀斎と同じ“不殺”。 だがな 刀は…」
「「!」」
逆刃刀じゃない…!
「そうさ。 この女は峰打ちじゃねェ 真剣の状態で、幕末の時から“不殺”を貫いてきた…」
志々雄の目つきが変わった。
「…力を抜いてな」
「「!?」」
「………」
「いいぜ その目。 気に入った。 俺を斬る事しか 見てねェ目だ」
琴乃は志々雄を睨みつけた。
「お前は他の奴らと違って 体力を消耗してねェから、少しはまともな闘いが出来そうだな」
琴乃は刀を構えた。
志々雄も刀を構えた。
「来いよ。 人を斬る愉しさ 教えてやる」
琴乃は刀を構えた。
一様…ごめんなさい…
…私は……この手を汚そうと思います――…
琴乃は志々雄に向かっていった。
この男を殺して…!!
志々雄に向かっていった琴乃は目にも止まらない速さで間合いを詰めた。
そして 琴乃は志々雄を斬り付けた。
「甘えな。 速さで挑むなら 宗次郎の“縮地”を超えてきやがれ!」
志々雄は琴乃を斬り付けた。
だが 琴乃の姿が消えていた。
「!」
「私の剣は速さじゃない…」
琴乃は志々雄の刀の切先に乗っていた。
そして 志々雄に斬り込み 距離を取った。
「…フッ…。 そうか お前の剣は身のこなしの良さ…。 その小柄な体型と普通の刀より少し短い小太刀の間合いを活かした闘い方だ…」
志々雄は寸前の所でかわした為、着物の裾が少し切れただけだった。
「! ………」
斬れてない…
「そして 宇水の時と違い、俺を殺しにかかって来ている分 迷いがない…。 そうだろ?」
「…御名答。 流石ね」
琴乃は微笑した。
「私は音を立てず 相手に忍び寄り、そして…」
琴乃は刀を構えた。
「この“白夜”で相手が私に気づき 反応して行動を起こす前に攻撃をする…」
「それは それは 暗殺に向いているな。 …だが」
志々雄の目つきが変わった。
「相手がお前の攻撃を防いだ場合、お前は一気に不利になる」
「……ええ……」
琴乃は一瞬 瞳を伏せて、志々雄に視線を戻した。
「……あなたの様な強い人にはね…」
小太刀の間合いと言う、近い距離で 私は無防備になる…
相手が二流三流だったら かわせばいい…
…でも…一流の場合はそうはいかない―――…
琴乃と志々雄は構え、そして お互いに向かっていった。
琴乃はさっきと同様 一気に間合いを詰めた。
「かかったな」
志々雄は壱の秘剣 “焔霊”で 自分の周りに火炎の壁を作った。
そして 微かにした、琴乃の着物が焼ける音を聞き逃さなかった志々雄は琴乃の右手を掴んだ。
「っ!?」
志々雄は琴乃の右手を引き寄せ 顔を近づけさせた。
「どうだ? これで刀も振るえず、逃げる事もできない」
「……っ…!」
「お前も抜刀斎と斎藤を倒した技で終わらせてやる」
志々雄は弐の秘剣 “紅蓮腕”を繰り出した。
琴乃の体は剣心と斎藤の間に吹き飛び 瀕死状態になった。
その時、宇水にやられた傷口が開き 琴乃は吐血し、傷口から血が流れ出した。
闘場“大灼熱の間”で瀕死状態になっている琴乃たちを見て 志々雄は勝利の余韻に浸かった。
【いや…止めも勝利の余韻もまだ早い…】
「「!」」
さっきまで琴乃と斎藤が潜んでいた、闘場“大灼熱の間”の隠し通路の所に蒼紫が立っていた。
「おっと…………すっかり忘れていたぜ。 確か“負け犬”が一匹まだ残っていたな…」
蒼紫は倒れている琴乃に歩み寄った。
かなりの出血だ…
…傷口が開いたのか……
蒼紫は琴乃の頬に触れた。
…お前に剣を振るわせるなんて……
…兄 失格かもしれん…
…すまない――…