斎藤は再び牙突の構えをした。

「……フン」

「なるほど、それがお前の…いや 新撰組の闘い方と言う訳か。 …壬生の生き様 見せてもらおう。 来い」



一様なら…大丈夫…きっと……

琴乃は震える右拳を左手で握り締めた。




斎藤は志々雄に向かっていった。

「“牙突・弐式”！！」


志々雄は壱の秘剣 “焔霊”で払い、斎藤の牙突は地面を削った。



斎藤が志々雄を見ると 上空に跳んでいた。



「せやっ！」

志々雄は刀を振り下ろしてきた。


「“牙突・参式”！！」

斎藤は上空へ跳んだ。



そして 斎藤と志々雄の技がぶつかり合い、二人は背を向けて着地した。


「うあ゛っ…」

斎藤は志々雄に斬られた傷を押さえた。


「一様っ！」



志々雄は立ち上がた。

「フン。 所謂 馬鹿の一つ覚えってやつか。 だがそれも種切れらしい…」

「一様は馬鹿なんかじゃない！」

「あん？」

「…琴乃…」


志々雄は琴乃を見た。

「効かないとわかっていて “牙突”しか出せない奴の、どこが馬鹿じゃねェって言うんだ？」

「一様の牙突は負けたりしないっ！ 一様の牙突は、左片手一本突きを極限まで鍛え、昇華した技！ だから 絶対負けたりしないっ！」

それに まだ奥の手があるんだから！！


「震える体でよく言う。 こいつは…」

志々雄は背を向けてしゃがんでいる斎藤を見た。


「言った側からまだ油断か？」

「！」

「馬鹿は死ななきゃ治らない！ 調べが足りぬのは貴様の方だ！」


斎藤は立ち上がり 志々雄に体を向けた。

「“牙突・零式”！！！」

そして 斎藤は志々雄を攻撃し 血が吹き飛んだ。


「「「！！？」」」



やった…！

この至近距離の間合いで効かないわけ…… っ！

琴乃は目を見開いて驚いた。



だが、それは“牙突・零式”を受けた志々雄の血ではなく、右肩に四本貫手を受けた斎藤の血だった。


「“油断”？ 何のことかな？」

「っ！？」

…一様の牙突・零式が…防がれた……？

琴乃の膝が崩れ落ちた。



「これは“余裕”と…」

志々雄は四本貫手をより強くさした。


「ガッ…」

斎藤は吐血した。


「言うもんだ」

「…一様っ！？」

琴乃は斎藤に駆け寄ろうとした。


「…来る な…っ！」

「！」

琴乃は立ち止まった。



「零距離射程の牙突が奥の手とはな。 政府の犬にしてはなかなかやるじゃないか。 あんたは抜刀斎と違って 殺す気でかかってきたからな 」


志々雄は手甲の表に仕込んだ火薬に焔霊で火をつけた。


「やめて―――っ！！」


琴乃は斎藤に駆け寄ろうとしたが 左之助の腕に抑えられた。


「琴乃！」

「離してっ！」

琴乃は左之助の腕から逃れようと藻掻いた。



琴乃―――



「俺の時代に名だけは残してやるぜ！」

「ぐあぁあ！！」

志々雄の弐の秘剣 “紅蓮腕”を食らった斎藤は吹き飛んだ。



「……一様ぁ――――っっ！！？」

琴乃は泣き叫びながら 斎藤に駆け寄った。


「一様っ…！ 一様っ……！」


琴乃は瀕死の状態で倒れている斎藤の体に縋り付いた。

「…死んじゃ嫌だよ……一様…っ！！」

「…なら 共に地獄に行くか？」

「っ！」

琴乃が振り向くと 志々雄が後ろに立っていた。



「俺にここで殺されて な」

「っ！？」

琴乃は刀に手を添えた。



「てめえ！！！！！」

左之助が志々雄に向かってきた。


「っ！」

左之助さんっ！



左之助は骨が砕けた拳で 志々雄の顔面に“二重の極み”を叩き込んだ。


だが、志々雄は不気味な笑みを浮かべ、左之助の顔面を殴り返し 壁に吹っ飛ばした。


「く…そ…」

瀕死状態になった左之助の額から血が吹き出た。


「糞はお前等だろ」



闘場“大灼熱の間”には、瀕死状態の斎藤、剣心、左之助が横たわっていた。



「フフフ…ハハハ。 ハハハッ！ ハァ――――ハッハッハッハッハ！！！！！！！」

志々雄の勝利の笑いが響き渡った。



…許さない……


絶対に―――っ！！